
ベイルート:イスラエル向けの天然ガスを生産するための船舶1隻がレバノンとイスラエルの沖合に到着したことを受け、レバノンは5日、争いのある水域でのイスラエルの“攻撃行動”に警告を発した。この水域では、両国が沖合でのエネルギー開発を望んでいる。
ロンドンに本社があるエナジアン(Energean)が運航する天然ガスの貯蔵・生産用船舶が到着した後、レバノンのミシェル・アウン大統領は、紛争海域でのいかなる活動も攻撃および挑発とみなされると述べた。
イスラエルは、問題の海域は同国の排他的経済水域内であり、争いのある水域ではないと述べている。
しかし、同大統領は声明で、「当該船がイスラエルとの間で争いのある海域に入ったことについてナジーブ・ミカティ暫定首相と協議し、陸軍司令部に対しては、この問題に関する正確な公式データを提供するよう求めた」と述べた。
アウン大統領は、南部海上の国境線を確定する協議が続いており、「当該の紛争海域におけるいかなる行動または活動も、挑発的および攻撃的な行動を示すもの」だと述べた。
この声明に対し、イスラエル政府側は即座に反応しなかった。イスラエルのエネルギー担当相であるカリン・エルハラ氏は、当該船の海域到着を歓迎し、速やかに作業に入ることを望んでいる、と述べた。
「我々は、エネルギー市場の多様化に引き続き取り組み、その安定性と信頼性を維持する」。同相はこのように述べた。
エナジアンは、浮体式生産貯蔵・荷下ろし船は5日、イスラエルの排他的経済水域内にあるハイファ市沖合約80キロのカリシュ(Karish)ガス田海域に到着したと述べた。同社は、今年第3四半期に作業に入る予定であるとした。
ミカティ氏は、イスラエルが「レバノンの海洋資源を侵害し、紛争海域での既成事実化を図っている」とし、「極めて危険な行為」であると述べた。
アメリカは、東地中海でのエネルギー開発を妨げてきたライバル国同士の長年の紛争を鎮静化するため、2000年に両国間の間接的協議の仲介を開始した。レバノンは、イランの支援を受けてイスラエルとの戦闘を繰り返してきた重武装のヒズボラ・グループの本拠地となっている。
ヒズボラはこれまで、イスラエルに対し、海上国境問題が解決するまで、この紛争海域で原油やガスを掘削しないよう警告。イスラエルが掘削作業に入った場合には行動を起こすとしていた。
イスラエル、レバノン両国はこの海上国境について、国連の場でそれぞれの主張を展開してきた。レバノン側は、国境は当該海域の南側でさらに斜め方向に延びているとしている。一方のイスラエル側は、国境は海域のさらに北側に延びていると主張。この結果、三角形の紛争海域が生まれている。
ロイター