• 気象当局によると、気候変動により砂嵐・砂塵嵐の頻度と強度が増している
• 地域全体の植林プロジェクトは、砂嵐が農業や健康に与える悪影響の軽減を目指している

ラワン・ラドワン

ジェッダ：太古の昔から、サウジアラビアの大部分を通過する大きな砂嵐は季節的な自然現象であり生活の一部だった。砂嵐は乾燥・半乾燥地域においてよく見られる気象現象だが、近年科学者は増加する砂嵐が健康や環境に与える悪影響に警鐘を鳴らしており、サウジ当局はこの課題に真正面から取り組むことを求められている。

中東、アフリカ、アラビア湾岸地域では砂嵐はお馴染みのものだ。比較的地表近くで発生するが、細かい砂塵の粒が何マイルも上空に舞い上がり、強風によって長距離を運ばれ大陸を越えることもある。

サウジアラビアはアラビア半島のほぼ全域を占め、また西部と中央部に点在する岩石地帯を除けば主に砂漠であるため、激しい砂嵐の主な発生場所となっている。またサウジは、アジア最大の砂漠地帯であるアラビア砂漠の大部分を占めている。

ベージュと赤の砂漠が国中に大きく広がっているため、サウジアラビアは主に北や西から来る非常に激しい砂嵐に晒される。この砂嵐は青空を不吉なオレンジ色に変えながら、視界を遮り、海と空の運航を停止させ、学校を閉鎖させ、人々の健康を害する。

先月、国境を越える砂嵐がサウジアラビア、イラク、イラン、クエート、UAEを襲い、数千人が病院に搬送された。喘息発作やバクテリア・ウイルス・毒素などの拡散を起こす細かい砂塵の粒が空気中に充満したためだ。天候や気候条件によっては、砂塵は数日間大気中に留まり長い距離を運ばれる場合がある。

気候変動が砂嵐の頻度と強度を増している可能性があると言う科学者もいる。複数の研究によると、中東では1年の約30％は3種類の砂嵐のいずれかが発生している。

砂嵐は視界の低下によって定義される。短い間隔で視界が数フィートまで低下し、水平視界が11キロメートル未満であれば「風塵」とされる。「砂塵嵐」は水平視界が1000メートル未満で、200メートル未満だと「強砂塵嵐」とされる。

2019年の研究では、2000～2016年の大気中の砂塵の時空間分布データを使用して、気象環境最高会議が提供する27の観測地点からの数値分析を行い、サウジアラビアの砂塵嵐の発生を分析した。この研究では、特に東部州での発生が有意に増加していることと、砂嵐・砂塵嵐の発生に明確な季節性があることが指摘された。

砂嵐・砂塵嵐のカテゴリー

• 風塵：水平視界11キロメートル未満。
• 砂塵嵐：水平視界1000メートル未満。
• 強砂塵嵐：水平視界200メートル未満。

サウジアラビア国立気象センター（NCM）の報道官であるフセイン・アル・カフタニ氏によると、東部州において砂嵐・砂塵嵐が顕著に増加しているのは、サウジアラビアに通常吹く北風に近くで晒されるためだという。

「NCMは40年以上、サウジアラビアの気象パターンと気候条件を記録・監視してきた」と同氏はアラブニュースに語る。

「砂塵嵐の発生率や強度は年によって変わる。世界気象機関は、世界は極端な気候変動の激動期を迎えているという宣言を出した。最大風速45キロメートル毎時の砂塵嵐が数日間続くというのはこの地域ではよく見られる現象になっているが、これは地球気候の極端な変動の結果だ」

2009年末から2010年初頭にかけて激しい集中豪雨がサウジアラビア西海岸のジェッダを襲い大規模な洪水を引き起こした時、民間防衛当局は過去25年で最悪の災害だと宣言を出した。NCMはそれを受け、全ての関係政府機関をつなぐ国家気象警報システムを立ち上げた。

NCMは現在このシステムを利用して、近づく砂嵐の確率と強度に関する警報を出している。緑色は激しい天候が予想されないことを示し、黄色は「注意せよ」、琥珀色は「準備せよ」、赤色は「行動せよ」という意味だ。

砂嵐・砂塵嵐の3つの主な発生原因は、強風、植生の欠如、降雨の欠如であるため、サウジアラビアは国境を越える砂塵嵐の発生にとって完璧な環境となっている。

砂嵐の頻度の増加は中東の農業部門に被害をもたらしている。砂嵐は苗を砂の下に埋め、植物組織を破壊し、光合成能力を低下させ植物の成長を遅らせることで、作物収穫量を減少させる。

砂嵐・砂塵嵐の最も直接的かつ明白な影響は、健康に関わるものだ。サウジ赤新月社のラミア・アル・イブラヒム博士によると、砂嵐・砂塵嵐に晒されると、特に喘息、アレルギー、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器系の問題がある人は健康全般を害し、皮膚や目に炎症が起こる場合もあるという。

「サウジアラビアでは砂嵐・砂塵嵐への曝露の程度は地域によって異なる。砂塵嵐はアレルギーの有無にかかわらず健康を害する可能性がある」と、彼女はアラブニュースに語る。「生活様式のちょっとした変更で影響を最小限にはできるが、防ぐことはできない」

アル・イブラヒム博士によると、砂塵や砂に晒されるとアレルギーが悪化する可能性がある。また、砂嵐の悪影響から地域社会を守るために実施できる健康・安全・環境管理戦略がいくつかあるという。

「予防措置や抗ヒスタミン薬などの医薬品を事前に準備すれば、アレルギーの重症度を低下させることができる。最善の対策は自宅待機だが、外出する必要がある人はマスクと眼鏡を着けるべきだ。砂塵嵐は屋内外の空気の質に影響を与え、呼吸器症状などを引き起こす場合がある。これは1種類の粒子、二酸化ケイ素のせいだ」と彼女は言う。

この地域の砂漠の砂塵のほとんどは二酸化ケイ素を主成分としている。二酸化ケイ素への曝露はいくつかの疾患の危険因子だ。

マスク・眼鏡の着用や自宅待機は一時的な解決策であり、砂塵の問題を解決するための永続的かつ遠大な方法を当局は模索している。環境戦略の面では、気候変動の結果として発生している問題に対処するうえで植林が重要な役割を担っている。

昨年3月に発足したサウジ・グリーン・イニシアティブは、今後数十年で4000万ヘクタールの土地を再生させることを目指しており、100億本の木を植えるための24のイニシアティブが始まっている。この植林計画により、空気の質の改善、砂嵐の減少、砂漠化の抑制、隣接地域の気温の低下が期待される。

気候変動に関する地域連携・協定である中東グリーン・イニシアティブも同様の野心的な目標を掲げ、中東全域で500億本（サウジアラビアには100億本）の木を植え、2億ヘクタールの荒地を再生させるることを目指している。

アル・イブラヒム博士は、植林は砂嵐・砂塵嵐の緩和に効果的だが、木の種類によっては健康に悪影響を与える可能性があるので、どの種類の木を植えるかが重要だと注意を促す。

「一部の木の花粉は強いアレルギーを引き起こすことがある。私はいくつかの環境啓発団体のメンバーとしてグリーン・リヤドプロジェクトの立ち上げに招待され参加した際に木の種類の問題を提起し、地域に最適の木・草・低木の種類を特定するための委員会が設立された」と彼女はアラブニュースに語る。

リヤド王立委員会は、植樹の対象となる約300種類の草・低木・木を掲載した市のための植物ガイドブックを発行した。

「NCMによる研究調査は、砂嵐・砂塵嵐に起因する課題への向き合い方を理解し、脅威の程度を低下させ、植林活動、予防措置の実施、市民の健康・安全のための情報の精度の向上などの解決策に取り組む必要のある関連団体へのデータ提供に貢献している」とアル・カフタニ氏は語る。