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NEOMプロジェクトは計画通り急ピッチで進行中 責任者が語る

紅海からサウジアラビア内陸部までの170kmの土地に沿って建設される一連のコミュニティ、『ザ・ライン』と、それを支える輸送・物流の基幹施設、『ザ・スパイン』との統合に向けた作業も開始された。
紅海からサウジアラビア内陸部までの170kmの土地に沿って建設される一連のコミュニティ、『ザ・ライン』と、それを支える輸送・物流の基幹施設、『ザ・スパイン』との統合に向けた作業も開始された。
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20 Feb 2022 10:02:05 GMT9
20 Feb 2022 10:02:05 GMT9
  • スマイス氏は、2023年にはすべての地区で大規模な、恒久的施設の建設が加速すると語る

オサマ・ハビブ

リヤド:「NEOM」の最高プロジェクト責任者であるブレット・スマイス氏には、大きく、挑戦的な仕事が待ち受けている。彼は、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が描いた、5000億ドル規模の未来型巨大都市という偉大な夢を現実のものにすることを、チームとともに任されている。

そして、彼はまさにそれを実行している。

スマイス氏はアラブニュースの独占インタビューで語る。「2017年、サウジアラビアの先見性に満ちたNEOMプロジェクトがモハメド・ビン・サルマン皇太子によって発表されたとき、そのビジョンと巨大な規模は、世界の注目を集めました。居住、ビジネス、環境保全を再定義し、これまでにないものを実現しようとする試みです。これは、王国の経済多様化を推進するビジョン2030の礎となるものです」

最初の発表以来、NEOMの戦略は成長し、重要な開発が進められている。

NEOMの最高プロジェクト責任者、ブレット・スマイス氏。(提供)

同氏によると、NEOMを構成するすべての地区は、進歩をより加速して提供するというプロジェクトの使命に従い、同時に建設されるという。

プロジェクトの現在の状況について、スマイス氏は丁寧に説明してくれた。

「紅海からサウジアラビア内陸部までの170kmの土地に沿って建設される一連のコミュニティ、『ザ・ライン』と、それを支える輸送・物流の基幹施設、『ザ・スパイン』との統合に向けた作業も開始されました。すでに初期の土木作業は開始されています。ザ・スパインのインフラについては、ベクテル社(エグゼクティブ・プロジェクト・マネージャー)、エイコム(AECOM)社(リード・デザイナー)、中国鉄道建設公司(掘削・支保工)などと主要な契約が進んでいます」

将来の製造拠点の新しいモデルとなる「オキサゴン(OXAGON)」や、ウォーター・イノベーション・ハブのための土木工事やインフラ整備にも着手した。

「NEOMの道路やユーティリティーの基幹部分、最初の居住区域、海洋工事、社会インフラなどの建設も進んでいます」

また、同氏は、大量生産に対応した世界最大規模のモジュラー生産施設がNEOM内に建設されているほか、エネルギー、水、輸送、ホスピタリティ施設、空港のアップグレード、島の観光地、マリーナなどの建設が始まっていると語った。

スマイス氏は、2023年にはすべての地区において、大規模な恒久的施設の建設が加速すると約束した。陸地と海洋の両方合わせて2万6500平方キロメートルに及ぶ地域内で、上記の規模の開発はいまだNEOM全体の5%に過ぎない。同氏はプロジェクトの環境保全目標の達成、そして、自然と調和した未来の形成を約束している。

このような巨大な規模のプロジェクトは、これまでに経験したことのないものだと、同氏は誇らしげに語る。

「私たちは、世界で最もエキサイティングで、常識を超えたプロジェクトの一つを実現するために、新しい技術を用いて、これまでにない規模のものを作っています。NEOMの建設が進むことで、世界で最も先進的な経済建設エコシステムが構築されます。NEOMはサウジアラビアの長期的な国内総生産だけではなく、それを超えた貢献をするでしょう」

新しい視点から

スマイス氏と彼のチームは、必要不可欠なサポートインフラの建設に最終的な仕上げを施している。

「我々は、ロジスティクスパーク、道路、ユーティリティーなどの必須サポートインフラの最終的な建設を進めています。大規模な恒久的施設の建設作業が増えており、この10年間はそれが続くでしょう」

各チームには、今後18ヶ月間の強固なパイプラインおよびスケジュールが用意されている。

「私たちのマスタープランはかなり進展しています。恒久的な施設は大幅に稼働しつつあります。主にビジネス用途の施設をオープンしており、NEOMでは300人の設計および建設のリーダーを迎えています。彼らは、プロジェクトのビジョンがどのように実現されていくのかについて詳細な説明を受けています」

現在、現場では44社の請負業者からなる1万1000人以上の作業員が働いている。8000台以上のプラントや重機が使用され、これまでに3400万時間以上の作業が完了している。

恒久的な施設としては、OXAGONのほか、NEOMロジスティクスパークもすでに稼働している。この12平方キロメートルの物流拠点には、初期のコミュニティである3万人、そして今後2年以内に15万人を超えるコミュニティをサポートする、建設機能を集約した新しい都市が含まれており、特に建設需要に対応する。

さらに、ロジスティクスパークには、長期的な建設に対応する製造・流通拠点、30の基礎コンクリート・アスファルトプラント(バッチャープラント)、廃棄物の分別・リサイクルエリアなどが含まれる。これらのインフラは、最新のオフサイト(モジュール)製造、設計、建設の自動化を補完し、実現するものである。

スマイス氏は、サウジアラビアが世界最大の建設ブームを迎えようとしていることを強調する。

「NEOMとサウジアラビア王国全体に利益をもたらすためには、この発展を利用することが不可欠です。私たちはパートナーと協力して、バリューチェーン全体を含む、設計・建設経済を構築していきます。それは、NEOMとサウジアラビアの企業のための建設ハブとして機能するでしょう」

彼は、NEOMの建設エコシステムは、プロジェクトの規模と、そのスピードに対応するために発展していると語る。

「私たちは、プロジェクトの構想、計画、実施の方法を、積極的に変えていくことを約束します。NEOMは、設計・建設のプロセスや、素材を研究開発するための生きた実験室として機能します。実際に、計画から設計、建設、運営までの開発プロセス全体が、効率性と持続可能性を高めるように設計された先進技術によって実現されています。それは世界最大の現代的建設手法(MMC)エコシステムを構築し、豊かな労働環境のベストプラクティスを提供します」

プロジェクトの柱

必要とされるペースで建設を進めるために、作業の大部分は現場を離れた工場でプレハブ化されている。インフラと建物の両方にMMCを適用し、3Dプリント、自律走行車、新素材、構造体などのイノベーションと統合することで、スピード、コスト、品質、安全、労働者の健康、持続可能性にメリットをもたらしている。さらに、これらの機能を開発することで、NEOMは建設イノベーションの世界的なベストプラクティスの中心地として確立され、新しいビジネスと、熟練した雇用を創出することが可能になる。

同氏の見解によると、NEOMは従来の建物やインフラと比較して、建設廃棄物の埋め立てをなくし、天然資源の使用量を減らし、建設と運用の両面で排出量を削減することができる。これはMMCを使用し、様々なデジタルツールに支えられた優れた計画、設計、実行、およびリサイクルにより可能になる。このことは、持続可能性の面で大きなメリットをもたらす。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)の手法は、NEOMにとっても非常に重要な要素である。

「私たちのマスタープラン策定においては、建物やコミュニティを、その使用目的と、彼らの新しい生活の両方に合わせて設計することに重点を置いています。使用した材料の詳細を記録することで、新しい生活に向けた計画を立てることができます」

スマイス氏のチームは、建設における最大のCO2発生源のひとつであるコンクリートからの排出量を削減することを目指している。プロジェクトの巨大な規模を活用し、産業界と協力しながら、環境負荷の大幅な削減に取り組んでいる。

将来の製造拠点のための新たなモデルケース「OXAGON」が稼働する。(提供:NEOMウェブサイト)

サステナビリティ

NEOMの長期的な目標は、将来的にネット・ゼロのコミュニティを実現することだ。

「そのために、代替の構造形式や建材を検討しています。セメントメーカーや車両メーカーなどのサプライチェーン全体と協力して、建設活動による二酸化炭素排出量を最小限に抑えています」

NEOMは、コンクリートの需要を30%以上削減する材料や構造を採用する、重要な試験的プロジェクトを検討している。時間をかけてツール、技術、パワートレインのシフトを段階的に行い、実行可能な大規模なゼロエミッション建設機械や車両を開発して、排出量をさらに削減する。さらに長期的には、NEOMの建設現場全体に再生可能なエネルギーの供給網を設置する予定だ。

スマイス氏によると、デジタル技術は、NEOMの計画、設計、調達プロセス、建設、そして重要なことには、生涯にわたる運営・管理において、その基礎、かつ主導的な役割を果たすことになる。

NEOMは、設計段階から建設に至るまで、中核となるデジタルなバックボーンを活用する。これに匹敵するものがあるのは世界でもシンガポールだけであり、しかもそれは、最近になって遡及(そきゅう)的に導入されたものだ。

NEOMは開発の初期段階から、すべてのシステムをデジタル化している。これは、設計と建設のライフサイクル内の、すべてのプロセスを最適化することを意味している。

AI、機械学習

開発チームは、仮想的なサプライチェーンプラットフォームの統合や、デジタルバックボーンと連動した調達、サプライヤーとの取引の未来を模索している。

「AIや機械学習を活用することで、常に効率を高め、作業時間を短縮し、品質と持続可能性の両方を向上させながら、スピード感のある建設を可能にしていきたいと考えています。つまり、私たちは、持続可能なデジタル技術を用いた、先進的なMMCを展開し、それを通じて、王国と世界の建設業界が新しいパラダイムに向かうことを支援していくのです」

人類への投資

チームは新たな都市を作り出している。それに伴い、建設業における労働者の役割を変える義務を負っている。

その目的は、高い技能、自動化、工場での作業、そして従来のリスクがもはや許容されない業界を作ることである。

これは重要な変革プログラムであり、健康と福祉、トレーニング、エンゲージメントに対する、NEOMの包括的なアプローチを支えるものであるとスマイス氏は言う。

「テクノロジーは重要な要素です。しかし、それ以上に、この業界における1時間あたりの価値を大幅に高めることを目指しています。私たちは、宿泊施設の設計、トレーニング、労働環境、そして最終的には社会への統合に至るまで、これまでとは異なるアプローチを選択しています。この事実は、私たちが行うすべての決断の基準となるでしょう」と同氏は締めくくった。

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