
エルサレム:イスラエルは、12歳以上の大半の人口に対し、新型コロナウイルスのワクチン接種を積極的に推進しており、高齢者や重症化リスクの高い人を対象に新型コロナウイルスワクチンの追加接種(ブースター接種)を行うという米国の決定により、イスラエルの姿勢がさらに正当化されたと主張している。
イスラエル政府は、すでに人口の約3分の1に投与したこのブースター接種が、国内の新型コロナウイルス新規感染者の感染の波を抑制するのに有効であったと評価している。またイスラエル政府は、それぞれのアプローチは、ブースター接種が感染抑制のための正しい方法であるという同じ認識に基づいていると述べ、米国や他の国々が今後数ヶ月のうちにブースター接種の動きを拡大することを期待していると述べた。
イスラエルのベングリオン大学公衆衛生学部の学部長であり、同国の公衆衛生医師協会の会長でもあるナダブ・ダビドビッチ博士は、「今回の米国の決定は、3回目のワクチン接種が安全であるというイスラエルの結果を補強するものでした」と述べ、「今の主な問題は、優先順位をつけることです」と語った。
世界保健機関(WHO)は、貧しい国々におけるより多くの人々が最初の2回のワクチン接種を受けられるよう、少なくとも今年末まではブースター接種を一時停止するよう求めているものの、イスラエル政府は、ブースター接種は感染症予防と同様に重要であると主張している。
イスラエル政府の専門家委員会の委員でもあるダヴィドヴィッチ氏は、「現在のワクチン・ナショナリズムのシステムは、全ての人々を傷つけ、変異株を生み出していることは確かです」と語った。ダヴィドヴィッチ氏は、問題は「イスラエルよりもずっと広い範囲に及んでいる」と加えた。
イスラエルは、イスラエル国民の医療データをファイザーに提供することで、ワクチンの安定供給を実現し、今年初めには成人のほとんどがワクチン接種を終えている。また、イスラエルはモデルナ社やアストラゼネカ社のワクチンも大量に購入している。
3月までにイスラエル国民のほとんどの成人がファイザー社製の2回のワクチン接種を終えたため、国内の感染者数は減少傾向にあり、イスラエル政府は新型コロナウイルスに関するほぼすべての規制を解除することができた。
しかし、6月に入り、より感染力の強い変異株のデルタ株が広がり始めた。専門家らによる調査の結果、新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性は残っていたものの、2回目の接種からおよそ5カ月後にはその効果が薄れたと結論づけられた。
7月下旬、イスラエルは60歳以上の高齢者を含む重症化リスクの高い人に対しブースター接種を開始した。その数週間後には、ブースター接種を一般の人々にも拡大した。
保健省によると、イスラエル国民900万人のうち、300万人以上がファイザー社製の3回目のワクチンを既に接種している。
先週、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)』に掲載された論文の中でイスラエルの専門家らは、5ヶ月前にワクチンを接種した人の中で、ブースター接種を受けたワクチン接種完了者は、ブースター接種を受けていないワクチン接種完了者に比べて、ブースター接種によりワクチンの効果が10倍になったと主張した。
保健省によると、今回論文が掲載された研究では、60歳以上の約100万人を追跡調査し、ブースター接種は「感染が確認された割合と重症化した割合の両方を減少させるのに非常に効果的であった」ことが分かっている。
イスラエルの保健省の高官であるシャロン・アルロイ・プライス博士は、先週行われた米国食品医薬品局(FDA)の委員会で、ブースター接種を支持する証言をした専門家の一人である。しかしFDAは、一般の人々に対する幅広いブースター接種は支持せず、65歳以上の高齢者と重症化するリスクの高い人々のみを対象とする追加接種を支持した。
また専門家らは、追加接種に関する安全性のデータが不足していることを指摘し、特定のグループを対象とした追加接種ではなく、幅広い国民を対象とすることの価値に疑問を呈した。米国疾病管理予防センターも、木曜日に同様の支持を表明した。
イスラエル保健省は、今回のFDAの決定により、イスラエルで行われている「3回目のワクチン接種に正当性が与えられた」と述べ、イスラエルは「拡大する感染症に対処するため、責任を持って迅速に行動することを決めた」と主張した。 また、保健省は統計によると、ブースター接種により「ワクチンの有効性が回復した」と述べた。
新型コロナウイルスに関するイスラエル政府の専門家諮問委員会の委員長を務めるラン・バリサー博士は、AP通信に対し、ここ数週間の間に、大半がワクチン接種を終えている高齢者の新規感染率が低下しており、「新規重症患者の中にワクチンを接種していない人の割合が継続的に増加している」と語った。
ブースター接種が行われたここ数週間の間に、新型コロナウイルスの重症患者に占めるワクチン未接種の人の割合が上昇し、少なくとも2回のワクチン接種を終えた人の新規感染者数が減少している。
金曜日の時点で、イスラエルで確認された新型コロナウイルスの重症患者数703人のうち、約70%がワクチン未接種者であり、また、約20%がブースター接種を受けていなかった。その1ヶ月前、イスラエルが150万人に3回目のワクチン追加接種を行った後、コロナ重症患者数に占めるワクチン未接種者と追加接種身接種者の割合は同じ程度であった。
成人人口の圧倒的多数を占めるイスラエル人の60%以上が、これまでに新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも2回接種している。
専門家の中には、米国やヨーロッパがイスラエルのワクチン接種のスピードに数ヶ月遅れていることを指摘した上で、これらの国も数ヶ月後には追随するだろうと予測している。
バリサー博士は、「今後数ヶ月のうちに多くの国で明らかになり、同様の問題が発生すると予想される現象を、イスラエルは最初に経験しているのです」と述べ、このように続けた。「今、イスラエルが経験していることと同じことを経験している国は他にほとんどありません。」
英国ではすでにブースター接種を行っており、50歳以上の人やその他リスクの高い人に対しに3回目の追加接種を行っている。
世界保健機構(WHO)は、世界の多くの国がまだワクチンを接種できていない中、富裕国に対して、ブースター接種によりワクチンの備蓄を使い果たすことを控えるように呼びかけている。WHOは、特定の健康状態にある人には3回目の追加接種が必要な場合もあるが、「パンデミックの現段階では、一般の人を対象としたブースター接種は適切ではない」と主張している。
さらにWHOは金曜日に発表した声明の中で、「ワクチンの不公平感が長く続くと、ウイルスの循環と変異が進み、社会的・経済的な混乱が長期化し、ワクチンの効果を低下させる変異株がさらに出現する可能性が高くなる」とした。
バリサー氏は、小国であるイスラエルは世界のワクチン供給にほとんど影響を与えず、世界の実験室としての役割が他国に「非常に重要な知識の源」を提供していると述べた。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、6月に首相に就任して以来、積極的な広報活動の一環として、国民に追加ワクチン接種を呼びかけている。
ベネット首相は先週、「イスラエルは、法的にも供給面でも、世界にブースター接種の可能性という贈り物をしている世界で唯一の国です」と語った。
バリサー氏は、他国もブースター接種の導入について準備すべきだと述べている。
バリサー氏は、「最近になってワクチンを接種した国は、ワクチン免疫の低下が真冬に顕在化し、コロナに関する課題がさらに深刻化するという影響に備える必要があります」と述べた。
AP