
ダヤン・アブティン
リヤド:サウジアラビアは、政府が経済多様化計画「ビジョン2030」の資金調達を進める中で、王国国立銀行の準備高が2016年以降58%減少した。
2016年4月のサウジ中央銀行の政府資金は9570億サウジ・リヤル(約2550億ドル)であったが、現在は4020億サウジ・リヤルとなっている。
米国・サウジアラビアビジネス評議会のエコノミスト、アルバラ・アルワジール氏は、準備金の取り崩しは、2016年以降、石油からの資金が減少したことに起因するとアラブニュースに語った。
「原油価格の下落を踏まえると、王国の石油収入の減少は、2013年以降毎年財政赤字に繋がり、これにより政府は二本立てのアプローチを導入することになりました」と同氏は言う。「1つ目は膨大な自国通貨準備・外貨準備を削減すること、2つ目は増大する国家支出を賄うために債券の発行を通じて債券市場にアプローチすることでした」
近年、原油価格が高値に回復しているにもかかわらず、政府準備高は減少を続けている。
サウジアラビア中央銀行の最新データによると、中央銀行の政府勘定は3月に比べ4月は350億サウジ・リヤル減少し、4024億サウジ・リヤルとなった。
当該月の減少は、政府の経常収支と政府準備高が原因で、4月の減少幅はそれぞれ163億サウジ・リヤルと187億サウジ・リヤル。
4月の政府準備高は3191億サウジ・リヤルで、前年同月比で10.8%(388億サウジ・リヤル)減少。しかし4月の経常収支は834億サウジ・リヤルで、前年同月比では39%(233億サウジ・リヤル)の増加となった。
中央銀行は主に米国債や同様の低リスク資産に投資していたが、近年では、今や王国の資金の主要な投資手段である公的投資基金(PIF)の影に隠れている。
アルワジール氏は「最近の石油価格の回復に伴い、政府は、石油収入の増加から政府支出の増加を分離しようと図る『財政持続可能性プログラム』に着手しており、以前の石油ブームのような循環的な支出を避けることを目指しています」と述べた。
「ビジョン2030」開発計画で、王国は経済の多様化を図り、長期的には石油への依存を解消していきたいと考えている。
PIFは1971年に設立、新たに結成された経済開発評議会の指揮下に置かれた2015年に再設立となった。
アルワジール氏は「政府準備金の取り崩しは、民間部門の景気刺激策に関連する王国の資金需要を満たす必要性に駆られてという部分もあります」と語る。
「さらに、王国の大規模な多角化計画に沿って、PIFや国家改造プログラムなど種々の『ビジョン実現プログラム』に資本を投入する必要があります」
「長年にわたり政府準備金を取り崩してはいますが、財務省によると、現在のレベルはまだ許容範囲内であるようです」とアルワジール氏は付け加えた。
アルワジール氏は言う。サウジアラビア政府は、石油ブーム時によくあるような政府準備金の補充を今後も続けるだろう、しかし、その焦点はPIFと国家開発基金による王国の非石油経済の開発に移っていき、以前よりもそちらが優先となっていくだろう、と。