
カイロ:エジプトのムバラク元大統領の息子は17日、2011年に発生した民衆蜂起後に国際裁判所で罪に問われていた汚職容疑について、自身と家族は無罪であると発表した。
大統領が辞任に追い込まれた後、家族は国内外で訴訟に直面し、そのイメージ回復に長年努めていた。
ホスニー・ムバラク元大統領の息子であるガマール・ムバラク氏は、インターネット上に公開した動画による声明で、EUその他における最近の判決で家族の無実が示されたと述べた。しかし、一家がいかにして多額の富を蓄積したかについての釈明はなかった。
2月にクレディ・スイスの顧客情報が大量に流出し、ガマール・ムバラク氏とその兄アラア氏が、ある時点で少なくとも1億9750万ドルを同銀行に保有していたことが判明している。
「これで事実が立証され、虚偽の申し立てが明確に反証された。よって、過去の記録はそれぞれ司法手続きにより修正されている」とYouTubeの動画で公開した声明で述べ、非は、この件を国際裁判所に提訴したエジプト司法当局にあるとした。
2011年の抗議デモは、エジプトにおける根深い横領や政府汚職の終結を求める声や、ガマール・ムバラク氏が30年間権力を掌握していた父親の後継になるのではとの懸念の高まりに端を発していた。国際的な反汚職組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」は、ムバラク氏が大統領時代に700憶ドルほどの公的資金を着服したと見積もっている。ムバラク元大統領は2020年に91歳で死去した。
スイス検察当局は4月、エジプト国内のムバラク氏の人脈に関連するマネーロンダリングと組織犯罪疑惑の10年にわたる捜査に結論を下し、不起訴とした。
スイスに凍結されている約4億スイスフラン(4億3000万ドル)についても、解除を発表した。
EUの第一審裁判所も同月、エジプト国内で起訴に関わるムバラク氏の資産が捜査される間、ムバラク氏の妻、2人の息子、およびその妻の権利が尊重されていなかったとする判決を下した。この判決により、ムバラク氏らの口座に科されていた制裁は違法とされ、解除された。ガマーム・ムバラク氏は、家族はこの件に関する訴訟費用の払い戻しを受けていると述べた。
トランスペアレンシー・インターナショナルは、この動きを非難し、これにより世界中の腐敗した指導者は、罰を受けずに不正ができるのだと考えることだろうと述べた。
EUとスイスの捜査は、大規模な抗議デモに端を発したムバラク一族に対する一連の公判の一部だ。父親ムバラク氏と2人の息子が最初に拘束されたのは、抗議デモ「アラブの春」の一環で発生した民衆蜂起によりムバラク氏が退陣に追い込まれた2ヶ月後、2011年4月であった。
大統領にとって代わるエジプト軍最高評議会が設立され、その後2012年の選挙を経て、軋轢を生むことになるイスラム主義のムハンマド・ムルシー大統領へと政権が移譲された。ムルシー大統領はその後、民衆抗議デモが頻発する中、軍により退任に追い込まれた。
ホスニー・ムバラク氏は、独裁政治に対する18日間の抗議デモの最中にデモ参加者を殺害したとの容疑で長期にわたり裁判にかけられていたが、無罪となった。
ホスニー・ムバラク氏とその2人の息子は、大統領官邸を維持・修復するための資金を私宅の修繕費に流用した罪で有罪となり、禁固3年を言い渡された。2人の息子は2015年に刑期を終えて釈放され、父親のムバラク氏は2017年に釈放された。3名は横領した額を国に返済した。
2人の息子は2018年9月、株式市場を操作した容疑で短期間の未決拘留の身となった。しかし、拘留命令を出した裁判官に対する罷免を弁護団が申し立て、控訴裁判所がそれを認めた後、各10万ポンド(5600ドル)で保釈され、2020年に無罪となった。
AP