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人間同士でなくウィルスと戦おう

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25 Oct 2020 07:10:54 GMT9
25 Oct 2020 07:10:54 GMT9

リビアの交戦中の二派閥が停戦したことに対する反応は、概して熱狂的だった。国連が仲介したこの停戦は、間違いなく正しい方向への第一歩である。しかし、それに続く6月と8月の合意、そして1月のベルリン会議での合意は長続きしなかった。

ムアマル・カダフィが9年前に追放されて以来、リビアに平和は訪れていない。カダフィ独裁者の統制のもと、1日あたり180万バレル生産されていた石油生産量は大きく減少し、昨年末には120万バレルとなった。生産量はどんどん減少し続け、ついに8月には東軍の有力者カリファ・ハフタルの封鎖のせいで1日あたり8万バレルという最低量にまで達した。 

しかしこの年の早い時期、特に6月にハフタルがトリポリの占領とファイズ・ムスタファ・サラージ率いる国民合意政府(GNA、Government of National Accord)の打倒を断念した頃から状況は変化してきた。エジプト、フランス、ロシアに加え、湾岸協力会議(GCC)の数か国がハフタルを支持しており、彼の地位はロシアのワグナー社の傭兵軍によって押し上げられた。一方でGNA(国民合意政府)は国連に承認されており、トルコとイタリアもこれを支持している。この状況が典型的な代理戦争の膠着を引き起こし、傭兵軍が登場して武器が出荷され、あらゆる紛争における民間人と同様にリビアの人々がその板挟みとなった。 

今回の停戦は以前より長続きするかもしれない。そう思わせる兆候のひとつに、ハフタルによる石油インフラの復活が挙げられる。今月は一日当たりの生産量が56万バレルにまで回復した。ブルームバーグは、アッシドラとラスラヌフのオイル・ターミナルがいったん営業を開始すれば1日当たりの生産量は100万バレルを超えるだろうと予想している。これはリビアにとっては非常に良いニュースだ。しかし、だからといってOPECプラス(OPECとロシア率いる非加盟主要産国10カ国の同盟)の使命である「石油市場の均衡」が容易に保たれるわけでは全くない。1日あたり100万バレルという追加生産量は、OPECプラスの1日当たりの生産量である770万バレルと比較すると、市場に13パーセントの追加原油生産量をもたらす。

人間同士ではなくウィルスと戦うべき世界情勢と照らし合わせると、国連事務総長アントニオ・グテーレスの発言はこの上なく正しい。

コーネリア・マイヤー

リビアにとってはOPECの苦難など二の次かもしれないが、石油は重要な問題だ。石油は交換可能通貨を得るための主要資源であるため、リビアの国有石油会社を制御すること、現金を管理する中央銀行に対する権限をもつことは重要である。現在はGNA(国民合意政府)がこの両方を支配しているが、公正協定では新たな解決策が求められるだろう。この件はチュニジアで11月に開催される次の和平会談での議題となるだろう。

別の重要なファクターは、リビアの各側に干渉している世界の大国がその影響力を譲るかどうかだ。傭兵を撤退させ、武器出荷を停止させたとして、長年にわたり蓄えた兵器をどうするのか?リビア政府の同盟国は長年不在であり、民兵や特定の利害関係者が大きな影響力をもっている。彼らは皆、この和平協定により何かを獲得するか、失うかのどちらかであり、これが彼らの態度を左右するだろう。特に、石油販売のドル収入が関係している場合はなおさらだ。

国連と国際社会は、正しいインセンティブにより傭兵を撤退させ、武器の禁輸が無視される場合は正しく制裁を下す役割をもつ。リビアはヨーロッパの隣国であるため、EU諸国は声をそろえなければならず、平和を持続させるため、少なくとも停戦を持続させるためにあらゆる手を打つ必要がある。  

国連事務局長のアントニオ・グテーレスは、この最新の休戦を歓迎し、「この休戦は、調停努力を現在すすめている全ての武力衝突の手本となるべきだ」と述べ、イエメン、アフガニスタン、ナゴルノ・カラバフの紛争を名指しした。人間同士ではなくウィルスと戦うべき世界情勢と照らし合わせると、国連事務局長の発言はこの上なく正しい。

  • コーネリア・マイヤーは投資銀行業務および投資金融業界において30年の 経験をもつ博士レベルの経済学者であり、ビジネスコンサルティング企業Meyer Resourcesの会長兼CEOである。ツイッター:@MeyerResources
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