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「アブラハム合意はパレスチナ人を取り巻く状況を根本的に変えてはいない」EU特別代表

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24 Aug 2022 02:08:27 GMT9
24 Aug 2022 02:08:27 GMT9
  • 「永続的な解決のためには、正常化と和平への前進を結びつける必要性を見据えた広範かつ包括的な対話が鍵になる」と、スヴェン・クープマンズEU特別代表はアラブニュースに語った。

ヌール・ヌガリ

リヤド:EUの中東和平プロセス担当特別代表であるスヴェン・クープマンズ氏は月曜日、リヤドを訪れた際、アブラハム合意単体ではパレスチナの状況に対し根本的な変化は起こせておらず、中東和平プロセスと並行してイスラエルとアラブ諸国との間の正常化を行うべきだと述べた。

アブラハム合意とは、イスラエルとアラブ4カ国との間で外交関係を樹立することとなった一連の合意である。UAEが2020年に最初に協定に署名し、共通の戦略的懸念と中東地域における脅威に直面するイスラエルとの政治、経済、安全保障協力の新時代を迎えた。

オランダの国際弁護士で元政治家のクープマンズ氏はアラブニュースに対し、「これらの協定は、変化を生み出すことが可能であることを、形として示すことができたと思います」と述べた。「国同士の関係が変化し、そこから前向きなものが生まれているのが分かります」

「同時に、これらの協定がパレスチナ人を取り巻く状況を根本的に変えたとは思えないのです」

当時、国際社会の大半はこの合意を歓迎していたが、この合意を批判していた人たちは、正常化だけでは長引くイスラエル・パレスチナ紛争の解決にはほとんど効果がなく、二国家解決策に基づく最終決着に漕ぎつけることもないだろうと警告していた。

パレスチナ人のニーズに応える和平解決に向けた具体的な進展がない中、ほとんどのアラブ諸国はイスラエルとの関係を正常化するシナリオを受け入れることを拒否している。

クープマンズ氏は月曜日、サウジアラビアのアーデル・アル・ジュベイル外交担当国務大臣と会談し、イスラエルとパレスチナ、イスラエルとアラブの紛争について、またパレスチナ人とイスラエル人だけでなく、より広い地域に平和をもたらす前向きな解決策を見つける必要性について議論したと語った。

「サウジアラビアは非常に重要な役割を担っていると思います」と、クープマンズ氏はアラブニュースに語った。

「イスラエルとパレスチナの紛争が解決され、パレスチナ国家が正式に樹立・承認されることは、誰もが望むところだと思います。そのためには、もっと多くのことが必要です」

「だから私は、サウジアラビア政府や他の多くの地域の政府と話し合っているのです。どうすれば、正常化と同時に本物の平和も実現できるのか。一つも後回しにするわけにはいかないのです。いつになっても実現しないかもしれないからです」

クープマンズ氏は、イスラエル・パレスチナ紛争の完全な解決に積極的に貢献することをEUに求められており、サウジアラビアの故アブドゥラー国王が2002年に提案した「アラブ和平イニシアチブ」の構想が引き継がれていることを強調した。

2007年と2017年のアラブ連盟首脳会議で再提唱されたこの構想は、イスラエルによるアラブ占領地からの完全撤退、パレスチナ難民問題の「公正な解決」、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立と引き換えに、関係正常化を提案するものだ。

サウジアラビアをはじめとするいくつかの国々は、イスラエルとの正式な国交正常化を検討することに同意する前に、「アラブ和平イニシアチブ」が実施されることを望んでいる。

「まずお伝えしたいのは、EUもアラブ和平イニシアチブを支持しているということです。当時の故アブドゥラー国王の構想は非常に大胆なものであり、重要なものでした」とクープマンズ氏は語った。

「この和平イニシアチブを実現するためには多くの障害があり、その障害こそ、まさに今、私たちが取り組んでいることなのです」

パレスチナ内部での政治的分裂や、イスラエル国内での長引く政治的困難は、和平プロセスを停滞させている多くの障害の一部に過ぎない。クープマンズ氏は、すべての関係者が共通の利益を認識することが、前進するための鍵になると考えている。

「もし私たち全員が、自分たちの本当の利益が何なのかを考えれば、欧州諸国も含め、私たちを結びつけるものがたくさん見つかるはずです」とクープマンズ氏は言う。

「私たちは中東の安全を望んでいます。誰もが自由に暮らせるようにしたいのです。人々が平等に権利を享受できるようにしたいのです。そして、欧州諸国に非常に近いこの地域のすべての国々が、良好な貿易関係を築き、エネルギーや水、気候変動に関する協定を結び、交流することを望んでいます」

「そのためにやるべきことはたくさんありますし、それがすべての人のためになると信じています。だから私はサウジアラビアにやってきたのです。政府と議論がしたいのです」

パレスチナ国家を正式に承認することは、和平プロセスを活性化させるための重要な前提条件であるとする見方もある。しかし、クープマンズ氏は、そのタイミングが重要だという。

「欧州の加盟国には、パレスチナ国家を承認している国もあります。しかし、大多数は認めていないのです」とクープマンズ氏は言う。

「ブリュッセルにあるEUの組織や私」の意向による結果だいう説は否定した上で、クープマンズ氏は「イスラエルとパレスチナの紛争、そしてより広範な紛争を解決することができれば、誰もがパレスチナを承認することができるようになると信じています」と述べた。

「実際、そこが肝要な部分となるでしょう。なぜなら少なくとも欧州では、パレスチナ国家を認めない国も、いずれはパレスチナが国家として樹立する必要があると信じているからです」

「しかし彼らは、『だがまず国家としての承認を受け、それから交渉する必要がある。厳密な国境はどこだ?政府機関はどのように設立されるのか?イスラエルの占領を受けずに主権的でやり方で機能するのか?』と言うのです。彼らはまずそれを確認したいと言っているのです。そしてそれが、私たち全員が取り組むべき和平協定の一部なのです。イスラエルとパレスチナの間だけでなく、アラブの近隣諸国との間でも、です」

「それと同時に考えるべきこともあります。というのも、イスラエルを承認していないアラブ諸国は、いつイスラエルを国として認めるのでしょうか。欧州のいくつかの国からすれば、パレスチナを国家として承認するのと同じ日になるのではないかと思います。だから、みんなで一緒に承認すればいいのです」

一方、クープマンズ氏をはじめ、イスラエル・パレスチナ問題に取り組む外交官たちは、「誠意ある協議を再開するならば、パレスチナの攻撃を止め、イスラエルの入植地のさらなる拡大を止めなければならない」と断固として主張している。

「これらの(イスラエルによる)入植地は違法です」とクープマンズ氏は言う。「EUも、国連も、米国も、世界中の多くの国も、この点についてははっきりしています。だから私たちは、反対意見を表明し続けます。EU特別代表としての私の役割は、その次に来るのです。和平プロセスを復活させるために動くのはその後です」

「『和平プロセスなど存在しない』と言う人も多いと思いますが、ある意味、その通りだと思います。イスラエルとパレスチナ、イスラエルとアラブの紛争を完全に終結させるための活発な交渉は行われていないからです。しかし、紛争は終結させなければなりません。占領をいつまでも続けていてはいけません。私たちが目にする暴力、テロ攻撃、それらを永遠に続けていてはいけないのです」

「紛争は止めなければなりません。そしてそれを止める最善の方法は、イスラエルとパレスチナの間で和平交渉を真剣に行うことです。そうすることでイスラエルとパレスチナが国家として活気づき、双方が安全に共存できるのです」

「しかし、サウジアラビア、レバノン、アルジェリアなど、この地域にあるすべての国と(イスラエルと)の和平も必要です」

クープマンズ氏の考えでは、正常化と平和に向けての真の前進を結びつける必要性を見据えた、広範で包括的な対話を形成することが、永続的な解決策を確立するための鍵になるという。

「中東地域のすべての国が、この紛争をなくし、平和を実現することに関心を持っていると信じています」とクープマンズ氏は言う。「そしてサウジアラビアという大国だけでなく、エジプトやヨルダン、その他多くの国々と話し合う必要があるのです」

「イランもまた、この地域で起こることについて強い懸念を抱いています。イスラエルもまた、イランの動向に強い懸念を抱いています。繰り返しになりますが、特定の国の名前を挙げたり、どの国が何をしたと言ったりするのは私の役目ではありません。そうではなく、皆が解決の一翼を担うよう手助けするのが私の役目なのです」

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