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イランのビル倒壊事故に対するデモは勢いを増す

ビデオ映像では、政府、さらに最高指導者(アヤトラ)アリー・ハメネイ師に対する辛辣なスローガンが使用されている。この抗議デモは、イスラム共和国の指導者にとって非常にデリケートな瞬間であることが伺える。(Twitter)
ビデオ映像では、政府、さらに最高指導者(アヤトラ)アリー・ハメネイ師に対する辛辣なスローガンが使用されている。この抗議デモは、イスラム共和国の指導者にとって非常にデリケートな瞬間であることが伺える。(Twitter)
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02 Jun 2022 03:06:30 GMT9
02 Jun 2022 03:06:30 GMT9
  • 犠牲者の実数は発表より多い可能性、請負業者は逃亡を許されたと未確認の報告

パリ:イラン南西部で起きたビル倒壊は、物価上昇と経済的困窮に対する市民の怒りを増幅させた。崩落事故は3週間続いていた抗議デモに火をつけ、収まる気配がないとオブザーバーは指摘する。

ビデオ映像では、政府、さらに最高指導者(アヤトラ)アリー・ハメネイ師に対する辛辣なスローガンが使用されている。この抗議デモは、イスラム共和国の指導者にとって非常にデリケートな瞬間であることが伺える。

5月初旬からイランのいくつかの都市で、パンなどの基本的な食料品の価格上昇を理由に抗議デモが行われてきた。そして、アーバーダーンのビル崩壊は新たな不安要素を追加した。

「トニー・ブレア研究所のシニア・イラン・アナリストであるカスラ・アラビ氏は次のように語る。「イランの市民たちは、もはや政府の腐敗への抗議だけではなく、最高指導者アリー・ハメネイ師と聖職者政権全体を直接的に訴えています。今回の抗議では、イスラム共和国に対して大きな挑戦状を突きつけているのです」

抗議行動は都市部と農村部の両方で「ますます広がって」おり、通常は体制支持の基盤となっている労働者階級が主導していると同氏はいう。

5月23日にフゼスタン州アーバーダーンで建設中の10階建てビルが倒壊したとき、イラン西部と北西部のアラブ系少数民族とクルド人の居住地に集中する定例抗議デモは開始からすでに2週間以上経っていた。

この悲劇は手抜き工事と汚職が原因とされ、公式発表によると少なくとも36人が死亡した。しかし未確認情報によると、実数はさらに多い可能性があり、請負業者は広く報道されているように死亡したのではなく、逃亡を許されたのだという。

反政府活動家によると、アーバーダーンの抗議デモは現在、7夜連続で続いているという。

ソーシャルメディアに投稿された映像によると、政権高官を対象にして叫ばれたスローガンでは、「ハメネイに死を」と繰り返し唱えられたという。アーバーダーンでは、聖職者の演説を「恥知らず」という罵声がかき消すほどであった。

デモは湾岸の中心地ブーシェフルなど他の都市にも広がっている。デモ参加者は「アメリカに死を」というイスラム共和国伝統の“マントラ”をひねって、「我々の敵は我々の目の前にいる、彼らがアメリカだと言うときは嘘だ!」と唱えた。

反政府組織「ムジャヒディン・ハルク」は、ホルモズガーン州、テヘラン、イスファハン州、南部のファールスなど、フゼスタン州以外のいくつかの州でも抗議行動を確認したと発表した。

活動家によると、5月中旬、アーバーダーンにおける崩壊事故の前にもデモ参加者の5人の死亡が確認されたという。治安部隊が追加派遣され、デモを鎮圧するために実弾を使用したとされる。

ノルウェーを拠点とするNGO「イラン・ヒューマンライツ」のディレクター、マムード・アミリ・モガダム氏は次のように述べた。「これは、イランの体制が脆く不安定な状況にあることを示すものです。どんな事件も大規模な抗議行動につながり、制御不能になる可能性があります。このため、ビルの崩壊事故は体制にとって、存亡の危機を招くと見なされるでしょう」

イラクとの国境に近いアーバーダーンは、イラン人にとって非常に象徴的な場所である。イスラム革命前夜の1978年、扉が閉まっていた映画館への放火で約400人が死亡したのもこの地である。

シネマ・レックスの大火災は、2001年9月11日以前の史上最悪のテロ攻撃の一つであり、国王政権に対する抗議を引き起こしたが、その責任は決して明らかにはなっていない。

アラビ氏によると、アーバーダーンのビル倒壊は抗議行動の「触媒」として作用し、その規模を拡大させるだけでなく、階級的な隔たりを超えた広がりを見せているという。

活動家によると、近年イランで起きた不安の高まり――2019年11月の燃料価格値上げに対する抗議行動など――への対処と同様に、当局は被災地でのインターネットへのアクセスを意図的に遅らせたり、切断したりしているという。

表現の自由のための国際人権団体「ARTICLE19」の中東地域担当上級研究員マーサ・アリマダニ氏は、今回の抗議行動中のインターネット遮断は非常に局所的なものであると述べた。

「抗議活動が行われている地域では、携帯電話のシャットダウンや混乱が続いています。アーバーダーンでも、抗議活動が行われている間、夜間に携帯電話や家庭用インターネットが切断されるという事例が実際に報告されています」と、彼女はAFPに語った。

アリマダニ氏は、このような状況下では、グローバルなソーシャルメディア大手、特に「Meta」が、デモ参加者によるビデオ投稿、主に反政権の生々しいスローガンを含む投稿を検閲しないことが極めて重要であると述べた。

Metaが所有するInstagramとWhatsAppは、イランではまだ検閲されておらず、最も利用されているアプリケーションである。Twitter、YouTube、Facebook、Telegramはすべて、同国でブロックされている。

「抗議活動は厄介で複雑な出来事であり、検閲や言論の取り締まりは不可能です」と彼女は言い、抗議活動の記録ネットワーク「1500tasvir」などを襲った「無数の削除事例」を非難した。

抗議の怒りはサッカーにも波及した。テヘランのトップチームであるエステグラルは、最近テヘランのアザディ・スタジアムで行われた試合で「アーバーダーン」の掛け声を上げた。

一方、チームのキャプテンで代表チームのスター選手であるヴォリヤー・ガフーリー氏は、試合後のインタビューで抗議活動を支持したため、イランの国営メディアからボイコットされたと伝えられている。

受賞経験のあるモハマド・ラスロフ監督率いるイランの映画制作者グループは、アーバーダーンにおける崩壊事故後の「汚職、盗難、非効率性、弾圧」に対する怒りに直面し、治安部隊に「武器を置く」よう求める公開書簡を発表した。

この抗議行動の波は、カンヌ映画祭でイランのザール・アミール・エブラヒミ氏が最優秀女優賞を受賞した場にも及んだ。

2006年に性的動画の被害者となり、イランを離れざるを得なかった同女優は受賞を喜びながらも、ペルシア語で涙ながらに「私の心はアーバーダーンの男女とともにある」と述べた。

AFP

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