ナジャ・フーサリ
ベイルート:ベイルートで14日、同都市の港で発生した昨年の爆発事故の捜査を行う主任判事に対してヒズボラとその支持者主催の抗議活動が行われる中で、少なくとも6人が死亡した。
同都市ではここ数年で最も長時間続いたこの路上での戦闘で、数十人が負傷した。
ヒズボラとアマル運動が呼びかけたこのデモは、タレク・ビタール判事を捜査から外すことを求めていた。
しかし、両グループの支持者と政治的素性が判明していない武装した男らとの間で武力衝突になった。
デモでは、対戦車擲弾の発射や、狙撃手による銃撃が発生し、人々はこのデモを「自分たちに対する大量虐殺」だとした。死亡した人の中には、家の中で座っていた時に頭を撃たれた女性がいる。
إشتباكات #الطيونة: ٥ قتلى و اكثر من ٣٠ جريح حتى الساعة pic.twitter.com/6CZsmHN3VT
— Lebanese Red Cross (@RedCrossLebanon) October 14, 2021
レバノン赤十字社の速報によると、この地域では深刻な物的被害も報告されている。
人々は家や店の中に閉じ込められ、学生数百人が、暴力の発生した地域の近くにある学校の中で身動きが取れなくなった。
衝突は約3時間続き、レバノン軍は事態を収拾しようとするも、失敗した。
負傷者や閉じ込められた人たちは、避難を求めた。
学校の生徒たちは、教室を隔てる廊下に駆け込んだ。複数人が砕けたガラスで怪我をし、病院に運ばれた。
レバノン軍は14日夕方、この暴力事件に関して、シリア人1人を含む9人を逮捕したと発表した。
軍はツイッターで、暴力が再び発生しないよう、この地区への配備を続けていると発表した。
ヒズボラとアマル運動の支持者らは、14日午前10時30分頃、ヒズボラが異議を申し立ててきたビタール判事の措置に抗議するため、平和的なデモの呼びかけに応じて司法宮の外に集まった。
ヒズボラの指導者のハッサン・ナスラッラー氏は、数日前にビタール氏を捜査から外すよう脅した。
この抗議活動は、アマルの一員であるアリ・ハッサン・カリル元財務大臣に対して逮捕状を出したビタール判事を黙らせようと、呼び掛けられたものだ。
ヒズボラとアマルは、ビタール判事には先入観があり、尋問の対象に政治家、それも大部分がヒズボラを支持する政治家を選び出しているとして、非難している。ヒズボラ指導者、ハッサン・ナスラッラー氏は11日、ビタール判事が「犠牲者の血を政治的利益に資するよう」利用しているとして非難し、「透明性のある裁判官」が捜査を指揮することを要求した。
デモ隊の大部分は黒いシャツを身に着けていた。中にはマスクで顔を覆っている人もいた。彼らは、ビタール氏に反対し、ナスラッラー氏と、アマル運動の代表で議会議長のナビーフ・ビッリー氏を支持するシュプレヒコールを上げた。
中には、両党の旗を持っている人や、レバノン国旗を持っている人もいた。軍は、治安的にも政治的にも既に機敏な状況にあると考えられる地域で、事態がさらにエスカレートするのを防ぐべく、厳しい措置を取った。
目撃者によると、彼らがタヨーネの環状交差点に差し掛かり、司法宮に向かう途中のサミ・アル・スルフ通りに向かっていると、建物の屋上から狙撃手に発砲されたという。
環状交差点に立ってデモを見ていたドゥハ氏は、アラブニュースに対し、次のように語った。「ある人が突然地面に倒れて、自分の血にまみれ、銃弾が雨のように降ってくると、人々が四方八方に走り出した」。
デモ隊はパニックになり、四方八方に走り始めた。
武装勢力が姿を現わし、建物に向かって発砲した。衝突が勃発し、B7-RPG対戦車擲弾が、シヤフとアイン・アル・レマネフの間の建物めがけて発射された。
デモ隊は司法宮の外で抗議活動を終了したが、タヨーネ地区は戦場と化した。近隣の建物にはミサイルの衝撃が伝わり、レバノンの人々は銃撃戦と人が殺される様子をテレビの生中継で見た。
ある軍関係筋はアラブニュースに対し、「事態を収束させ、エスカレートするのを防ぐための呼びかけが直ちに行われた」が、「路上の武装している人には発砲する」と軍が脅したにもかかわらず、暴力は続いたと語った。
衝突は午後3時頃に終わった。軍は市民に対し、路上から退避するよう促し、武装した複数の男を逮捕した。
ヒズボラとアマル運動に近いある関係筋は次のように語った:「タヨーネ地区で起きたことは、許されない」。
シーア派の両党はその後、次のような共同声明を発表した。「平和的なデモ隊がタヨーネに到着すると、屋根の上から狙撃手に攻撃され、その後の激しい銃撃で死亡したり、怪我をしたりした。銃撃は頭を狙ったものだった」。
両党は、近くの地区や屋根の上にいたレバノン軍団のグループが、狙撃銃を使って人々を殺害し、「わざと国を意図的な衝突に引きずり込んだ」と非難した。
両党は軍に対し「責任を持って、これらの犯罪者を止めるために介入すること」を求めると同時に、支持者に対しても「冷静さを保ち、この悪質な衝突に引きずり込まれないよう」促した。
レバノン軍団の指導者、サミール・ジャアジャア氏は、この事件を非難した。「このような事件の主な原因は、いつでもどこでも市民の命を脅かす銃の規制が行われていないことにある」と、同氏は述べた。
同氏は、何が起きたのかを究明するため、「完全かつ正確な調査」を要求した。
死者と負傷者は病院に搬送された。しかし、負傷したのは、一方の陣営だけでなく、全ての宗派の民間人が怪我をした。
建物では火災が発生し、老人や女性が避難した。
緊張はベッカー高原の機敏な地域にまで拡大した。現地では、ヒズボラとアマル運動を支持する武装勢力が、車列を組んで両党の旗を振っている様子が見られた。
当局者や政治家らは、事態の収拾を急ぎ、これを非難した。
中央安全保障評議会は緊急会合を開き、会議の後、バサム・マウラヴィ内務大臣が次のように警告した。「市民の平和に手を出してはならない。衝突は、狙撃手による銃撃により始まった。誰かが頭を撃たれたが、これは許されないことだ。人の頭を撃つのは非常に危険なことだ。混乱は誰の利益にもならない。関係機関は、関係者の逮捕を始め、法の手続きに委ねることになる」。
フランスは14日、死者を伴う騒動に懸念を表明し、全ての当事者に事態の沈静化を促した。
「フランスは、捜査の円滑な実施が最近妨げられていること…また、このような文脈の中で発生した暴力に対して、深い懸念を抱いている。フランスは全ての当事者に対し、緊張を緩和するよう呼び掛ける」と、外務省が声明で述べた。
2020年8月4日、ベイルートの港で、2013年以降現地で不適切に保管されていた非常に爆発性が高い硝酸アンモニウム約2750トンが爆発し、200人以上が死亡、数千人が負傷した。
*各通信社を参照