
イラクで行われた10月の総選挙で最大の議席を獲得した政党連合には、イスラム教シーア派のポピュリスト的指導者であるムクタダ・アル・サドル氏の政党が含まれている。サドル氏はイラク政治に対するイランの介入に公然と反対しており、また全ての西側諸国の軍がイラクから撤退するよう求めている。
バグダッド:5日にバグダッドで起きた衝突によるデモ参加者と治安部隊の死傷者に対する調査が開始されたと、イラク国営通信(INA)が同国の統合作戦司令部の声明を引用する形で報じた。
ムスタファ・アル・カディミ首相は、イラクの治安部隊と、10月の総選挙の結果に異議を唱える政党の支持者らとの衝突を調査する委員会を立ち上げるよう指示した。
統合作戦司令部の発表した声明では、死傷者の数についての言及はなかった。
声明ではまた「いかなる状況においても実弾を使用すべきでないことを強調した最高司令官の明白な命令に背き、怠った過失者に対して法的説明責任が課されることになるだろう」と付け加えたと、INAは報じた。
アル・カディミ首相はまた、衝突による被害者に対し補償を行うよう指示し、調査の進展を個人的に監督していくことを決定したと、INAは伝えた。
5日の事件は、政府軍と政党の支持者とによる初の大きな武力衝突となった。それらの政党のほとんどは武装組織を有し、イランと連携している。10月10日の総選挙で、当該政党連合が議席を大きく減らしたことが衝突の背景にある。
多くのデモ参加者が石を投げつけ、政府関連施設や外国の大使館を収容する要塞化されたバグダッドの「グリーン・ゾーン」にまで前線しようとしたため、警察が催涙ガスや実弾を空に向けて発砲したと、治安当局の関係者が伝えた。
病院の関係者によると、21人以上のデモ参加者が主に煙の吸入により負傷し、9人の警察官が投石により負傷した。
10月の総選挙で最大の議席を獲得した政党連合には、イスラム教シーア派のポピュリスト的指導者であるムクタダ・アル・サドル氏の政党が含まれている。サドル氏はイラク政治に対するイランの介入に公然と反対しており、また現在駐留している全ての西側諸国の軍がイラクから撤退するよう求めている。
選挙結果に異議を唱える、イランの支持を受ける政治勢力もシーア派ではあるが、ナショナリストのサドル氏やイラクの多くの一般的なシーア派教徒が拒絶するイラン式の神権政治を模範としている。
アル・カディミ首相の命令に基づき、調査委員会の調査対象には、イランの支援を受け、その大部分がシーア派の民兵からなる、国の認可を受けた統括組織である民衆動員部隊(PMF)の警備隊も含まれると、INAが報じた。
2003年に米国の主導によりスンニ派の独裁者、サダム・フセイン率いる政権が転覆して以後、イラクの多数派であるシーア派がイラク政府を支配してきた。同国において次に大きな宗教的・民族的勢力であるスンニ派とクルド人のグループが、議会において大きな政党連合を率いている。
総選挙の結果は、外国勢力、特にイランの影響力に対して有権者が拒否を示したものとみなされた。
この結果に異議を訴える政党らは、投票の過程や票の集計に不法な事象が発生していたと述べるが、今のところ、説得力のある証拠は示せていない。
ロイター