
イスラエル、ベエルシェバ:イスラエル南部で22日、ナイフを振り回した男が数人を刺した他、1人を車で轢いて4人が死亡する事件が発生した。この事件は近年で最も死者の多い事件の1つとなった。
警察によると、以前ダーイシュのグループに参加しようとしたことがある加害者は、南部の都市ベエルシェバで攻撃を行った後、武装した地元民によって射殺されたという。イスラエルのメディアは加害者をベドゥインの男と報じた。
ナフタリ・ベネット首相は、午後4時(グリニッジ標準時で午後2時)過ぎに発生し、ガソリンスタンドと近くのショッピングセンター前の路上が現場となった流血事件を受けて、「テロリスト」を取り締まると約束した。
凶行が始まった時ガソリンスタンドで洗車していた25歳のリラズ・ズリハン氏は、襲撃者が「剣のような」長いナイフを持ち、ぐるぐる回りながら刺す人を探しているのを見たという。
警察と救助活動組織「マゲン・ダビド・アドム」によると、加害者はガソリンスタンドで女性1人を刺し、自転車に乗っていた60代の男性を自分の車で轢き、ショッピングセンターの外でさらに数人を刺した後、撃たれたという。
警察は容疑者の身元を明らかにしていない。
しかし、イスラエルの複数のメディアは、襲撃者はベエルシェバ近郊にあるフーラのベドウィンコミュニティ出身で、30代の元学校教師、モハメド・アブ・アルキヤン容疑者だと報じた。アブ・アルキヤン容疑者はダーイシュとの関係を求め、過激派思想を説いたことで過去に有罪判決を受けているという。
2015年、イスラエルは教師4人を含む6人のベドウィンを、ダーイシュを支持した疑いで逮捕している。
襲撃事件発生後に公安相や警察署長と会談したベネット首相は、「高い能力と勇気を発揮し、さらなる犠牲を防いだ」と述べて加害者とされる人物を撃った人々を称賛した。
ベネット首相は、「治安部隊は厳戒態勢を敷いている。我々はテロリストの取り締まりに懸命に取り組む。我々はテロリストも、テロリストを助ける者も追い詰める」とツイートした。
国連のトール・ウェネスランド中東和平特使は、「今月7件目となるイスラエル人に対する刺殺攻撃」と述べて今回の暴力事件を非難した。
ウェネスランド特使は声明で、「パレスチナ自治区とイスラエルで暴力事件が毎日のように発生する事態が続いていることに対して懸念を強めている」と述べた。
イスラエルでは、刺傷事件や車を使った突入事件が日常的に発生している。
しかし、最近の暴力の多くは、1967年の第三次中東戦争後にイスラエルが併合したパレスチナ地区の東エルサレムや、同年からイスラエルが占領しているヨルダン川西岸地区で起きている。
また、イスラエル人が複数人死亡するような攻撃は近年まれで、ベエルシェバを含むイスラエル南部はそのような暴力事件を概ね免れてきた。
この地域では、イスラエルの人口の20%を構成するアラブ系少数民族の一部であるベドウィンが、土地争いをめぐって治安部隊と衝突する騒動が起きている。
ベネット政権を支持し、昨年の選挙でベドウィンの有権者の広い支持を受けたイスラエルのラアム党の党首、マンスール・アッバス氏は今回の攻撃を糾弾した。
アッバス党首の個人的なフェイスブックページには、「ラアム党はベエルシェバで発生した犯罪的な攻撃を非難し、殺された人々の家族に哀悼の意を表する」とするラアム党の声明が投稿された。
フーラの地方議会も、今回の事件を「犯罪行為で、テロ行為だ」と非難している。
AFP