
自民党の総裁を目指す議員は派閥に所属して「数の力」を頼りにするのが通例で、この30年近くの総裁は国会議員の2世、3世がほとんどだ。今回の総裁選に挑む3氏のうち、石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長はともに父親の地盤を受け継ぎ、今は一派を率いる。これに対し、無派閥でかつ非世襲議員の菅義偉官房長官が選出されれば初のケースとなる。
菅氏は当初、平成研究会(現竹下派)に所属したが、1998年の総裁選で故梶山静六元官房長官を支持するため退会。2000年に宏池会(現岸田派)に入ったものの、派閥の体質を問題視して09年に離脱した。それ以降は「派閥解消」を訴え、無派閥を貫いている。
過去の総裁選では出馬直前に形式的に所属派閥を離れた例があったが、その場合も実質的に支援を受けており、菅氏とは大きく事情が異なる。岸田氏は47人、石破氏は19人の派閥の領袖(りょうしゅう)だ。
ただ、菅氏は無派閥の中堅・若手らで構成する複数のグループと定期的に会合を持ち、「面倒見がいい」との定評がある。約30人が事実上の「菅派」と目されている。
親族が政治家で、その選挙地盤や「看板」を引き継いだケースを「世襲」とすると、1991年に総裁に就任した宮沢喜一元首相(故人)以降は全てこれに該当する。父が地元町長だった森喜朗元首相の他はいずれも衆院議員の父を持つ。
菅氏も父が秋田県旧雄勝町議だったが、菅氏自身は国会議員秘書を経て、横浜市議から96年に衆院神奈川2区で初当選した「たたき上げ」だ。総裁に選ばれれば、法政大卒や秋田県出身者としても初。東北地方出身者では故鈴木善幸元首相(岩手県)以来、戦後2人目となる。
一方、岸田氏は父も祖父も衆院議員の政治家一家。石破氏も父が自治相や鳥取県知事を務めた2世政治家だ。
JIJI Press