
アラブニュース
ロンドン:米軍の特殊部隊が国防総省の「攻撃禁止リスト」に載っているダムを爆撃し、シリアの主要地域を壊滅させる寸前だったことが、新しい報告書により判明した。
2017年、米軍はシリア東部ラッカ上流のユーフラテス川沿いにあるタブカダムを空爆した。タブカダムではダーイシュの戦闘員が管制塔を占拠していた。
当初の報告では、米国とクルド人主導のシリア民主軍は、この場所を制圧するために使われた武器や弾薬は限られた量だったと主張、反ダーイシュ連合の代表は爆撃があったという噂を指して「ばかげた報道だ」と語った。
だが、ダーイシュとの戦争における爆撃を次々に明らかにされ、検証してきたニューヨークタイムズ紙の新たな分析は、2000ポンド爆弾が3発投入されたとしている。
この攻撃によって数万人の命が危険にさらされ、ダムの機械類は破壊されたため、ダムの浸水を防ぐために緊急の介入が必要となった。ダムが破壊されなかった唯一の理由は、「バンカーバスター」と呼ばれる地中貫通爆弾が爆発に失敗したためだった。
2017年3月26日、SDFがラッカに迫る中、米国は地上で活動しているクルド人の同盟軍の支援を得て攻撃を開始した。米国は、より威力のある攻撃を実現するためにクルド人軍と緊密な関係を築いていた。
SDFは、1950年代から継続的に運用されている長距離戦略爆撃機、B-52を要請した。軍はダーイッシュの戦闘員によって妨害され、それ以上ダムの上流に勧めなかったためだ。
SDFは管制塔に陣取るイスラム教過激派の戦闘員を発見し、爆撃が要請された。
ラッカ進攻作戦でSDGとともに活動していた米軍の第9特殊部隊は、国防情報局に使用可能な弾薬の判断を依頼した際、ダムは空爆するべきではないと警告された。
だが、同部隊はこの忠告を無視し、ダムでのダーイシュとの戦闘を理由に、突発的な生命にかかわる状況では通常の指揮系統を超えて空爆を要請できるという緊急プロトコルを利用した。
しかし、空爆を行ったB-52の乗務員の記録には「地形破壊」のために爆撃が必要ったと書かれており、ダーイシュの戦闘員の攻撃で人命が危険にさらされたかどうかには一言もふれられていない。
爆撃は壊滅的な被害をもたらした。機械が破壊されるとすぐに50フィートの水があっという間に上昇、ユーフラテス川上流、トルコのダムがあわてて流れのスピードを抑えにかかった。
一日の停戦が宣言され、紛争における立場にかかわらず集められた16人のエンジニアが水門を開放し、被害の拡大を防いだ。
エンジニアのうちの3人は、クレーンを使ってゲートを持ち上げることに成功した後、車で帰宅中にドローンによる爆撃を受けて死亡した。
このダム攻撃は、米空軍の関係者や軍事計画担当者に衝撃を与えたという。ニューヨークタイムズ紙では、元米国空軍大佐のスコット・マレー氏の発言が引用されている。「ダムのよう限局的な標的に2000ポンド爆弾を使用することは非常に難しく、決してその場の判断で軽々しく行うべきではなかった。あれだけの武器では最悪の場合、ダムの決壊を招く可能性も十分にあった」
国務省は、この攻撃はダムの構造物ではなく、管制塔を狙ったものであったと弁明した。
「分析では、隣接する管制塔への攻撃はタブカダムそのものには構造的損害を与える可能性はないと考えられていたことが確認された」と、米中央軍のビル・アーバン報道官は述べ、ダムは崩壊しなかったと付け加えた。「つまり、分析は正確であったことが証明された」