
キャスパー・ウェルブ
ロンドン:マーティン・グリフィス国連事務次長(人道問題担当)は、ユーフラテス川の水位低下、その他の水不足、コレラの発生などの要因が重なり、シリア北東部に危機を招いていると警告した。その危機は人道支援パートナーによる緊急介入を必要としている。
同氏が警告を発したのは14日、安保理会合で、内戦で荒廃したシリアの最新情勢が議論されていたときだった。理事国に加えてトルコとイランの代表も出席していた。
しかしグリフィス氏は、安保理の長期的目標は「レジリエンスを育む取り組み」を促進することによって「援助の必要性を下げる」ことだと強調した。
今年、シリアの重要な人道プロジェクトに十分な資金を提供するには44億ドルが必要だ、とグリフィスは述べた。同氏は、その目標の4分の1しか達成されておらず、「半分にも届かないかもしれない」と警告した。
同氏は資金調達の重要性を強調し、シリアでは400万人以上が早期復興と、レジリエンスを育む取り組みの恩恵を受けていると指摘した。そして同氏は、国連は越境支援を拡大し緊急支援物資をシリアに届けるため、「最大限の努力を続けている」と付け加えた。
ナジャト・ロクディ国連シリア担当副特使は安保理に対し、「多くのシリア人が多くの苦しみを味わって」おり、緊急人道援助と、対処するための交渉が必要な状況になっていると述べた。
国連を含む人道支援関係者の長期的目標は、停戦を確保し、シリアの一般市民が切望している安全と安心を提供することだった。
しかし、シリア内戦の当事者は妥協点を見いだすのは難しいと思っている、とロクディ氏は付け加えた。同氏は、政治的安定性を高めるため、「パラレルなプロセス」を採用するよう呼び掛けた。
シリア内戦が続いているため、「(一般市民は)殺され、重傷を負わされ、拘束され、住む場所を追われ、家に帰れなくなっている」と同氏は述べ、シリアでは最近、暴力が拡大していると警告した。ロケット弾や大砲を用いた交戦、空爆、無人機攻撃などが行われているという。
最近、イスラエルがアレッポ空港を空爆したという報告があった。その空爆でインフラが損傷を受け、国連の人道航空便によるアルホル避難民キャンプへの支援物資の輸送が中断したことが明らかになり、懸念が高まっている。
人道団体や市民社会団体のもう一つの長期的懸念は、シリア政府による恣意的な拘束や拘禁が続いていることだ。「数万人」のシリア国民が刑務所の中にいる。
ロクディ氏は、行方不明になっているシリア人の問題や市民社会・家族・女性の問題に取り組む国際機関の設立を呼び掛けた。
同氏はシリアの女性が苦しんでいることを強調し、内戦のせいで彼女たちは「特別な重荷」を背負わされていると警告した。解決策は女性の問題を特に重視し、女性に積極的な役割を与えるものでなければならない。シリアが経済的苦境に陥っているため、職を得ることができず、「家族や地域社会の人々をまとめている」女性が多いからだ。
ロクディ氏と同じ考えを持つのは、「メディアと表現の自由のためのシリアセンター」の代表を務めるマーゼン・ダルウィッシュ氏だ。ダルウィッシュ氏は、シリア政府による人権侵害は依然として平和に対する大きな障害であり、世界中のシリア難民が帰国できずにいる、と述べた。
ダルウィッシュ氏は「ほとんどのシリア人が政治的解決に至る日が来ることを夢見ている」と述べたが、こう付け加えた。「私が帰国したら、死刑執行人に私を殺す2度目のチャンスを与えるだけだ」
同氏は、シリアの状況を旧ユーゴスラビアの解体の状況と比較し、「国連は旧ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ元大統領の犯罪を追求したのに、なぜシリア政府のメンバーには同じことをしないのだ」と問いかけた。
「(和平調停は)移行期の公正に基づくものでなければならない」と同氏は述べ、こう付け加えた。「戦争の唯一の長所は、終わらせられるということだ」