
ベイルート:レバノンのキリスト教マロン派最高権威の長老ビシャーラ・ブトロス・アル・ライ氏は昨年ベイルート港で発生した爆発事件の捜査に関して緊張が高まる日曜日、同国の司法は政治圧力や宗派間の「行動主義」と分け隔てられなければならない、と語った。
また先週捜査に関する争いが死者を出す騒動に発展していたことを受けライ氏は、いかなる政党も脅迫や暴力行為に訴えることは許されない、と話した。先週の事件はレバノンにおいてここ10年以上で最悪の流血事件であり、国土の荒廃を招いた1975年から1990年の内戦の記憶を呼び起こすものであった。
「我が国の司法は政治圧力や宗派間・党派間の行動主義と分離され、権力分立の原則に従って司法の独立は尊重されなければならない」と同氏は説教で説いた。
マロン派教会を統括する立場のライ氏は、政治権力が同国主要宗派であるキリスト教徒・主流イスラム教徒・ドルーズ派教徒の間で分割されるレバノンにおいて、最大キリスト教徒勢力のリーダーとして影響力を持っている。
200名が死亡しベイルートの一角が焼け野原と化した2020年8月4日の爆発事件に関する捜査は、権力を握る政治党派の抵抗もあり、遅々として進展していない。ヒズボラ代表のハッサン・ナスラッラー氏は、捜査を指揮するタレク・ビタール判事について偏見的で政治色に染まっている、と非難している。
「司法(の公平性)に関する疑問の高まりが続く状態は司法を妨げるだけでなくレバノンの威信を傷つけるものである」とライ氏は述べた。
木曜日、イランが支援するシーア派のヒズボラとその盟友アマルが呼び掛けたビタール氏に対する抗議活動に民衆が向かう最中にシーア派イスラム教徒7名が殺害されていた。
この暴力事件は武器が豊富にあるうえ麻痺状態の経済にあえぐ同国の不穏さに拍車をかけるものだった。
「民主主義の制度によって我が国には表現の自由に関して賛成・反対にかかわらずそれを平和的に行う権利が保障されており、いかなる政党であっても脅迫や暴力に訴え党派・宗派として検問所を設けて、欲する結果を力づくで奪うようなことは許されない」とライ氏は訴えた。
ヒズボラは木曜日の殺害事件に関してキリスト教徒の政党レバノン軍団の犯行であると非難するが、同政党代表のサミール・ジャアジャア氏はこれを否認している。
イラン支持色の強いテレビ局アル・マヤディーンは、容疑者は責任に問われるべきだ、というヒズボラ所属国会議員の日曜日に語った言葉を伝えた。
在ベイルートの同局によるとハッサン・ファダッラー議員は「今回の犯罪者たちの行為は大量殺人であり、重大な結果が待っている。これを扇動し、計画し、銃を発砲した者たちは、組織のトップにいたるまで全員その責任を問われるべきだ」と語ったという。
当初木曜日の時点で軍部は、銃弾はキリスト教徒とシーア派イスラム教徒の居住地区を隔てるタヨーネ環状交差点に差し掛かった抗議参加者に向けて発砲された、としていた。その後の発表では抗議参加者がデモに向かう途中で「公論が起き銃撃が交わされた」とされている。
モーリス・セリム国防相は土曜日、タヨーネで起きた集団パニックと抗争によって双方が発砲する事態となっていた、と語り、狙撃手による攻撃の前に銃撃戦が起きていた、と付け加えた。
港での爆発事件の被害者家族一部を代表する広報が金曜日に、突然方針を変更してビタール判事の罷免を要求し周囲を驚かせていたが、土曜日に被害者家族は同判事への支持を改めて表明した。
この広報が突然方針を変更したことについてソーシャルメディア上では、同氏が脅迫されたのでは、という疑念が多く湧き上がっていた。
ロイター