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トルコとイスラエル、相互に大使復帰 新たな蜜月の始まりか

かつては地域における同盟国だったトルコとイスラエルは、2018年にイスラエル軍がガザ境界で抗議中のパレスチナ人数十人を殺害した事件をめぐって、双方が大使に国外退去を命じた。(AP/ファイル)
かつては地域における同盟国だったトルコとイスラエルは、2018年にイスラエル軍がガザ境界で抗議中のパレスチナ人数十人を殺害した事件をめぐって、双方が大使に国外退去を命じた。(AP/ファイル)
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19 Aug 2022 07:08:36 GMT9
19 Aug 2022 07:08:36 GMT9
  • 地域での関係構築に向けた両国の努力とタイミングが重なったと、アナリストはアラブニュースに語る

メネクセ・トキャイ

アンカラ:イスラエルとトルコは、長年緊張状態にあった両国の外交関係の正常化と相互の大使・総領事の復帰を発表した。

イスラエルのヤイール・ラピード首相は、このような外交的ブレークスルーは「地域の安定にとって重要な財産であり、イスラエル国民にとって非常に重要な経済ニュース」であると歓迎した。

イスラエル地域外交政策研究所・Mitvimの会長で地中海外交評議会・Diplomedsの共同創立者であるニムロッド・ゴレン博士は、国交正常化の発表は外交の成功を示していると言う。

「信頼の再構築、新たな対話チャンネルの立ち上げ、前向きなアジェンダの採用、協力の再活性化、安全保障上の課題への対処、相違点を減らす方法の模索など、イスラエルとトルコが1年以上かけて行ってきた段階的なプロセスの集大成だ」と、ゴレン博士はアラブニュースに語る。

「これらのプラスの進展に基づくと、大使レベルでの関係回復は今や自然な展開のように思われる。遅すぎたとさえ言えるかもしれない」

「国内政治が邪魔をする前にこの動きを決めてしまうことが重要だった。両国で選挙が近づいているからだ」

「地域での様々な関係の改善・深化に向けた両国の努力と(タイミングが)重なったのもある」

かつては地域における同盟国だったトルコとイスラエルは、2018年にイスラエル軍がガザ境界で抗議中のパレスチナ人数十人を殺害した事件をめぐって、双方が大使に国外退去を命じた。

2010年にはガザ地区に向かっていたトルコ船マヴィ・マルマラ号がイスラエル軍の襲撃を受けトルコ人活動家9人が死亡し、両国関係は完全に冷え込んだ。

それ以降、特にエネルギー部門や貿易・観光において関係修復に向けた試みが多数行われ、戦略的な協力分野となっていった。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とイスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領は数回にわたって電話で協議し、今年3月にはヘルツォーク大統領がアンカラを訪問した。

信頼構築に向けた相互の努力の一環として、5月にはトルコ側からもメブリュト・チャブシオール外相がエルサレムを訪問し、15年ぶりのトルコ外相によるイスラエル訪問となった。6月にはイスラエルのラピード外相(当時)がトルコを訪問した。

両国は、イランによるトルコ系イスラエル人実業家およびイスタンブールのイスラエル人観光客らを標的とした暗殺計画を受け、テロ対策の取り組みにおいても協力した。トルコは、ハマスの同国内での移動を抑制する措置を講じた。

また先月には、両国は民間航空協定に調印した。

ネクメッティン・エルバカン大学のゴクハン・シンカラ博士は、地域の地政学の変化が、トルコによる国交正常化に向けた新たな試みの主要な決定要因だと考える。

「地域における現状維持と修正主義との間の競争は終わった。その結果、それらに代わるものが全ての国に現れ、置き換わる可能性が出てきた。トルコにとってもそうだ。同国が直面している経済危機と地政学的行き詰まりのせいで、新たな選択肢を探ることが避けられなくなったのだ」と同博士はアラブニュースに語る。

「大使の任命により、二国間関係が制度的ルーティンのもとで継続することが保証されるだろう」

駐イスラエル大使は近日中に任命される見込みだ。また、両国は9月に合同の経済委員会会合を予定している。

ところが、トルコのチャブシオール外相は、同国は引き続きパレスチナ人の大義を支持すると述べた。

「イスラエルとトルコの関係に新たな一章が加わったとはいえ、イスラエルとパレスチナの関係や東地中海などの主要な政策課題に関して両国は依然として意見の相違を抱えている」とゴレン博士は言う。

「意見の相違はなくならないだろうが、それらの扱い方に敏感になる必要があること、またそれらの問題に定期的に取り組むための二国間の仕組みを設置する必要があることを両国は認識している」

「もしイスラエルとトルコが、第三国(トルコにとってのエジプト、イスラエルにとってのパレスチナなど)との紛争解決への道において何らかの形で相互に支援できれば、両国関係の新たな一章にとって大きなメリットとなるだろう」

イスラエルのヘルツォーク大統領のアンカラ訪問以来の二国間関係は前向きな方向に進んでいるが、アンカラ政策センターのロンドン代表でトルコ・イスラエル関係の高名な研究者であるセリン・ナシ氏は、大使相互派遣のタイミングに注意を促す。

「イスラエル側は、トルコが関係修復に誠実に取り組んでいるかを見極めるため、若干緩慢にプロセスを進めている」と彼女はアラブニュースに語る。

「ここ数ヶ月のエルサレムやガザ地区での緊迫した状況に対する(トルコの)冷静で落ち着いた対応や、トルコにいるイスラエル国民を標的としたイランの陰謀に対するイスラエル情報機関との全面協力が、イスラエルの懸念を払拭したようだ」

大使相互派遣は、正常化プロセスに正式な枠組みを与えつつ次の段階に進みたい両国の意向を示しているとナシ氏は考える。

「イスラエルで11月に予定されている選挙のことを考えると、外交関係正常化は国内政治への干渉に対する防御となる可能性が高い」

トルコとイスラエルは二国間関係に新たな1ページを開くことができたが、その新たな章に何を書き込もうとしているかに注目することも同じくらい重要だとナシ氏は言う。

「米国がその重点とエネルギーを太平洋地域へと移そうとしており、イランが核保有国となりつつある今、トルコとイランは協力を強化することで得るところが多い」

「一方、ロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー安全保障が再び中心的課題となった。イスラエルの天然ガスをトルコ経由で輸送するためのパイプラインプロジェクトがいずれ実現するかもしれないという希望が蘇ったのだ」と彼女は言う。「未解決のキプロス問題は依然として見て見ぬ振りをされているが、双方の政治的信頼の修復に全てかかっている。だから、今後いくつか機会があるかもしれない」

ゴレン博士は、イスラエルとトルコの戦略対話や定期的なハイレベル交流の再開は、両国相互の誤解(イスラエルはクルド人とつながっている、トルコはイランとつながっている、など)を減らし、期待のギャップを回避する助けにもなると考える。

「イスラエルとトルコは、過去10年に起こったことを繰り返さず、今度こそは国交正常化を持続的で長期的なものにしなければならない」

米国も両国の大使相互派遣を歓迎した。

ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「本日、イスラエルとトルコが完全に外交関係を回復するという発表があった。この動きは、両国の国民および地域全体の安全・安定・繁栄を向上させるだろう」とツイートした。

ナシ氏は、トルコにとってイスラエルとの関係は「常に欧米、特に米国との関係の一要因となってきた。ウクライナで進行中の戦争を背景に、トルコはロシアとの間の細い道を進んでいる」とも言う。

「イスラエルとの国交正常化は、米国議会にメッセージを送ることを狙っているのかもしれない。トルコは、F16戦闘機の近代化に対する米国議会からの好意的な見方と支持を非常に欲しているからだ」

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