
アラブニュース
ロンドン:シリアが抜け殻会社(ペーパーカンパニー)を使用して、欧米による制裁を回避していることが、ガーディアン紙の報道で明らかになった。
同紙が入手した文書から、昨年10月の同日に設立された3つの会社(トラピスト、ジェネラス、スーパーブランデー)が、アサド大統領、および米国、EU、英国の制裁対象となっている個人を含む協力者たちとつながりがあることが分かったという。
この3社は、「複雑につながる関係性の網」を通し、政権の有力者たちによって過半数が所有されていると、ガーディアン紙は言う。そのようなつながりの中には、第三者企業の一部を保有することで、他の法人を支配したり株を取引したりすることも含まれる。
この3社に関係する個人の中には、シリア大統領府の経済・財務局長で、アサド大統領の顧問も務めるヤサール・フセイン・イブラヒム氏と、実業家のナセル・ディーブ・ディーブ氏が含まれる。両者とも、米国から制裁を受けている人物である。
二人は、他の実業家男女と協力して他企業の一部を所有することで、支配力を行使している。協力する実業家らも、ペーパーカンパニーから利益を得ている。例えば、イブラヒム氏は電気通信会社Wafa JSCの一部を所有しているが、Tele Spaceという別の会社もその一部を所有している。そしてこの別会社のオーナーであるアリ・ナジブ・イブラヒム氏は、3つのペーパーカンパニーの共同所有者である。
ペーパーカンパニーの間接的な支配に関連するもう一人の制裁対象者が、コドル・アリ・タヘル氏である。タヘル氏は政権とつながりがあることから、英国とEUの制裁を受けている。また、アンフェタミンの密輸と販売に一役買っているとして、告発もされている。
この仕組みを利用することで、政権は制裁を課す国や国家連合よりも一歩先んじることができる。そして経済のさまざまな分野を下支えし、人権侵害を繰り返すダマスカス政府をさらに罰しようとする取り組みを、妨げているのである。
米国政府は2020年にいわゆるシーザー法を成立させ、政権関連企業を制裁対象にできるようにしたが、これまでのところ、個人や企業に対して使われたことはない。
一方、英国は、EUを正式に離脱した年に1度だけ、政権関係者らに新たな一連の制裁を課したが、それ以降は行っていない。
シリアのムハンマド・サメール・アルハリル経済相は2021年10月、制裁逃れは「シリアの工芸品になった」と述べた。
シリア法整備プログラムの上級研究員エヤド・ハミド氏は、ガーディアン紙に対し次のように語っている。「(ペーパーカンパニーの追跡を続けることは)重要です。資産凍結や、政権がシリアで人権侵害のために使っている資源を枯渇させる取り組みの一環になるからです」
「(バイデン)政権の制裁は非常に限定的で、ある意味、前政権と違って、シリアの個人に制裁を加えるような意欲がありません」
認定マネーロンダリング防止スペシャリスト協会でグローバル制裁の責任者を務めるジャスティン・ウォーカー氏は、ガーディアン紙に対し、「(制裁の)一部は、企業に事業を継続させず、(そもそも)設立できないようにすることです」と話した。
ウォーカー氏は、このような行為に確実に対処し、政権が国際社会を迂回することを防ぐために、もっと多くのことを行う必要があると付け加えた。
「シリアでどれだけの企業が設立されたか想像した場合、それは政府の領域外のことであるため、調査の専門家やデューディリジェンス提供者が重要な役割を果たします」
ハミド氏もこの意見に同意し、こう語っている。「シリアのビジネスシーンは安定した環境ではなく、常に変化しているため、それらの変化に遅れないように対応するには、より多くの投資、調査、現場での情報収集が必要なのです」。