• G20各国首脳は先週、新型コロナウイルスの感染拡大による失業や収入損失を回避するため、世界経済に5兆ドル（約５５０兆円）超の資金を注入することを約束した
• 新型コロナウイルスの感染者は世界中で73万8500人近くにのぼり、約3万5000人が亡くなっている

リヤド/ワシントン：G20（先進国に新興国を加えた主要20か国）各国の貿易相は月曜日、市場開放を維持し、重要な医療物資、医療機器、その他必需品の継続的な流れを確保することで合意した。

G20各国首脳は先週、新型コロナウイルスの感染拡大による失業や収入損失を回避するため、世界経済に5兆ドル（約５５０兆円）超の資金を注入することを約束した。また同時に、新型コロナウイルスの感染拡大を何とか食い止めたい政府機関による、国境閉鎖に起因する供給停止の軽減に努める。

各国の貿易相はテレビ会合の後に発表された共同声明で、貿易の円滑化を図り、医療機器や医薬品の追加生産を奨励し、サプライチェーンの混乱を最小限にとどめるため、「早急に必要な対策」を講じることを約束した。

会合では、すべての緊急対策が「対象を絞り、適切な規模で、透明性を持って、かつ暫定的に」講じられるべきであり、また世界貿易機関（WTO）に整合的であり、貿易に「不必要な障壁」を設けないことを確認した。

また不当利得行為や不当な値上げの阻止に努め、供給品を妥当な価格で公平に提供し続けることを約束した。

貿易相らは、「今回のパンデミック（世界的な大流行）に個人そして集団として立ち向かい、国際的な貿易や投資への影響を最小限に抑えるため、今後も協調体制を維持し、自由、公平、非差別的、透明、予見可能な、そして安定した貿易および投資環境の提供と市場開放の維持に努める」と語った。

また、グローバルサプライチェーンを維持する上で取られた貿易関連方策に関してはWTOに通知することで合意しており、必要があれば再び会合を開催するとしている。

しかし、G20加盟国のフランス、ドイツ、インドを含む多数の国々が設けた医薬品や医療物資に対する輸出禁止措置に関しては、明確にその解除を求めていない。またドナルド・トランプ米大統領のキーアドバイザーが「Buy America（米国製品を購入せよ）」の対象を医療機器や薬剤分野にまで広げる新たな規制作りに取り組んでいるが、数多くの企業団体が物資の不足をさらに悪化させると指摘している。

共同声明では、これまでのG20首脳の発言にも含まれている「国の要件に合致する」という言い回しが使われているが、これは保護貿易主義者が障壁を設ける上で抜け穴を与えることになるだろうと専門家は指摘する。

医療用防護服の不足により、医師や看護師が危険にさらされている。また多くの国が薬剤成分の入手先として感染源の中国に依存しているが、感染拡大を抑制するための封鎖対策で供給物資の流れが止まったり出荷が遅れたりしているため、必要物資の入手が困難になっている。

航空便による輸送可能量が激減し、企業がトラックの運転手や船員の確保に苦心する中、サプライチェーンは後退している。ヨーロッパやアメリカでは貨物輸送用コンテナが何万台も不足している。海運会社は船員不足や港での検疫で悪戦苦闘している。また農業分野でも混乱が生じている。

今回のテレビ会合にはWTO、世界保健機関（WHO）、経済協力開発機構（OECD）の代表者も参加している。

ある世界銀行幹部はG20加盟国に対し、重要な医療物資や食料、その他重要物資に新たな輸出規制を課すことを控え、重要物資に対する輸入関税を撤廃あるいは引き下げるよう、合意を促した。

ロバート・ライトハイザー米国通商代表は会合で各国の貿易相に対し、今回のパンデミックで、他国の安価な医療供給品への過剰な依存に起因する米国経済の脆弱性が明らかになったと語っている。同氏は「Buy America」規制には具体的に触れなかったものの、米国政府は多様化を促しており、国内製造を促進し米国や他国向けの供給者を増やしたいとした。

G20サウジアラビア事務局によると、火曜日には1週間余りで2度目となるG20財務相・中央銀行総裁会議がバーチャル形式で開催される予定で、貧困国に影を落とす債務危機に対する不安が増す中、前回に続き各国の対応を調整する。

日本の梶山弘志経済産業大臣は各国首脳に対し、官民両セクターが共に供給網遮断の回避に努め、早期の経済活動再開を目指すべきだとした。

新型コロナウイルスの感染者は世界中で73万8500人近く、死者は約3万5000人にのぼっており、国際通貨基金のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ会長は、景気は世界的に後退したとしている。

ロイター