
テルアビブ:ヨルダン川西岸地区で活動するイスラエル軍は30日、前夜イスラエル中部で発生した銃撃事件に関与したとされるパレスチナ人5人を逮捕した。この事件ではパレスチナ人1人がアサルトライフルで5人を殺害した。
警察は、銃撃事件の犯人をイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区ヤバド村のディア・ハマルシェ容疑者(27)と発表した。警察は29日遅くにハマルシェ容疑者を射殺して銃乱射事件に終止符を打った。
軍は声明で、他の容疑者らは取り調べを受けていると述べた。パレスチナ人の元受刑者や現在服役中の受刑者を代表する団体「パレスティニアン・プリズナーズ・クラブ(Palestinian Prisoners Club)」は、逮捕されたのはハマルシェ容疑者の親族だと発表した。
29日に発生した事件は、イスラム教の聖なる月ラマダンを前にした同種の攻撃としては3回目のものとなった。過激派組織「ダーイシュ」に影響されたアラブ系イスラエル市民によって行われた過去2回の攻撃により、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の3大祝日が重なるデリケートな時期を前に、新たな暴力事件が発生する懸念が起きていた。
イスラエルは、さらなる暴力事件の発生を阻止するため、イスラエルの都市とヨルダン川西岸地区周辺の両方で警備を強化した。ナフタリ・ベネット首相は、29日の攻撃の直後に安全保障の最高責任者を招集し、30日遅くに安全保障閣僚会議を開催する予定だった。
ベネット首相は声明の中で、「 我々は新たなテロの波に対処している。他の波と同様に、我々はテロに勝利する」と述べた。
イスラエルはここ数週間、緊張を緩和し、昨年のような事態を避けるための措置をとってきた。昨年には、エルサレムで起きたイスラエルの警察とパレスチナのデモ隊による衝突がイスラエルとハマスによる11日間の戦争に発展していた。イスラエルはヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ人に対する一連の制限を緩和することを計画した。イスラエルはまた、今週ヨルダン川西岸地区を珍しく訪問したヨルダンのアブドウッラー2世国王と協議し、緊張が高まると予想される時期に平穏を確保しようと努めた。
しかし、新たな暴力の波がこうした努力を大いに困難にしている。
イスラエルの当局は、今回の攻撃が過激派グループによる組織的なものなのか、それとも単独犯なのか、現時点で断定していない。
29日の銃撃事件は、テルアビブのすぐ東にある超正統派ユダヤ教の都市ブネイ・ブラクの2か所で発生した。警察は予備調査の結果として、銃撃犯はアサルトライフルで武装しており、現場で通行人に発砲した後で警官に撃たれたと発表した。
イスラエルの当局は今回の事件で5人が死亡したと発表した。警察によると、犠牲者のうち1人は現場に到着して銃撃犯と交戦した警察官だった。また、他の2人の犠牲者はウクライナ出身の外国人だった。ウクライナ人2人のイスラエル到着がロシアとウクライナによる戦争が始まる前か後かは、現時点で明らかになっていない。
ヨルダン川西岸地区では、パレスチナのマフムード・アッバース大統領が、「イスラエルやパレスチナの民間人の殺害は状況のさらなる悪化と不安定化を招くだけだ。特に聖なる月ラマダンやキリスト教とユダヤ教の祝日を控えている我々は皆状況の安定化を目指している」と述べて事件を非難した。
アッバース大統領は、暴力事件によって「永久的、包括的かつ公正な和平は、パレスチナとイスラエルの人々のための安全と安定を実現するための最短の道であることがはっきりした」と述べた。
どのパレスチナのグループも現時点で犯行を認めていない。過激派組織ハマスは事件を「英雄的な作戦」と称賛したが、犯行を認めるには至らなかった。
27日には中部の都市ハデラで2人組の銃撃犯が若い警官2人を射殺した。また、先週には南部のベエルシェバで単独犯が車で人々に突入し、刺傷事件を起こして4人が死亡した。
イスラエルの治安部隊は29日、銃撃事件に先立ち、少なくとも12人のアラブ系市民の家を家宅捜索した。取り締まりは最近の死者を伴う攻撃を受けて行われており、ダーイシュのグループとの関係が疑われる2人が逮捕された。
法執行機関の関係者によると、イスラエル北部では一晩で31か所の家屋や敷地が捜索された。この地域にはハデラの攻撃を行った銃撃犯が住んでいた。
ダーイシュのグループは、過去2回の攻撃について犯行を認めている。
攻撃はすべて、今週始まるラマダンを前に、また、イスラエルが今週、アラブ4か国の外相と米国の国務長官による注目の会合を主催する状況で発生した。
エジプト、モロッコ、バーレーン、アラブ首長国連邦のアラブ4か国に加え、米国も今回の殺害事件を非難した。
AP通信