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入植地の高層建築により、「パレスチナの島」が生まれる恐れ

イスラエルの新入植地ギヴァット・シャケドの建設予定地を示す、アラブ人居住区ベイト・サファファのパレスチナ人住民、ファリド・サルマン氏。ギヴァット・シャケドは併合された東エルサレムでベイト・サファファと西エルサレム(背景右側)の間に位置する。2022年9月7日(AFP)
イスラエルの新入植地ギヴァット・シャケドの建設予定地を示す、アラブ人居住区ベイト・サファファのパレスチナ人住民、ファリド・サルマン氏。ギヴァット・シャケドは併合された東エルサレムでベイト・サファファと西エルサレム(背景右側)の間に位置する。2022年9月7日(AFP)
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15 Sep 2022 08:09:36 GMT9
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  • イスラエルは1967年の第3次中東戦争で東エルサレムを占領し、後に併合したが、国際社会の大部分からは承認されていない

エルサレム:イスラエルによって併合された東エルサレムに住む、パレスチナ人のファリド・サルマン氏の住む家からは、エルサレムの街を一望でき、視界を遮るものはない。だが、新たにユダヤ人入植者向けの一群の高層住宅ができると、彼の住む場所は孤立させられるかもしれない。

サルマン氏はアラブ人地区ベイト・サファファに暮らしているが、最近になってそこでイスラエル当局が24階建てのビルを含む、700の入植者住宅の建設を事前承認した。この建設は、ギヴァット・シャケド地区の開発計画の一部である。

自宅横の、草が生え、ごみが散らかった丘の上に立って、66歳で庭師をしているサルマン氏は次のように話した。「パレスチナ人なら誰でもそうですが、ここに入植地ができると何が起きるだろうかと、不安でたまりません」

彼の家からは西エルサレムを一望できるが、その景色の至る所にはすでに1ダースものクレーン車が見える。街のこの部分は人通りが多く、2つのスタジアムと住宅地の横を幹線道路が通り、車が猛スピードで走り抜ける。

「明日にも彼らは、国境のこちら側にまで入ってくるでしょう」と、サルマン氏は言う。国境とはいわゆるグリーン・ラインのことで、国際社会の大部分はこれを西エルサレムとパレスチナ人たちが将来の独立国家の首都と見なす、市の東側との間の正当な境界線だと考えている。

ギヴァット・シャケド地区の開発計画は、1990年代半ばに最初に提案されて以来、議論を呼んできた。

1995年には、実現すればベイト・サファファが東エルサレムの他の部分やイスラエルが占領するヨルダン川西岸地区から孤立する危険があるため、当時成立して間もなかったオスロ合意を脅かすものとして国連安保理でこの計画を非難しようという動きがあった。アメリカはこの決議に拒否権を行使したが、イスラエルにはこの計画を中止するよう圧力をかけた。

現在、丘の多いこの地区には低層住宅の屋上の白い貯水タンクが点々と見られ、中心部には金のドームを持つモスクがある。

ギヴァット・シャケド地区の開発計画が、なぜ再び勢いを取り戻したのかは定かではない。だが、イスラエルがここ4年以内で5回目となる総選挙を11月に予定していることから、一部の政治家は公然と入植地拡大と東エルサレムへの支配権を支持する右派の有権者の機嫌を取ろうとしている。

これらの政治家の一人が右派のナショナリストであるアイェレット・シャケド内務大臣で、党の指導者で元首相のナフタリ・ベネット氏が政界引退を表明して以来、支持集めに苦心している。

「この地域で、あるいは市内のどこであっても、開発と建設を妨げるなど、考えられません」とシャケド氏は述べて、エルサレム全域がイスラエルの首都だという自身の信念を強調するとともに、市の東側でのパレスチナ人のいかなる支配権の主張も拒絶するとした。シャケド氏はまた、エルサレムで「住宅供給を増加させる」必要性も主張した。

入植に反対する監視団体、イル・アミムの創設者であるダニエル・サイドマン氏は、このような主張は正しくないと言う。

これは「イスラエル人とパレスチナ人の真の住宅需要とは無関係」の話であると弁護士の資格を持つサイドマン氏は話す。「これは、イスラエルとパレスチナの国家の争いなのです」

「もし本当にこれが住宅需要の問題であるなら、この地域は当然そうあるべき仕方で、つまりパレスチナ人地区の有機的な一部として開発されるでしょう」

「しかし実際には、ベイト・サファファから土地がもぎ取られて、地政学的なイデオロギー上の目的でイスラエル人地区に作り変えられているのです」

1万6千人近くが生活するベイト・サファファ地区はグリーン・ライン上、東エルサレムの南西の角に位置するため、孤立のリスクが特に高い。

この地区はすでに南側にある2つのユダヤ人入植地、ギロとギヴァット・ハマトスによって閉じ込められたような状態にある。

ギヴァット・シャケド地区の開発計画にある高層建築は、実現すればこの地区のコミュニティを他のパレスチナ領から効率的に切り離すことができる。

「ちょうどパレスチナ領の飛び地のようなものです」とサイドマン氏は説明し、イスラエルが「東エルサレムに圧倒的なプレゼンスを確立することでパレスチナ人たちを分断・排除しようとしている」と非難する。

東エルサレムにあるパレスチナ人の住居は定期的にイスラエル当局による取り壊しの対象になっている。イスラエル側の主張は、これらの住宅は適切な許可を得ていないというものだが、パレスチナ人たちによれば、彼らがそのような許可を得ることはほとんど不可能である。

サルマン氏は、目の前で起きていることが度を越したダブル・スタンダードだという不満を表明している。入植者向けの高層建築には許可が下りる一方で、パレスチナ人住民の住宅用許可は、イスラエルのお役所主義の中で消えてしまうのだ。サルマン氏は言う、「建築するなとは言いません。でも、我々のことも考えてほしいのです」

AFP

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