
キプロス:新たな報告書によれば、東地中海と中東では世界平均のおよそ2倍速く温暖化が進み、流れを覆す行動がとられなければ、今世紀末までに最大で5℃の気温上昇が予想されるという。
この地域では「前例のない」熱波、より深刻で長期的な干ばつや砂嵐、雨不足が発生し、地域に暮らす4億人の「水と食料の安全を損なう」だろうと、火曜に発表された報告書の要約は指摘している。
東地中海と中東は、広大な砂漠があり水が少ないといった独特の自然特性によって温暖化傾向の影響を受けやすいという。
報告書は、キプロス研究所の気候大気研究センターとマックス・プランク化学研究所が監督する国際的科学者グループによって作成された。6月にReviews of Geophysics誌へ最初に掲載されたこの報告書は、11月にエジプトで開かれる国連気候サミットを前に、この地域における気候変動の影響を強調することを目的としたものだ。
乾燥気候地帯は北方に向かって拡大し、今世紀中により北の地域で雪に覆われる山が減少するだろうと、報告書の共同執筆者ジョージ・ジッティス博士は述べている。この地域の海面は他の世界的予測と同程度のペースで上昇すると見込まれているものの、地中海沿岸の多くの国々は対応の準備ができていないと、博士はいう。
「これは沿岸のインフラ施設や農業に深刻な問題を及ぼし、沿岸部の帯水層での塩害につながる可能性があります」とジッティス博士は警告している。海面上昇と雨不足によって水の塩分濃度が高まることで、作物や漁業に大きな損害がもたらされる恐れがある。
研究に参加したマックス・プランク研究所ディレクターのヨス・レリフェルト氏は、この地域の高齢者、子ども、妊婦といった最も脆弱な人々が大きな健康被害を受けるだろうと述べた。ヨーロッパ諸国の多くは、既に異常気象における弱者の支援に取り組んでいる。
温室効果ガスの排出元として、この地域は急速にEUを追い越し、世界でも主要な排出地域となりつつあることを、研究は示している。現在のところ中国、米国、インド、EUが世界最大の排出元である。地中海沿岸の一部の国々もEUに加盟している。
研究によれば、パリ協定の気温上昇1.5℃以内という目標が達成されれば、この地域の気温上昇は約2℃に抑えられるという。報告書では、温室効果ガス排出への依存を、特にエネルギーおよび運輸業界で迅速に減らすことがこの地域に求められている。
この研究の地域に関する予測は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今年発表した重要な報告書をはじめとした他の科学的研究と一致している。国連の気候報告書は地中海沿岸を、干ばつ、海岸浸食、熱波の被害を受けやすい気候変動の「ホットスポット」と称している。
AP