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イスラエルの判決が、過去数十年で最大規模のパレスチナ人移住をもたらす

2022年6月10日、パレスチナ人、左派、国内外の活動家が、「射撃区域918」からパレスチナ人コミュニティを立ち退かせる最高裁の決定に抗議するために集まった。パレスチナの旗を掲げるデモ隊をイスラエルの治安部隊が取り囲んでいる。(AFP)
2022年6月10日、パレスチナ人、左派、国内外の活動家が、「射撃区域918」からパレスチナ人コミュニティを立ち退かせる最高裁の決定に抗議するために集まった。パレスチナの旗を掲げるデモ隊をイスラエルの治安部隊が取り囲んでいる。(AFP)
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13 Jun 2022 03:06:53 GMT9
13 Jun 2022 03:06:53 GMT9
  • イスラエルは、ヨルダン川西岸地区には永住者は存在しないと言及
  • パレスチナの農民や羊飼いは、土地との歴史的なつながりを主張している

ヨルダン川西岸地区/マサファー・ヤッタ:ヨルダン川西岸地区のマサファー・ヤッタに住む約1200人のパレスチナ人は、軍の射撃場建設のために強制退去を強いられる可能性がある。数十年にわたる法廷闘争の末、イスラエルの最高裁が先日結審した。

この判決により、イスラエルが1967年の第三次中東戦争で同地を占領して以来最大規模の強制退去の可能性が浮上した。しかし住民たちは、自分たちの回復力と国際的な圧力によって、イスラエルがこの立ち退きを実行しないことを願い、また拒否している。

「彼らは入植地を建設するために、この土地を我々から奪おうとしているのです」と、アル・ファケイトの住人ワダ・アユーブ・アブ・サバ氏は語った。同地は、パレスチナ人の羊飼いや農民がこの土地との歴史的関係を主張している村落の一つである。

「私たちはここを離れません」と彼女は言った。

1980年代、イスラエルはこの地域を「射撃区域918」と呼ばれる閉鎖された軍事地帯に指定した。イスラエルと西岸地区の境界線に沿ったこの約30平方キロメートルのエリアは訓練のために「極めて重要」であり、そこに住むパレスチナ人は季節居住者に過ぎないと法廷で主張したのである。

アブ・サバ氏は、電球1つで照らされた残り少ないテントのひとつに座りながら、「この1年は計り知れない悲しみの年でした」と声を詰まらせるように言った。

南ヘブロン丘陵にある同地域のコミュニティは、伝統的に地下洞窟に住んでいた。しかしこの20年の間に、彼らは地上にトタン小屋や小さな部屋を建てるようになった。

イスラエル軍は何年も前からこれらの新たな建築物を取り壊してきた。そして裁判所の後押しがある今、強制退去はさらに進むだろうとアブ・サバ氏は語る。

先日、兵士がブルドーザーで建築物の一部を壊しに来た後、彼女の家族の所有物は瓦礫の山と化した。彼女は、破壊された家具よりも、減ってしまった家畜の方が大きな損失だと嘆いた。

長引く裁判の中では、同地域に住むパレスチナ人が永住者なのか、それとも季節的な居住者なのかが、議論の中心となっていた。

最高裁は、この地域が射撃区域とし指定される以前に、これら住民たちが「永住者であると主張していることに関する証拠を証明できなかった」と結論づけた。最高裁は、航空写真と、双方が証拠として引用した1985年の書籍の抜粋をその決定の根拠とした。

「ヘブロン山の洞窟の生活(英題:Life in the Caves of Mount Hebron)」と題されたこの本は、イスラエルの人類学者ヤコブ・ハバクック氏によって書かれたものである。彼はマサファー・ヤッタのパレスチナ人農民と羊飼いの生活を3年間研究した。

ハバクック氏はコメントを避け、ロイター通信に自著を紹介した。ただ、住民の弁護士からの依頼で彼らのために専門家の意見を提出しようとしたが、当時勤務していたイスラエル国防省に阻まれたと語ってくれた。

国際的な批判

国連とEUはこの判決を非難し、イスラエルに対し、家屋の撤去や強制退去を停止するよう促した。

EU報道官は声明で、「射撃区域の設置は、占領下にある住民を移送する条件である『差し迫った軍事的理由』とは見なされない」と述べた。

イスラエルの研究者によって明らかにされた1981年の入植に関する閣僚会議の記録では、後に首相となるアリエル・シャロン農業相(当時)が、イスラエル軍が南ヘブロン丘陵に訓練地帯を拡大してパレスチナ人住民から土地を奪うよう提案している。

シャロン氏は、「丘陵地帯から砂漠に向かってアラブの村人が広がっている」ことから、「もっと訓練地帯を増やすことを望む」と語った。

イスラエル軍はロイターに対し、この地域は「様々な作戦上の配慮」から射撃区域とされており、パレスチナ人は長年にわたり許可なく建物を建設し、閉鎖命令に違反してきたと語った。

国連によると、イスラエル当局は「C地区」パレスチナ人の建築許可申請のほとんどを却下しているという。イスラエルが完全に支配する同地区はヨルダン川西岸地区の3分の2を占める広大な土地であり、多くのユダヤ人入植地が存在し、パレスチナ人はその限られた自治権を行使している。

国連のデータでは、イスラエルはC地区の30%近くを軍事射撃区域として指定している。この指定により、最も弱い立場にある38のパレスチナ人コミュニティーが強制退去の危機にさらされている。

そして一方、この地域の入植地は拡大を続けている。同地区ではパレスチナ人の移動と、住民が農作業や羊やヤギの放牧をするための領域がさらに制限されている。

「このオリーブの木は全部私のものです」と、近くにある木立を指差しながら、危機的状況にある別の集落、アル・マルケズのマフムード・アリ・ナジャジュレ氏は言う。「ここを離れる選択肢があるでしょうか?」

2年前に植え、彼が一本ずつ数えた3500本のオリーブの木は、つぼみが開き始めていた。

「嵐が過ぎ去るのを待って、またやり直すつもりです」とナジャジュレ氏はロイター通信に語った。「ここを去るくらいなら、死んだ方がましです」

ロイター

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