
マーラブ(レバノン):キリスト教系の右派政党・民兵組織のレバノン軍団(LF)の党首は1日、同党がイスラム教シーア派の武装組織であるヒズボラに協調するいかなる人物が首相になってもそれを拒否し、新たな合意により内閣が組織されても、その政府を断固としてボイコットすると表明した。
世界銀行によると、レバノンは今、世界最悪クラスの経済崩壊にあえいでおり、現地通貨リラの価値は2019年以降、90%も下落している。
アナリストらは、国会の分裂により、レバノンを危機から救うために必要な改革法案に対する合意形成が遅れる可能性が高いと警告してきた。この分裂は、国のリーダーの不在を招く可能性がある。
先月の総選挙では、LFと独立系の新人候補がより多くの議席を獲得したが、5月31日に開かれた選挙後初の国会において、ヒズボラと同盟を結ぶナビーフ・ビッリー氏の7期目の議長就任を阻止できなかった。
「いつものように万人を含めてしまう政府であれば、当然ながら我々は承認しないし、参加もしない」。LFのサミール・ジャアジャア党首はロイター通信の取材に対し、このように述べた。
「彼ら(ヒズボラ)は、あまり喜ぶべきではない」。彼はこう述べ、国会の分裂は、イランを後ろ盾とするヒズボラおよびその同盟者側とLF側との間の「深刻な対立」を招くと付言した。
2日の国会本会議は、5月15日の総選挙後初の国会となった。この選挙は、レバノン経済の崩壊、そして215人を超す死者が出た2020年のベイルート港爆発事故以来、初めて行われたものだ。
LFは、1975年から1990年にかけて繰り広げられたレバノン内戦中の武装闘争の一環として結党したが、闘争終結後は公式に武器を放棄している。
LFは、国会と内閣の両方に参加してきたが、首都ベイルートで広範な反政府運動が起きた2019年以降、内閣からは離脱したままだ。
独立系の国会議員は、LFの内戦での役割や最近の政治的な既成勢力としての役割に対し、警戒感を示してきた。しかし、ジャアジャア氏は、新参の国会議員はLFと手を組まない限り、ほとんど影響力を持たないと述べた。
「我々は皆、必要な国の改革と復活のプロセスを体験できるようになるために、互いの存在を必要としている」。ジャアジャア氏はこのように述べた。
レバノンの現行の統治システムにおいては、首相を選ぶ際、ヒズボラと同盟を組んでLFに対抗するミシェル・アウン大統領が国会議員と協議する必要がある。
ジャアジャア氏は、LFが次期首相の最有力候補でもあるナジブ・ミカティ現首相の再任を支持するのか、または別の候補者を後援するのかについて、明言を避けた。
新たに組織される内閣は、数ヵ月間しか継続しない。今年10月末に任期満了となるアウン大統領の後任を、国会で選ぶことになっているからだ。その後に、次期大統領が新首相を任命することになる。
アウン大統領は、数十年にわたるLFとの激しい対立関係を経て、2016年にLFの後押しを受けて大統領に就任した。
しかし、ジャアジャア氏は、今回については、彼の党はヒズボラを後ろ盾とするいかなる大統領候補をも拒否すると述べた。
ロイター