アラブニュース
ジェッダ:ほとんどのメディア騒ぎがそうであるように、ジョー・バイデン米大統領のテルアビブからジェッダへの「歴史的な直行フライト」は当初は鳴り物入りで迎えられたが、(少なくともサウジのジャーナリストの間では)空騒ぎであったことがすぐに判明した。
全ては、バイデン大統領が中東訪問に出発する前に7月9日付けのワシントンポストに寄稿した記事から始まった。「金曜日、私はイスラエルからサウジアラビアのジッダ(原文のまま)に飛ぶ初めての米大統領になる」と発表したのだ。
米国とイスラエルのニュースメディアの多くは、「サウジアラビアとイスラエルの国交正常化」が近いという独り歩きした根強い噂のさらなる証拠として、すぐにこのフレーズに飛びついた。
このシナリオに加担したのは、「今日、私はイスラエルからサウジアラビアのジッダに飛ぶ初めての米大統領になる」という大統領の言葉を引用した7月15日のホワイトハウスによる追加発表だ。
確かにイスラエルからジェッダに直接飛んだ米大統領はこれまでにいないという意味では正確な発言だが、バイデン大統領はイスラエルからサウジアラビアに直接飛んだ初めての米大統領ではないことは間違いない。
米国とイスラエルのジャーナリストの限られた記憶力に多くの人が疑問を持ち始めた。つい最近の2008年に別の大統領がイスラエルからサウジアラビア(沿岸都市ジェッダではなく首都リヤドではあるが)に直接飛んだという事実を無視したか忘れていたようなのだ。
実は、直近にイスラエルからサウジアラビアに直接飛んだ大統領は、2期目最終年の2008年5月にテルアビブから到着したジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)だったのだ。
この時の訪問を報じたメディアの記事によると、エアフォースワンがサウジの首都に到着した時、ブッシュ大統領は滑走路上でレッドカーペットによる歓迎を受け、軍楽隊が米国国歌を演奏する中、サウジの指導者らから温かく迎えられた。
当時のブッシュ政権の発表によると、この訪問の一つの意図は米国とサウジアラビアの正式な国交樹立75周年を祝うことだったが、石油価格の高騰(1バレル127ドル)も要因の一つだった。エネルギー価格の高騰は、大統領にとって政治的な頭痛の種であり、米国経済(大きな景気後退の前触れとなった減速に見舞われていた)にとって大きな損失であることが明らかになりつつあったのだ。
この訪問の9年後、別の米大統領が直行フライトで歴史を作ったと主張したが、この時は逆方向だった。2017年5月、ドナルド・トランプ大統領(当時)が乗ったエアフォースワンがリヤドを離陸しテルアビブに向かったのだ。就任後初となる外国訪問の一環だった。
さらにその5年後、今度は民主党大統領がイスラエルとサウジの都市の間の「歴史的な直行フライト」を誇る番となった。
先日のバイデン大統領の訪問を取材したサウジのジャーナリストのうち何人かは、このフライトがなぜこんなに騒がれているのか分からないと言っていた。
ある記者は、「2ヶ国を回る訪問で、1カ国目がイスラエルで2カ国目がサウジアラビアの場合、バイデン大統領が飛ぶ経路が他にあるか?」と尋ねた。
地元新聞のある編集者は、「これがサウジアラビアとイスラエルの国交正常化に近づく一歩だという欧米メディアによるほのめかしは当たらない。このようなフライトはこれが初めてではないからだ。しかしもっと重要なことは、アラブ和平イニシアティブの重要性には劣るということだ」と、2002年にベイルートで開催されたアラブ連盟で採択されたサウジからイスラエルへの和平提案に言及しながら語った。
ただ、確かなことが一つある。いずれにせよ、米大統領によるこれまでのサウジアラビア訪問は全て歴史的なものとなったということだ。