
トリポリ:海軍に追跡されている途中に定員を超過した人数を乗せた密航ボートが転覆したため、レバノンの救助隊は25日、地中海で生存者を捜索した。未だに数十人が海上で行方不明のままである。
北部の港湾都市トリポリの沖合いで23日の深夜に発生したこの悲劇的事故により、少なくとも7人が死亡した。
5月15日の議会選挙のわずか3週間前に起きたこの事故は、レバノンにおけるここ数年間で最悪の大惨事であり、強い怒りを引き起こした。
最後に発見された遺体は25日の朝に回収された。
「今日、アル・ニムル家の女性の遺体がトリポリビーチから回収された」とトリポリ港のアフメド・タマル港湾局長はAFPに語り、救助活動は進行中であると付け加えた。
レバノン軍は24日、48人が救助されたと発表したが、出発時に何人の亡命希望者がボートに詰め込まれたのかは、すぐにははっきりしなかった。
国連難民機関(UNHCR)によると、このボートがトリポリ沖合約3海里(3.5マイル、5.5キロメートル)で転覆したとき、少なくとも84人が乗っていた。
UNHCRの数によると、約30人がまだ行方不明である可能性がある。
乗客にはシリア難民とパレスチナ難民が含まれていたが、ほとんどがレバノン人だったと地元メディアは報じた。
小型で定員超過人数を載せた船が沈没した状況は完全には明らかになっておらず、生存者の一部は海軍がボートに衝突したと主張しており、当局者は密航者らが無謀な回避操作を試みたと主張している。
レバノンはかつて、175キロメートル(110マイル)離れた島、欧州連合加盟国キプロスの海岸に、海路で到達することを希望するこの地域の各地から来た亡命希望者の通過点となっていた。
しかし、未曾有の経済危機がハイパーインフレを引き起こし、何百万人もの人々を貧困に陥れたため、危険な横断を試みるレバノン人の数は増加している。
国連によると、2021年に入ってから1,500人以上の亡命希望者が海路でレバノンを不法に出国しようとした。
「レバノンの経済危機は、同国の歴史の中で最大規模の移民の波を引き起こした」と国際移住機関のレバノン支部長マシュー・ルチアーノ氏は述べた。
トリポリ港では、ダンダシ家の兄弟、アブデルカリム氏とマフムード氏が8人の親族の消息を不安な気持ちで待っていた。
「あの人たちはヨーロッパの国々、人に同情を示す国々に避難しようとしていました。この国は人々を見殺しにしています」とアブデルカリム氏は語った。
「ここにいて飢餓で死ぬのでなければ、海上で死ぬんです」と同氏は述べた。
この悲劇は23日に小さな抗議行動を引き起こした。一つはトリポリに通じる主要道路を封鎖した人々によるもので、もう一つは犠牲者の遺体が運ばれた遺体安置所の前で起きた。
一夜にして、活動家たちはトリポリ市内の壁から選挙ポスターを取り除いた。トリポリは失業によって荒廃しているが、レバノンで最も裕福な政治家たちも住んでいる。
24日の夕方、エネルギー担当大臣ワリド・ファイヤド氏が生活環境に関して路上で非難され、壁に強く押し付けられる動画がソーシャルメディアに流れ始めた。
同氏を襲った男性はビデオを投稿し、ファイヤド氏とレバノン政府が何百万人もの絶望的なレバノン人の運命に無関心であると批判した。
さらにソーシャルメディアは、1枚の写真を巡って騒然とした。フランスの都市ニースに停泊するナジーブ・ミカティ首相が所有する長さ79メートル(259フィート)の1億ドルのヨットが写っており、その横にはダンボールにこう書いてある:「トリポリの人々は、このヨットの所有者によって暗殺されている」
ミカティ氏はトリポリ出身で、レバノンで最も裕福な人物でもあり、純資産額は約32億ドルと推定される。これは今月初めに国際通貨基金が同国を救うために合意した支援パッケージをわずかに上回る。
AFP