
ダオウド・クタブ
ヨルダン・アンマン:ヨルダンのハニ・ムルキ前首相は、今週予定されているジョー・バイデン米大統領の訪問で、自国が経済と政治の両面で勝利を収めることを期待している。しかし、同時に彼は、その期待値もコントロールしている。
この訪問は、ロシアとウクライナの紛争と、それによるロシア産の石油・ガスに対する西側の禁輸措置によって、燃料、食料、その他の商品価格が世界的に高騰している最中に行われる。
バイデン氏がサウジアラビアに到着する数日前、ムルキ氏はアラブニュースに対しこう語った。「バイデン氏の訪問について、その訪問地と訪問時期の両方の意味を捉え、注意を払わなければならない」
「訪問地は主に経済的な焦点を示唆する。訪問時期は、ウクライナの土地におけるロシアの戦争に関連している」
米国はサウジアラビアや同地域におけるその他の国家に対し、石油やガスの不足分を補い、エネルギー価格を安定させるために増産を促しているが、湾岸諸国の生産者たちはこの動きに消極的だ。
「サウジアラビアは地域の経済大国であり、独自の政治力を有している。つまり、バイデンがこの地域に滞在する時間のほとんどは、経済問題に費やされることになる」とムルキ氏は言う。
一方、先月ナフタリ・ベネット氏が首相を辞任した後のイスラエルの政情不安は、パレスチナ問題や和平プロセスの進展の可能性について、多くのオブザーバーを懐疑的にさせている。
「選出された首相の辞任により暫定内閣に移行し、イスラエルは政治的空白状態にある。これは、そのレベルでは重要な決定はなされない、ということを意味する」とムルキ氏は付け加えた。
2016年から2018年までヨルダンの首相を務めたムルキ氏は、ここ数カ月、欧米諸国が中東・北アフリカ(MENA)地域で政治的・経済的影響力を競い合っていると述べた。
「最近、アフリカにおけるフランスの積極的な取り組みと存在が見られる一方、アメリカは中東に拠点を伸ばしたいと考えており、ドイツはパイの一部を探しているように見える。そしてヨーロッパ人はまた、自分たちの隣人であるトルコがこの地域において強い足場を獲得しないようにしようとしている」と彼は説明した。
ムルキ氏は、「この地域には、経済発展が著しい地域と、紛争が絶えない地域があり、こうした多くのアンバランスが介入を招いている」と指摘した。
ムルキ氏は、中東を「準安定地域」と位置づけ、これをバイデン政権の取り組みに反映させるべきだと主張した。
「我々は“準安定的な状態”の中に生きている」とムルキ氏は語る。「この地域は安定してもなければ不安定でもない、中途半端な状態だ。しかし、このまま悪い方向に進めば、大変なことになるだろう」
彼は、特にこの地域の社会的・経済的な不平等を強調し、これが過激派や不安を煽りかねないと警鐘を鳴らした。
「この地域の格差は、過激派やテロリズムを招き寄せるものだ」と彼は言う。「我々は共に歩み、ウィンウィンの状況を作り出す必要がある」
ムルキ氏は、これを達成する方法は、外部の影響や支配から解放され、地域における調整と協力を強化することであると述べた。
また、「望ましい安定状態を得るためには、この地域の国々は真に独立し、自分たちの将来を決定できる状態になる必要がある」とも述べた。
今週予定されているバイデン氏の中東歴訪は、イスラエル、ヨルダン川西岸地区、サウジアラビアへの訪問が含まれ、注目を浴びている。サウジアラビアでは、アラブの指導者数名と直接会談する予定だ。
ムルキ氏は、「我々は、経済的な決定と政治的な決定の両方を含むウィンウィンの会議を見たいと思う」と語った。
政治的な勝利のひとつとして、2002年のベイルート・サミットでアラブ連盟が承認し、2007年と2017年のアラブ連盟サミットで再承認されたアラブ・イスラエル紛争の終結に向けた10文から成る提案「アラブ和平イニシアティブ」、別名「サウジ・イニシアチブ」の再検討を決定することだと彼は述べている。
この提案では、アラブ世界とイスラエルの関係正常化の見返りとして、イスラエルによる占領地からの完全撤退、パレスチナ難民問題の「公正な解決」、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を提示している。
ムルキ氏は「真の独立を果たすためには、我々の民族に対する権利の返還を確実にし、1967年に占領された土地に、エルサレムを首都とする独自の国家を建設するというパレスチナ人の願望を叶えなければならない」と述べた。
「その上で、仮に我々の地域を発展させるための有意義で持続的な経済協力があれば、我々はそれを歓迎する。しかし、自国民や将来の世代を犠牲にしながら、他者の利益を助けることは望まない」
アラブ諸国は真の共存を望んでいると彼は言う。「しかし、政治的協調なくして経済的共存はできない。また、パレスチナ人とアラブ民族の権利の履行なくして地域における協力は得られない」と述べた。
2年前、複数のアラブ諸国が、米国が仲介したイスラエルとの関係正常化のための協定「アブラハム協定」に調印した。このプロセスは2020年8月にUAEから始まり、エジプトが1979年に、次いでヨルダンが1994年にイスラエルと正式な関係を築いて以来、アラブ諸国として初めて公に関係を確立したものである。その後、バーレーン、スーダン、モロッコが数カ月間にわたってこれに追随した。
この協定に賛成する人たちは、貿易や通商の可能性を高く評価している。しかしながら、この協定が地域の平和を促進し、数十年来のアラブ・イスラエル紛争の解決を促すかどうかについては、懐疑的な意見もある。
ムルキ氏は、パレスチナ問題の解決は、ヨルダンの発展のための必須条件であると断言する。ヨルダンは自国も経済的に困難な状況にありながら、パレスチナ難民を何世代にもわたって受け入れ、支援し続けている。
「ヨルダンにとって最も重要なことは、パレスチナ問題について意見を聞く機会があることだ」と彼は言う。「これは、緊張状態の中で経済成長を得るための鍵である。そしてこれは人為的な緊張ではなく、現実の緊張なのだ」
「この地域は不安定であり、パレスチナ紛争が平和的かつ公正に解決されない限り、“準安定的な地域”である、とみなされ続けるだろう」