メネクセ・トキャイ
アンカラ:新型コロナのパンデミック後のトルコの観光業の回復への期待は、ロシアのウクライナ侵攻の結果、打ち砕かれた。
毎年、何百万人ものロシア人とウクライナ人がトルコで休暇を過ごすべく、飛行機で南へ向かっているが、今年の観光客数は大幅に減少すると見込まれ、観光業界は30%の減少を予測することになっている。
観光シーズンが近づく中、南部のリゾート地は既に侵攻とロシアに対するその後の制裁の影響を感じており、キャンセル率は70%を超えている。
パンデミック直前には観光業が国内総生産の10%を占めていたトルコには、昨年約470万人のロシア人と約210万人のウクライナ人が訪れ、年間を通じてやって来る外国人観光客総数2470万人の4分の1近くを占めた。
トルコ旅行業協会は、今年、700万人のロシア人と250万人のウクライナ人がやって来ると予想していたが、現在、期待ははるかに低くなっている。
トルコ南部のリゾート地では、ロシア人観光客のハイシーズンは通常5月上旬に始まる。
冬に文化・歴史観光でイスタンブールを旅するウクライナやロシアの観光客の多くも、今年は旅行を取りやめた。
主要野党の共和人民党は最近、報告書を公開し、ロシアとウクライナの観光客が来なくなることで、トルコの観光業界には約50億ドルの損失が生じる可能性があると主張した。
「ウクライナ紛争が3月、4月以降もさらに長引けば、今年の夏にロシアやウクライナの行楽客が来ることは期待できない。戦争心理と完全につながっているのだ。両親が国のために戦っていたり、戦地で親族を亡くしたりしたら、海外で夏休みを過ごすことはできない」と、世界観光フォーラム研究所のブルット・バグチ所長はアラブニュースに語った。
ロシアとウクライナの観光客は通常、アランヤやアンタルヤなど、トルコの地中海沿岸のリゾート地や、2年前にウクライナからのチャーター便が就航したトルコ中部のカッパドキアなどの人気観光スポットを訪れるという。
ウクライナ情勢が落ち着けば、ロシアの観光客の大部分がトルコ旅行の予約をする可能性はまだ高いが、ロシアに対する重い金融・決済制裁により問題が発生する可能性もある。
ロシアの7大銀行がスイフトのシステムから排除されたことを受け、ビザとマスターカードは海外でのロシアのクレジットカードの利用を停止している。
専門家らは、ロシア国民のスイフト送金の停止により、トルコでは既にキャンセルが発生していると述べた。
「国内観光客を動員することができれば、損失の一部を埋め合わせることができる。しかし、我々は一部の国々に依存するのではなく、さまざまな市場に拡大し多様化するための措置を既に講じてきたはずだ」と、バグチ氏は述べた。
地中海のリゾートの町、フェトヒエにあるYTMツーリズム・ヴィラ・アパートの共同設立者であるギョクセル・グンゴール氏は、国内観光客がロシアとウクライナの観光客の損失を埋め合わせることはできないと警鐘を鳴らした。
「夏場のホテル予約が12%しか埋まらなかったのは初めてだ。ロシアとの関係が緊迫していた時でさえも、ウクライナ人観光客がやって来ることで、何とか穴埋めしていた。今回はそうではない。国のために戦っている人たちが夏休みを計画することは期待できない」と、同氏はアラブニュースに語った。
2015年にトルコとシリアの国境沿いでロシアの戦闘機がトルコのF-16に撃墜された後、ロシアが報復としてトルコへの観光チャーター便を運航禁止にしたことを受け、トルコの観光産業も大きな打撃を受けた。
ウクライナでの戦争は、イギリス人観光客の休暇選びにも影響を与えるかもしれない。
「複数のイギリス人観光客は、まだ予約をキャンセルしていない。しかし、予約の確認はまだだ。みんな、戦場の成り行きに従って夏の計画を立てている」と、グンゴール氏は語った。
業界の代表者らはまた、観光客は戦争地域の近くであることを恐れて、ウクライナに近い目的地の選択を避けるだろうと警告した。
また、トルコのホテル経営者の中には、ロシアの行楽客による暗号通貨の利用拡大は、観光業界の資金需要には「適さない」と考える人もいる。
「トルコにはまだ、暗号通貨決済の法的枠組みがない。従って、暗号通貨を利用するロシア人観光客は、我々の人生を変えるものではない」と、グンゴール氏は述べた。
エアバスとボーイングが欧米の制裁に加わった後のロシアからトルコへのフライト運航状況や頻度も、業界関係者の頭痛の種となっている。