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東地中海パイプライン破綻の報道でトルコ政府が代替エネルギー経路を検討

2020年1月2日、東地中海パイプライン建設契約の調印を前にしたニコス・アナスタシアディス氏、キリアコス・ミツォタキス氏、ベンヤミン・ネタニヤフ氏。ギリシャのアテネにあるザッペイオン・ホールにて。(ロイター)
2020年1月2日、東地中海パイプライン建設契約の調印を前にしたニコス・アナスタシアディス氏、キリアコス・ミツォタキス氏、ベンヤミン・ネタニヤフ氏。ギリシャのアテネにあるザッペイオン・ホールにて。(ロイター)
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21 Jan 2022 05:01:52 GMT9
21 Jan 2022 05:01:52 GMT9
  • レジェップ・タイイップ・エルドアン氏「このプロジェクトは実行不可能だ。彼ら(米国)が全分析を行ったところ、プラス面が無いことを確認された」
  • 専門家によれば、地域的な力学の変化で、トルコがイスラエルとのエネルギー関係を強化するチャンスが開ける可能性がある

メネクセ・トキャイ

アンカラ:米国が経済的・環境的な懸念のため東地中海パイプライン(EastMed)のサポートから撤退したと報道される中、トルコ政府は代替のエネルギー源を交渉の席に持ち出す準備を整えている。

東地中海パイプライン(EastMed)プロジェクトは2025年までに完成予定だった。その狙いはヨーロッパのロシアのガスへの依存度を減らすことだ。年間100億立法メートルのガスをイスラエルとキプロスの海域から、1,900kmに及ぶパイプラインを通してヨーロッパのガス網に運搬するというものだ。

トルコは長らく東地中海パイプラインプロジェクトに反対してきた。このプロジェクトはギリシャ、キプロス、イスラエルが支持しており、トランプ政権もこのパイプラインを支援していた。

1月18日のアルバニア訪問の際、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は報道陣に、このプロジェクトは「トルコなしではうまくいかない」と語った。

「このプロジェクトは実行不可能です。彼ら(米国)が全ての分析を行った結果、プラス面が無いということを確認されました。別の言い方をすれば、コスト計算が合わないのです。そのため米国は支持を取り下げたのです」

イスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領の公式訪問の可能性が議論される中、エルドアン氏は火曜、トルコとイスラエルは以前、エネルギー資源での協力を試みたが、意味のある交渉が進むことはなかったと語った。

「米国が東地中海パイプラインに対する興味を喪失した理由は、第1に米国のエネルギー政策の焦点が変化したこと、第2にこのパイプラインが直面している経済的、地政学的、技術的、環境的な複数の課題のためです」と、ワシントンのユーラシアエネルギー評議会のエネルギー専門家であるマダリナ・シス・ヴィカーリ氏がアラブニュースに語った。

同氏は「東地中海地域のエネルギーについて言えば、米国が現在興味を持っているのは第1にガスと再生可能エネルギー源の両方をサポートできる電力インターコネクターです。例えばイスラエルおよびキプロス島とヨーロッパの電力網を接続しているユーロアジア・インターコネクターや、エジプトをクレタ島およびギリシャに接続しているユーロアフリカ海中電力インターコネクターなどのようなものです」と付け加えた。

シス・ヴィカーリ氏によれば、東地中海の他の当事者たちはエネルギーに関するチャンスを育て始めており、プロジェクトは天然ガスの分野を超えるものとなっており、そうした取り組みでこの地域の地政学的環境が作り変えられる可能性があるという。

「例えば、エジプトとギリシャとキプロスが昨10月に、送電の相互接続の協力に関する2つの覚書に調印しました。1つは電力網の接続を目的としており、もう1つは電力システムを海中ケーブルを通してエジプトに接続することが目的です」と、同氏は述べた。

同氏は「後者のインターコネクターで、再生可能エネルギーを用いて北アフリカで発電された電力がヨーロッパに送電されます。東地中海におけるこうしたインフラとしては初めてのものとなります」という。

さらにシス・ヴィカーリ氏は、東地中海パイプラインに対する米国政府の姿勢変更は、イスラエルの気分の変化を決定づける可能性もあると指摘した。このプロジェクトはイスラエルのナフタリ・ベネット首相が宣言した環境目標とは両立しないからだ。ナフタリ・ベネット首相は2050年までに「排出ゼロ」とすることを公約している。

専門家は、地域的な力学の変化でトルコがイスラエルとのエネルギー協力を強化するチャンスが開ける可能性があると指摘する。

元敵国との関係を修復する取り組みの一環として、トルコは既にイスラエルのガスを自国の領土を通してヨーロッパに運搬する用意ができていることを示唆している。

先日エルドアン氏は「我々は座って条件を話し合う用意があります」と発言し、トルコは可能ならばエネルギーを「平和の道具として」活用してもいいと付け加えた。

このようなエネルギー取引の目的が純粋にガスの輸送だけを目的としているのか、それとも、さらに広いエネルギー分野での協力を含むものなのかは、今後の注目事項であるとシス・ヴィカーリ氏は指摘する。

「しかし、エネルギー合意は重要な地政学的含意を持つ可能性があります。トルコとイスラエルの2国間関係に関してだけでなく、東地中海地域全体にとっても同様にです」と、同氏は言う。

アンカラを拠点とするエネルギー専門家のアイドゥン・セゼル氏によれば、当局がトルコの領土を通ってガスをヨーロッパに運搬するための共同プロジェクトを開始する決定をしているのだとすれば、新たなパイプラインの立ち上げは適切なことではないという。

同氏はアラブニュースに次のように語った。「アラブ・ガス・パイプラインという天然ガスを輸送するための地域横断型ガスパイプラインが既にあります。このパイプラインは、エジプトの天然ガスをレバノン、ヨルダン、シリア、レバノンを経由してヨーロッパに運ぶもので、シリアの輸送経路の建設が完了してホムス・アレッポ区間が完成すればトルコへ接続される予定となっています」

アレッポとトルコ国境の町キリスを結ぶアラブ・ガス・パイプラインのシリア・トルコ間接続の第1区間は既に建設されている。

しかし他方で、提案されていたトルコとイスラエル間のパイプライン建設が交渉の議題になった2017年に、トルコとイスラエルのエネルギー相は集中的な交渉を行っていた。

セゼル氏によれば、「予定では500kmに及ぶパイプラインとなり、トルコ領土を通ってリバイアサンからヨーロッパにガスを運搬するためにキプロスかシリア、もしくは両方の水域を通過することになっていました」という。

「国際海事法上の観点だけでなく、トルコの企業はこのプロジェクトはコストが大きすぎて財政的に実行不可能であることに気付いたのです」

「しかしエジプトの北側には大量のガスが埋蔵されています。このことが、新たなパイプラインを建設するのではなく、この地域に注目するようにトルコを促すことになるでしょう」と、セゼル氏は言う。

セゼル氏によれば、イスラエルとのいかなる新たなガスプロジェクトも、脆弱な地域的関係をさらに傷つける可能性があり、特に厳しい冬の条件下でトルコへのガス輸送を停止する口実としてイラン政府に利用される可能性があるという。

イランは水曜、トルコへのガス輸送を停止した。技術的不具合が理由とされているが、ヘルツォーク氏がトルコを訪問する見通しであることに対するイラン政府の反応なのではないかと複数の専門家が疑問を投げかけている。

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