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レバノン 2022年も続く危機、人々の苦しみも

2021年12月29日、レバノンのハズミエで、ホリデーシーズン中のショッピングモール内を歩く人々。2021年12月29日撮影。(ロイター)
2021年12月29日、レバノンのハズミエで、ホリデーシーズン中のショッピングモール内を歩く人々。2021年12月29日撮影。(ロイター)
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31 Dec 2021 04:12:13 GMT9
31 Dec 2021 04:12:13 GMT9
  • 経済的危機、政治に関連した燃料危機、電力危機、社会的危機が続く中、新年が旧年よりも良くなる望みはほとんどないように思われる

ナジャ・ホーサリ

ベイルート:新年の到来を迎える準備をするレバノンの人々は、2021年に段階的に拡大していった苦しみに耐え、疲弊している。

医療、司法、軍に影響を及ぼす危機が新たに発生したこの一年は、国の政治指導者間の関係がますます冷え込む中で終わりを迎えようとしている。

子供用の薬やミルクが買えず涙を流す両親の姿や、ガソリンスタンドの長蛇の列などが、市民が受けた屈辱を最も生々しく物語っている。

為替レートが1ドル=29,000レバノンポンドという空前の高値をつけたため、最低賃金の67万5千レバノンポンドの価値はわずか23ドルにまで落ち込んだ。

過去12ヶ月の間にレバノンは、6月に世界銀行が 「世界で最も深刻」と表現した危機を経験した。

レバノン中央銀行の外貨準備高がさらに激減したことで、金融政策は非難された。必要な流動性を確保するために通貨の増刷を繰り返し、それがインフレを加速させた。

8月には燃料、そして医薬品の輸入を対象とした補助金が停止された。労働者は通勤のために給料の半分以上を費やさなければならなくなった。薬が売っていない、あるいは売っていてももはや買う金もなく、多くの人々の命は危険にさらされている。

レバノンの主要電力会社であるEDL(Electricite du Liban)は今年、最低限の電力を供給することができず、国は文字通り暗闇に陥った。多くの人々は、自家用発電機の月々のコストが高騰したため、レンタルを止めざるを得なかった。

国家補助金は、国民を貧困から守るための明確な仕組みがないまま廃止された。貧困層や中間層を対象としたキャッシュカードによる支援プログラムもいまだ承認されていない。

社会的不安の高まりによって、国内の治安情勢が悪化し、犯罪率は上昇した。窃盗件数は2020年比で137%増加した。

2月4日には、ヒズボラ批判で知られる出版業者で政治活動家のルクマン・サリム氏が暗殺された。同氏は以前、ヒズボラから殺害予告を受けたと語っていた。

一方、ヒズボラは国内支配を強化する努力を惜しまない。ベイルート港での爆発の司法調査を指揮するタレク・ビタール判事を脅迫し、調査を政治利用していると非難している。

ヒズボラは9月にシリア経由でイランから燃料を輸入し、レバノン政府と米国の制裁に対抗したが、危機が続く中でそれは長くは続かなかった。

ベイルート南部カルデのアラブ系一族の青年が8月にヒズボラ関係者を暗殺し、同じ一族のメンバーがカルデで行われた葬儀中にヒズボラの支持者らを待ち伏せして襲い、5人が死亡する事件が発生した。

ヒズボラと敵対勢力との武力衝突の最たるものは10月にアイン・アル・レマネで起こったもので、機関銃やミサイルで武装した戦闘員による4時間にも及ぶ銃撃戦が行われた。この衝突で7人が死亡し、数十人が負傷した。アマル運動とヒズボラは、ビタール判事の解任を要求するために司法宮に向かっていたアマルとヒズボラに忠実な抗議者らをレバノン軍が攻撃したと非難した。

ビタール判事がベイルート港での爆発の調査を引き継いで以来、ハッサン・ディアブ元首相など爆発に至った経緯に関与したとされる政治家によって、調査は7回中断された。

一方、サアド・ハリーリ元首相は、フランスの援助をサポートする独立した専門家による政府を形成することができず、辞任した。自由愛国運動とヒズボラによってプロセスが妨害されたたことが原因だと伝えられている。

ナジーブ・ミカティ氏が引き継ぎ、13ヵ月の政治的膠着状態を経て、9月に新政権が発足した。しかし、昔と同じ政治勢力が代表を務め、1ヵ月もしないうちにヒズボラとアマル運動によってその活動は停止させられた。

年末には、クルダヒ情報相がイエメン内戦への介入を痛烈に批判したことに抗議して、サウジアラビアをはじめとするアラビア湾岸諸国がレバノンとの外交・経済関係を断絶し、同国の危機はピークに達した。

この政治家(クルダヒ情報相)の遅すぎる辞任は、「ヒズボラはレバノンを不安定にし続け、サウジアラビアに麻薬を輸出している」とサウジ当局が述べたように、緊張した関係の改善には至らなかった。

経済危機が続き、レバノンがレバノン特別法廷に対する分担金を拠出できないことから、7月に同法廷は永久に停止された。

レバノンは2022年に2つの重要な政治イベントに直面する。数千人の国外居住者が投票権を持つ5月15日の国民議会選挙と、10月の大統領選挙だ。

レバノンの経済・社会危機を克服するための援助の条件として、国際社会が要求する改革の実施が大きな課題として残っている。

レバノンは少なくとも、エジプトとヨルダンから燃料の供給を受けることで、来年には電力供給の質と信頼性を改善することを約束している。また、レバノンの治安当局は、レバノンを通る麻薬の密輸との闘いを継続することを約束している。

一方、世界的なパンデミックは続いている。ウイルスの拡散を遅らせるための予防措置が突破される中、レバノンでは新年の始まりと同時に多くの人が検査結果を待っていることだろう。

レバノンの人々は、これからより良い一年になることを切に願う中で、ネガティブな結果はこの検査結果だけであって欲しいと思っていることだろう。

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