
ワシントン:米司法省は水曜日、イランが元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のジョン・ボルトン氏の殺害を計画していたことが明らかになったこと、またイスラム革命防衛隊の隊員を訴追したことを発表した。
同省によると、シャフラム・プルサフィ容疑者(45)、別名メフディ・レザイーは、米国内の人物に30万ドルと引き換えに元国連大使のボルトン氏を殺害するよう依頼したとされる。
革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官が2020年1月にイラクで米国により殺害されたことへの報復として殺害が計画されたとみられるという。
訴追者によると、この計画が展開されたのは、革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップであり中東におけるイランの代理戦争の立役者であるソレイマニ司令官が2020年1月にバグダッド国際空港で標的空爆により殺害されてから1年以上経ってからだった。この暗殺を受け、当時既に政府のポストから退いていたボルトン氏は「これがイランの体制転換への第一歩になることを期待する」とツイートしていた。
Member of Iran’s Islamic Revolutionary Guard Corps (IRGC) Charged with Plot to Murder the Former National Security Advisorhttps://t.co/pmXWkiQKSN pic.twitter.com/XcO7TJtE1d
— U.S. Department of Justice (@TheJusticeDept) August 10, 2022
イランは現在、同国の核開発阻止を目指した2015年の合意の復活に向けてウィーンで行われた協議で提示された合意案を検討しているところだが、そのような中で今回の疑惑が明らかにされた形となった。
イランが米国によるイスラム革命防衛隊のテロ組織指定の解除を求めたことで、協議は数か月にわたり停滞していた。
米国のマシュー・オルセン司法次官補は、「イランによる米国本土の個人に対する報復計画が明るみに出たのはこれが初めてではない。そのような試みの全てを暴露し阻止するために根気強く取り組んでいく」と述べた。
訴追状によると、プルサフィ容疑者は2021年10月からボルトン氏殺害の手配を試みた。まず、現時点で特定されていない米国内の人物にオンラインで接触し、ボルトン氏の写真撮影を依頼した。
宣誓供述書によると、同容疑者はこの人物にボルトン氏の事務所の住所およびそこに勤務する人物の名前と連絡先を伝え、事務所の監視写真のスクリーンショットを撮ったという。
同容疑者は当初、報酬として25万ドルを提示したが、その額は交渉を経て30万ドルに増加した。
司法省によると、「プルサフィ容疑者は、別の『仕事』もあり、100万ドルを支払う用意があると持ち掛けた」という。
Member of Iran's Islamic Revolutionary Guard Corps (IRGC) Charged with Plot to Murder the Former National Security Advisorhttps://t.co/WI4ywmXYVZ pic.twitter.com/jJhigcPxsf
— National Security Division, U.S. Dept of Justice (@DOJNatSec) August 10, 2022
しかし訴追状によると、この第二の人物は米連邦捜査局の秘密情報提供者だった。
暗殺者を装ったこの人物は、前金を要求して実行を引き伸ばした。同容疑者は4月下旬にようやく暗号資産で合計100ドル相当を送金した。
同容疑者は嘱託殺人遂行の目的で州間商業施設を利用した罪や、国をまたがる殺人計画に対する物質的支援の提供および提供未遂の罪に問われている。それぞれ最高10年および15年の禁錮刑に相当する。
ボルトン氏は声明を出し、事件の進展に尽力したFBIと司法省および護衛を担当したシークレットサービスに感謝を表明した。
「現時点で公言できることは多くないが、疑う余地がない点が一つある。イラン政府は嘘つきでテロリストで米国の敵だということだ」と同氏は述べた。
また、ジョー・バイデン大統領に対しては核合意を復活させないよう求めた。
米国の外交政策における「タカ派」の筆頭でイランに対する強硬派として知られるボルトン氏は、2018年4月から2019年9月までドナルド・ドランプ前大統領の政権で大統領顧問(国家安全保障問題担当)を務めた。
I wish to thank the Justice Dept for initiating the criminal proceeding unsealed today; the FBI for its diligence in discovering and tracking the Iranian regime’s criminal threat to American citizens; and the Secret Service for providing protection against Tehran’s efforts. pic.twitter.com/QDjkX6gUWM
— John Bolton (@AmbJohnBolton) August 10, 2022
ジョージ・ブッシュ元大統領の政権では2005~2006年に国連大使を務めた。
同氏は、2015年にイランと諸大国の間で結ばれた核合意に強く反対し、2018年5月のトランプ政権による合意からの一方的な離脱を支持した。
訴追状によると、ボルトン氏は殺害計画のことを知っており、ワシントンの事務所の外で撮影された自身の写真をプルサフィ容疑者に送付することを許可するなどして捜査に協力していた。
同容疑者は、数ヶ月にわたって米国内の協力者と殺害計画について話し合う中で、この計画が米国によるソレイマニ司令官殺害に対するイランの報復に関連していることを明かした。
ソレイマニ司令官の暗殺以降、イランは復讐を誓っていた。米政府高官によると、イランは一人またはそれ以上の米政府高官の殺害を検討していたという。
別の政府高官によると、ソレイマニ司令官暗殺時に国務長官だったマイク・ポンペオ氏もイランの暗殺計画の標的になっていたという。同氏はそれ以前には中央情報局長官を務めた。
ポンペオ氏は当時、ソレイマニ司令官が米国の大使館などを標的とした大規模な攻撃を計画していると発言していた。
(AFP、AP)