
イスラエル・ベエルシェバ:15日、イスラエルの裁判所は、逮捕から6年を経て、米国の大規模NGOの元ガザ地区責任者に、数百万ドルの資金を流用して過激派組織ハマスに引き渡した罪で有罪判決を下した。
イスラエルは、ワールド・ビジョンのガザ地区事業の責任者であるパレスチナ人のモハマド・ハラビ氏を、数百万ドルの資金を流用して、パレスチナの飛び地ガザ地区を支配するハマスに引き渡した罪で起訴していた。
同氏は2016年6月に逮捕され、同年8月に起訴された。イスラエルは保釈を拒否していた。
ハラビ氏も慈善団体であるワールド・ビジョンも、いっさいの不正を頑強に否定していた。
しかし、判決要旨によると、ベエルシェバにあるイスラエルの地方裁判所は15日、テロ組織「ハマス」への帰属、テロ活動への資金供与、「敵への情報伝達」、武器の所持の罪でハラビ氏に有罪判決を下した。
ハラビ氏に不利な証拠の大半は、イスラエルが訴える「安全保障上の懸念」を理由に秘密扱いされ、同氏の弁護チームは判決の正当性に疑問を投げかけている。
ハラビ氏の弁護人を務めるマヘル・ハンナ氏は、この判決について「完全に政治的」と評し、「事実とは無関係」であり依頼人は控訴すると述べた。
ワールド・ビジョンのパブリックエンゲージメント担当シニアディレクターを務めるシャロン・マーシャル氏は、「きわめて残念」と述べた。
同氏は、「私たちの見解では、裁判手続きに不正があり、公に入手できる確たる証拠が欠如している」と述べ、ハラビ氏の控訴の決断をNGOとして支持すると付け加えた。
15日の判決によると、「被告人はハマスの活動における積極的かつ重要な役割を果たし、テロ活動の資金調達に使われることを知りながら、資金や物資の移転を通じてなどさまざまな方法で、何年にもわたりハマスを支援した」
「被告人に対する起訴内容は、ハマスとの間での大規模な資金支援や情報共有を指摘している」とも記されている。しかし、ハラビ氏の弁護人は、罪状の一部の詳細は今も不明なままであると述べた。
「どの資金が、どこから、いくら与えられ…どのプロジェクトから、どの政府から、どこからこの資金が彼のところにやってきたか、そしてどのようにハマスに提供されたか、を特定できないのです」と、ハンナ氏は述べた。
そして、「今日に至るまで、モハマド氏は『裁判官は、私がやったと指弾している事柄について、本当にそう言っているのですか?』と尋ねてきます」と付け加えた。
ハラビ氏の逮捕を受けて、ワールド・ビジョンへの大口資金提供者であるオーストラリア政府は、ガザ地区でのプロジェクトへの資金拠出を凍結していると発表した。
その後のオーストラリア政府による調査で、流用の証拠は見つからなかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのイスラエル・パレスチナ担当ディレクターを務めるオマー・シャキール氏は、この判決は「裁判の誤りが組み合わさっています」と述べた。
「秘密証拠に主に基づいてハラビ氏を6年間も拘束したのは、適正手続きや最も基本的である公正な裁判の規定をないがしろにするものです」と、声明で述べている。
ハラビ氏は「ずっと以前に釈放されて然るべきでした。残酷な拘束を続けるのは、いたく不当なことです」と、シャキール氏は付け加えている。
15日の判決を受けて、ハラビ氏の出生地であるガザでは抗議デモが行われた。一方、ベエルシェバの裁判所の外ではイスラエル人の小グループによる有罪判決支持のデモが行われ、イスラエル国旗を振りながら、去っていくハラビ氏の支持者に向かって叫び声を挙げていた。
14日、国連人権高等弁務官事務所は、特に「証拠の欠如」に関し、訴訟手続きについて「重大な懸念」を表明していた。
そこでは、「秘密証拠の広範な使用」「拘束中の虐待に関する信頼できる主張」と言及されている。
ハラビ氏の刑は数週間後に言い渡される予定だ。
ワールド・ビジョンは全世界に約4万人の従業員を抱える米国のキリスト教系慈善団体である。
世界最大のNGOの1つであると主張しており、特に児童に焦点を当てている。
AFP