






長年日本に滞在するシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュ氏が東日本大震災の11周年である今月11日(金)に、アラブ首長国連邦(UAE)の学校およびドバイ国際博覧会(ドバイ万博)会場にて追悼イベントを開き、東北の住民に励ましの言葉を贈った。
催し物の前部として、ドバイの名門中学校ジェムス・アル・バルシャ・ナショナル・スクール(GEMS Al Barsha National School)にて、エルカシュ氏が福島の子供の絵本「ぼくのひまわりおじさん」の物語を学校のシアターに集まった生徒たちに朗読した。その後、震災の時刻である日本時間の14:46(ドバイ時間の9:46)に、オンラインビデオ通話でドバイの学校会場と福島のNPO法人「チームふくしま」の本部を繋げ、共に黙祷をささげた。
午後からはドバイ万博(Expo 2020 Dubai)に於ける日本館にて同絵本のアラビア語版が、アラビア語話者の子供たちとその家族に配布され、エルカシュ氏は来客に東北地方の震災や復興の現状を語った。配布に参加したご家族が岩手県出身のアテンダント、鈴木眞由子さんは津波で流された祖母宅の跡地の写真を氏に見せながら、「震災から11年が経った今でも東北のことが語られ続け、とても嬉しく思います。」と語った。
アーティストのチャンキー松本が作成した絵本「ぼくのひまわりおじさん」の主人公は福島の男の子のである。震災後の苦労の中で大好きな農家「ひまわりおじさん」が教えてくれた故郷の自然への愛を思いだし、ひまわりの種を植え始める。周りの人々との助け合いが励みになり、男の子はひまわりの花の成長と共に悲劇を乗り越え、最後に故郷で「ひまわりおじさん」と再会する。
絵本に登場する「ひまわりおじさん」は福島県田村市に実在する農家の佐久間辰一氏に基づいている。佐久間氏はNPO法人「チームふくしま」の一員として「HIMAWARI PROJECT」を発足。プロジェクトの国内外のメンバーが自分の庭などに植えたひまわりの種を福島に送る。佐久間氏たちがその種を田村市大越町牧野地区にあるプロジェクトのひまわり畑に植え、毎夏ひまわりが咲く時期に合わせて音楽コンサートや結婚式など、様々な催し物を開催する。現在参加者は50万人を超え、福島と世界を繋げる同プロジェクトは日本最大規模のコミュニティー活動となった。
ドバイテレビなどアラビア語圏の報道機関の日本レポーターを勤めるナジーブ・エルカシュ氏は、東日本大震災直後から東北の震災地を継続的に取材してきた。2021年には震災の10周年に合わせて、絵本「ぼくのひまわりおじさん」をアラビア語に翻訳し、シリア難民の子供たちに配布する活動を行った。震災以降は毎年の3月11日を必ず東北で過ごす同氏だが、今年はドバイ万博の取材のために日本から離れている。それでも東北のために何かをしたいという想いでドバイのイベントを開催。「時間も予算もない中、実現は難しいと思いましたが、在ドバイ総領事館、ジェムススクール、そしてドバイ万博の日本館の皆様にこのアイディアを大歓迎していただき、言葉を失うほど感動しました」とエルカシュ氏は言う。「震災の取材をしている間、時間が経つに連れて海外メディアの震災地に於ける(第一原発問題以外の)諸問題への興味が薄まっていく事はショックでした。私はシリア人として、シリアで起こった破壊や難民問題の悲劇を世界に忘れて欲しくない。そういう切なる想いもあり、東北に対する個人的な責任を感じ、東北との間に非常に強い絆が生まれました。今は私にとって震災地の取材は自分のライフワークの一つになっています。東北の皆様に私はいつまでもそばに居ると伝えたいのです」と。
NPO法人「チームふくしま」の半田真仁理事長は「このような交流は福島県民にとって大変嬉しい事です。ドバイの生徒たちが一緒に黙祷までしてくれて、感動しました。これからもこのような素晴らしい催し物があって欲しいです。私たちもドバイやアラブ諸国を訪ねたいと思っていると同時に、日本を訪ねるアラブの皆様にぜひ福島にお越しいただきたいです。福島の自然や文化財を堪能し、復興に努めている福島県民の様子をご覧いただきたいと思います。」