
カリーン・マレック
ドバイ:湾岸諸国が、11月にグラスゴーで開催されるCOP26気候変動サミットの下準備として温室効果ガス排出量削減への取り組みに乗り出す中、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、再生可能エネルギーやエネルギー部門の脱炭素化への移行において、この地域のリーダーとして浮上している。
米国のシンクタンク「アトランティックカウンシル」は最近の報告書で、両国の取り組みを紹介するとともに、世界的なエネルギー転換の中で両国がそれぞれ向き合う独自の課題についても考察している。
この報告書は、世界の気温がこれ以上上昇するのを防ぐための措置として、炭酸ガス排出量を大幅に削減し、化石燃料からクリーンな再生可能エネルギーへと移行するよう気候学者たちが各国に求める中でまとめられたものだ。
湾岸協力会議(GCC)加盟諸国は、再生可能エネルギーや大気中の炭酸ガスを除去する方法などを導入し、炭化水素製品の輸出に依存した経済を見直すなど、温室効果ガス排気量削減への取り組みを加速させている。
アトランティックカウンシルが先月発表した報告書によると、世界のエネルギー需要のうち、風力、太陽光、地熱、潮力、水力といった従来の再生可能エネルギーで賄われる量は、絶対量で言えば2000年以降70%以上増加しているという。
しかし、急速な人口増加と経済活動の加速に伴い、さらなる排気量の相殺のために開発される新たな技術の普及には、遅れが生じる可能性があると指摘している。
ジャン・フランソワ・セズネック氏とサメル・モシス氏執筆による『アラブ湾岸諸国のエネルギー転換:ビジョンから現実へ』と題したこの報告書には、湾岸地域には太陽光エネルギーの莫大な可能性があると書かれている。
実際に、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、実用可能な太陽光エネルギーの潜在能力のある国として上位15位に入っている。研究によると、GCC諸国の平均年間日射量は、1平方メートル当たり石油1.1バレルに匹敵するという。
報告書の執筆者たちは、サウジアラビアは炭素循環型経済(CCE)プラットフォームを導入したことにより、それが国のエネルギー転換に向けた取り組みの包括的戦略に役立っているとして評価している。
報告書は、よりクリーンなエネルギーと経済活動への移行において、脱炭素化に向けた統一的ビジョンの策定、さらには集中型で透明性のある計画の立案を推奨している。
CCEとは、大気中の有害な汚染物質の除去を目的とした、炭素製品の削減、再利用、リサイクル、さらにはその除去を促進するためにデザインされた閉ループ型のエネルギー戦略のことだ。
サウジアラビアがG20の議長国を務めた昨年、主要経済国であるG20諸国のエネルギー大臣たちは、温室効果ガス排気量を管理するためのサウジアラビアのCCEによる取り組みを支持した。
サウジアラビアは、サウジアラムコ社と協力し、エネルギーの効率化と油田のガスフレアの最小化を気候変動緩和における最優先事項にするとともに、再生可能エネルギー、水力、原子力、バイオエネルギーといった低炭素エネルギー源への切り替えを通して化石燃料の削減を図ってきた。
報告書の執筆者のひとりであり、アトランティックカウンシル世界エネルギーセンターの非常駐の上級研究員であるセズネック氏は、炭素回収に向けたサウジアラムコの取り組みを高く評価し、転換における主な課題は組織的なものだと述べている。
「私は、サウジアラムコとその運営方法を高く評価しています」とセズネック氏はアラブニュースに語った。「しかし、彼らの見解は、適切な転換と脱炭素経済の実現は、炭素と石油という手持ちの資産を使い、それらを脱炭素化することだという考え方です」
「石油を燃やすときに出る二酸化炭素を回収し、それを地下に再び封じ込めるというもので、中規模プラントでいくらか実施されています」
こうした技術を駆使することで、二酸化炭素を大気中から回収して地下に貯蔵したり、燃料、バイオエネルギー、化学物質、建築素材、食品、飲料といった有益な製品へと再利用したりすることができる。また、化学的に変換することで、肥料やセメントなどの新たな製品や、合成燃料といった他のエネルギー形態にすることもできる。
炭素の回収、有効利用、貯蔵が含まれるCCUSとも呼ばれるこうした方法は、炭酸ガス排出量を急速に削減しようとする世界の取り組みに大変革をもたらす可能性を秘めているとされる。
国連の「気候変動に関する政府間パネル」は、今年8月に発表した最新報告書の中で、CCUS技術が広く導入されなければ、世界の気候問題の長期的な目標は達成できないかもしれないと警告している。
しかし、アラムコ社が使っているようなプラントは高価なため、世界でもほんの一握しか建設されていない。アラムコはさらに開発を進めている最中であり、そうすれば、こうした技術が次第に他国の関心を引き付けていく可能性がある。
とはいえ、「アブダビ国営石油会社やアラムコのような石油生産者の見地からすれば、地下にある資産の価値を維持しながら生産し続けていくことは非常に重要なことです」とセズネック氏は付け加えた。
報告書によると、アラムコはサウジアラビアのCCEの取り組みの最前線にはいるが、大きな役割を担うのはアラムコだけではないという。セズネック氏は、より集中型アプローチをとることが重要だと主張している。
「サウジアラビアの場合にはこれはつまり、サウジアラムコとサウジ基礎産業公社(SABIC)のCCUS、原油の石油化学製品化、炭素循環型経済などにおける技術を、国の指導者が支援することを意味する。そしてアラブ首長国連邦の場合には、国がアブダビ電力会社(ADPower)を堅持し、その専門性をADQのより広い範囲に拡張することができるようにすることを意味する」と報告書には書かれている。
新たな技術は、世界の炭酸ガス排出量削減や、湾岸諸国の今後の経済のエネルギー転換において、重要な役割を果たすことになる。脱炭素化は、そのプロセスを改善するための技術を開発し、それを世界に販売するときに、サウジアラビアとアラブ首長国連邦にとって最も利することになるとセズネック氏は考えている。
「湾岸諸国は、石油化学製品を開発したときのように、自分たちで技術の管理・開発に取り組むべきであると強く提案します。なぜなら、いったん開発すれば、その技術や新たなエネルギー源から収入を得ることができるからです」と彼は述べた。
「それは集中型であること、そして双方が積極的に開発に関与することが非常に重要です。一刻も早く実現させるべきであり、効率的なものを先に進めることによってのみ実現可能なことです」
CCUS技術を開発すれば、地域諸国にとっては価値ある輸出品目が加わる可能性も秘めている。しかし、未来は、発明家や技術者たちの手に委ねられている。
「サウジアラビアは、過去にこれを他の多くの分野で見事に成し遂げてきたわけで、今後もそれができないはずはないと思っています」とセズネック氏は述べた。「技術の開発は、集中型であることが実に大切であり、技術の専門家たちは、開発を実現させるのに必要なことをするための手段が与えられなければなりません」
それをする手段としては、政府による国営企業への投資に加え、投資による民間企業の強化が含まれる。
報告書は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦に対し、国営企業が民間企業を買収できる範囲を制限するとともに、知識や技術の移転を優先して、各民間企業による外国ハイテク企業の買収を積極的に支援するべきであると助言している。
また、開発には教育への投資も必要だ。報告書は両国に対し、大学や、アラムコやSABICといった既存の国営企業などが国内開発技術を研究して商業化することを支援するよう求めている。
「両国は、CCUSを商業的に成り立たせるという目標を設定し、サウジアラムコが国内産業奨励(iktva)プログラムで行ったように、再生可能エネルギーや炭素循環型経済のすべてのプロジェクトに、国内調達の要件をつけることを重視すべきである」と報告書は述べている。
また、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、「ADNOCやサウジアラムコといった国営石油会社に対し、目標期日までに排気量正味ゼロにするという多くの国際的石油会社が定めている目標に合わせるように勧めることを報告書は促している。
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ツイッター: @CalineMalek