ゴラン高原:イスラエル政府はシリアからゴラン高原を併合して40年を迎えた26日、3億1700万ドルを投じてゴラン高原にユダヤ人入植者を倍増させる計画を承認した。
ナフタリ・ベネット内閣は、ゴラン高原のメボハマ入植地で閣議を開き、5年間で7300戸の入植者住宅を建設する計画を承認した。
1967年の第三次中東戦争で併合した同地域に、約2万3000人の新たなユダヤ人入植者を呼び込むため、住宅・インフラなどの整備に10億シェケルを支出する計画だ。
「今日のテーマは、ゴラン高原の人口倍増だ」と右派のベネット首相は閣議前に述べた。
14歳の娘がPCR検査で陽性となったため、ベネット首相は隔離されて閣議の場を離れていたが、しばらく遅れて計画への賛否を問う採決が実施された。
約2万5000人のイスラエル人入植者がゴラン高原に住んでおり、加えてイスラム教の一派であるドルーズ派約2万3000人がイスラエル占領後も引き続きゴラン高原で暮らしている。
イスラエルは1981年12月14日にゴラン高原を併合したが、国際社会はこの動きをほとんど承認していない。
広く親イスラエルとみられるアメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)は、2019年にゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めた。
「ゴラン高原はイスラエル領だ。これは自明のことだ」とベネット首相は述べた。
「トランプ政権がこれを認めたという事実、さらにバイデン政権もこの方針に変更がないと言明したという事実は大きい」
バイデン大統領が1月に就任した直後、アントニー・ブリンケン国務長官は、シリアが「重大な主権侵害」として非難したトランプ政権の動きには法的問題がある可能性を示唆した。
しかしブリンケン国務長官は、シリアで内戦が続いていることを主な理由として、方針を変更する考えはないとした。
ベネット首相は、シリアで10年間内戦が続くなか、ゴラン高原に対するシリアの主権を回復させるべきという国際社会からの声は消えたと主張した。
「世界中のあらゆる知識人は、イスラエルがゴラン高原を統治した方が好ましいと分かっている。その方が地域が平穏で繁栄し、地球環境にも優しいからだ」と首相は述べた。
ベネット首相は、左派も含めた思想的に多様な8党連立政権を率いている。
特にハト派のメレツ党など一部閣僚は、1967年以来イスラエルが占領しているパレスチナの領土、ヨルダン川西岸地区の入植地拡大計画には強く反対している。
約47万5000人の入植者がヨルダン川西岸で現在暮らしているが、国際社会の大半は違法と見なしている。
ベネット首相はかつて、パレスチナ国家樹立に反対する入植者ロビー活動団体のトップを務めていた。
しかし今回の計画に異論が出なかったことで、ゴラン高原がイスラエル領であることに「国民的合意」があるのは明らかだと首相は主張した。
「ゴラン高原を強化・発展させ、そこに暮らす必要性については、明らかに全イスラエル国民の合意が得られている」と首相は述べた。
イスラエルとシリアは国際法上はまだ戦争状態にあり、ゴラン高原が事実上の国境となっている。
AP通信