
ジオバレンツ船上:リビア沖で、ヨーロッパを目指す女性と子どもを含む難民約190人が捜索救助船2隻に救助されたと、船を運営する慈善団体は月曜、発表した。
今回の救助は、地中海越えを試みる難民の数が急増する中での出来事となった。
国連の難民専門機関によると、今年に入りこれまで難民24,000人以上がリビアの沿岸警備隊に阻止され、同国に送還されている。これは難民約11,890人が紛争が多発するリビアへと送り返された2020年の数字の2倍以上となる。
同機関の数字によると、今年の前半だけでこの数字よりさらに1,000人以上多くの難民が溺死したと考えられている。
難民たちは月曜の真昼、粗末なゴムボートから救助隊に向かって手を振った後、救命胴衣を与えられ慈善団体「国境なき医師団」が運営する捜索救助船「ジオバレンツ」船上へと移された。同団体のプロジェクトコーディネーター、バーバラ・デック氏によると難民の数は計54人だった。
これらの難民には未成年24人、女性6人、生後6週間の乳児が含まれていた。泣き声をあげていた乳児はオレンジ色の救命胴衣に丁寧にくるまれ、先に救助船へと移された。難民たちが乗っていた船は定員オーバーで、日よけもなく、全員が座れる余裕はほとんどない大きさだった。
難民たちからは直ちにコメントを得られなかった。フランス語名では「メドサン・サン・フロンティエール」として知られる同団体の職員が急いで難民たちの健康チェックを行った。疲労の色を見せながらも救助された安堵感でほほ笑む者もいれば、歌い踊る者も数名いた。
デック氏によると、一行にはコートジボワール、カメルーン、マリ、ソマリア、ブルキナファソ等のアフリカ諸国出身の難民が含まれた。
なぜ今年これほど地中海越えの試みが多いのかは不明だが、真夏から晩夏にかけては気候がよいため、通常地中海中央ルートを渡る試みがピークを迎える時期である。このルート沿いでの救助活動は暖かい時期に定期的に行われるようになった。経済的苦境に加え、コロナ禍が追い打ちをかけたことも、多くの難民たちにとって海越えを試みる動機となっている。
この日、ジオバレンツはすでにファイバーグラス製のボートに乗った男性6人を救助していた。うち3人はリビア、2人はチュニジア、1人はモロッコ出身であった。MSFスタッフによると、男性たちは救助船を止めようと試みた。
MSFの捜索救助担当副リーダー、マタイシュ・メルセン氏によると難民たちはボートのエンジンが停止したと救助者たちに伝えたという。
「ボートはそのような航行を想定されたものではなかった」とメルセン氏は語る。
リビア沖の同水域で同じく取り組みを行う捜索救助船「オーシャンバイキング」はこの3日間でヨーロッパを目指す難民130人以上を救助したと、同船舶を運営する慈善団体「SOSメディテラネ」でコミュニケーションズオフィサーを務めるクレール・ジュシャ氏は述べた。
子ども44人と女性12人を含む難民たちは別々の船に乗っていたとジュシャ氏は述べた。また月曜朝にはイタリア沿岸警備隊が重篤な健康状態の移民2人を家族4人とともに救助したと、ジュシャ氏は語った。
残りの移民はオーシャンバイキングの任務が完了するまで2隻の船に乗って過ごしたのち、ヨーロッパへと移される。
リビアは何年間にもわたり、自国の戦争や貧困を逃れヨーロッパでのより良い暮らしを望むアフリカ・中東の移民にとっての拠点となってきた。産油国であるリビアは、2011年に長年の独裁者ムアンマル・カダフィ大佐が失脚し死亡したNATO支援の反乱を経たのち、大混乱に陥った。
人身取引犯らはこの混乱に乗じて、危険な地中海中央ルート沿いで行き詰まり沈没するような装備不十分の小さな船に、必死の家族たちを詰め込んできた。航海の途中で、数千人が命を落としている。拷問や身代金目的の拉致など、広範に及ぶ難民の虐待にリビア民兵の一部が関与しているとされている。
AP