
レイ・ハナニア
シカゴ:8日の中間選挙では共和党候補は党幹部が予測したほどの大勝には遠く及ばなかったが、いくつかの州ではアラブ系やイスラム教徒の米国人が選挙でのプレゼンスを高めた。
カリフォルニア州からニューハンプシャー州まで、一部のアラブ系・イスラム教徒候補は厳しい試練に直面し、数人が落選した。
この記事では、選挙当局が発表したり主要メディアがまとめたりした非公式の結果に基づいて、アラブ系・イスラム教徒候補がいくつかの主要な州の選挙戦で残した結果を概観する。
ペンシルベニア州では、米国の人気テレビ司会者で共和党のメフメト・オズ医師が民主党のジョン・フェッターマン氏に僅差で敗れ、同州初のイスラム教徒の上院議員になることはできなかった。しかし、ミネソタ州、イリノイ州、ルイジアナ州、アイオワ州、ミシガン州、ニューハンプシャー州、フロリダ州、カリフォルニア州ではアラブ系・イスラム教徒候補が勝利を収め発言力を高めた。
ミネソタ州では、全米で唯一のイスラム教徒の州司法長官としての地位を維持すべく再選を目指す現職のキース・エリソン氏が共和党のジム・シュルツ氏を僅かにリードしている。250万票の95%が開票された時点ではエリソン氏が僅差ながら2万票上回っている。
スター・トリビューン紙によると、エリソン氏は9日早朝に支持者らに対し次のように語りかけた。「今回の選挙は本当に厳しかった。恐怖、分断、不快なCM、憎悪と分断と恐怖を植え付けるためだけに費やされた何百万ドルもの金。でも我々は乗り越えた。まだ開票中だが、我々はこの選挙に勝つだろう」
ミネソタ州5区では、ソマリア系の民主党下院議員であるイルハン・オマル氏が共和党のシシリー・デイビス氏と争ったが、得票率75.2%で難なく再選を果たした。
イリノイ州の州議会21区では、パレスチナ系でイスラム教徒のアブデルナセル・ラシッド氏が65%の得票率で当選した。ラシッド氏は、1978年に当選したユダヤ・シリア系の州議会議員でクック郡判事だったミリアム・ドウェック・バラノフ氏、および彼女の息子で1993年に州議会議員に選出されたクレム・バラノフ氏に続く、イリノイ州で3人目のアラブ系の州議会議員となった。
2022年6月のイリノイ州民主党予備選挙では、ラシッド氏は民主党が強いこの選挙区で7期現職のマイケル・J・ザレフスキー州議会議員を追い上げ僅か255票差で勝利した。元シカゴ市会議員の有力者を父親に持つザレフスキー氏は2008年から州議会議員を務めており、民主党からは無敵の存在と見られていた。
ラシッド氏はアラブニュースに対し次のように語った。「21区の有権者の信任を得ることができて光栄に思うと同時に身の引き締まる思いだ。有権者は私を労働者階級や中流階級の家庭の代弁者とするべく州議会に送り出してくれた。また、州議会でイリノイ州全体のアラブ系米国人の代弁者、コミュニティを理解し彼らのために闘う存在となれることも誇りに思う」
民主党のインド系でイスラム教徒のナビーラ・サイード氏も51区で共和党の対立候補クリス・ボス氏に勝利してイリノイ州議会の議席を獲得した。
イリノイ州16区では、レバノン系でキリスト教徒の共和党下院議員ダリン・ラフッド氏が民主党のエリザベス・ヘイダーライン氏に得票率65%で勝利し再選を果たした。
WCBUラジオによると、ラフッド氏は選挙の夜に支持者らに対し、「私の選挙区の人々が信じるものを引き続き守っていくことを約束する」と語りかけた。
ルイジアナ州6区では8日、レバノン系でキリスト教徒のシンシア・シルマン氏を母親に持つ共和党下院議員のギャレット・グレイブス氏がリバタリアン党のルーファス・クレイグ氏に得票率80%で勝利し再選を果たした。
アイオワ州の州議会78区では、母親のハラさんがシリア系移民である民主党のサミ・シェーツ氏が勝利して同州初のアラブ系の州議会議員となった。シェーツ氏は共和党のアン・フェアチャイルド氏に得票率67%で勝利した。
ミシガン州の新設の12区では予想通り、パレスチナ系でイスラム教徒の下院議員であるラシダ・タリーブ氏が地滑り的に3期目再選を果たした。得票率は73.7%で、対立候補は共和党のスティーブン・エリオット氏だった。
ミシガン州ではアラブ系・イスラム教徒候補数十人が州、郡、市のレベルで選挙戦を戦った。そのうちの一部はまだ開票が続いている。
ウェイン郡委員会13区では、民主党のサム・ベイドゥン氏が得票率64%で共和党のアン・F・クラーク氏に勝利し再選を果たした。
ミシガン州の州議会3区では、レバノン系米国人で民主党のアラバス・ファルハット氏が共和党のジンジャー・シアラー氏に勝利した。州議会9区では、民主党の現職州議会議員であるイエメン系のエイブラハム・アイヤシュ氏が共和党のミッチェル・ランドグレン氏を破り再選を果たした。
ミシガン州立大学理事会の空席補充選挙では、イラクからの移民を両親に持つアラブ系のデニース・デンノ氏が当選した。
ニューハンプシャー州では、レバノン・パレスチナ系の共和党知事クリス ・ スヌヌ氏が得票率57%で民主党のトム・シャーマン氏に勝利し再選を果たした。父親のジョン・スヌヌ氏はかつてニューハンプシャー州知事と上院議員を務め、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の首席補佐官でもあった。
アラブ系候補は、フロリダ州では悲喜こもごもの結果となった。ギリシャ・レバノン系で民主党のチャーリー・クリスト氏はロン・デサンティス知事を退かせることができなかった。デサンティス知事は共和党の有力者で、2024年の大統領選に出馬する可能性があると言われている。
デサンティス知事に敗れたクリスト氏の得票率は40%で、これは775万票以上のうちの310万票に当たる。
カリフォルニア州の新設の48区では、シリア・レバノン系でキリスト教徒の共和党ダレル・アイサ氏が民主党のステファン・フラハン氏に得票率60%で難なく勝利した。
カリフォルニア州16区では、開票が半分しか進んでいなかった9日朝の時点で、民主党で長年下院議員を務めているアッシリア・アルメニア系のアンナ・エシュー氏がリシ・クマール氏に対し得票率58%でリードしていた。アッシリア人の祖先を辿るとオスマン帝国とイラクにたどり着く。エシュー氏は1993年から議席を維持している。
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数字で見る
8日の選挙では、多くのアラブ系米国人を含むイスラム教徒がより強いプレゼンスを示した。
米国イスラム関係評議会とジェットパック・リソースセンターによると、全米でイスラム教徒の米国人145人が出馬しており、18州で29人が州議会議員を務めている。
これまでに連邦議会上院議員に選出されたアラブ系米国人は以下の5人。
連邦議会のアラブ系議員
1959年にジョージ・A・カセム氏がカリフォルニア州で初めて選出され1期を務めて以来、これまでに28人のアラブ系または中東系米国人が米連邦議会の議席を獲得してきた。現在も以下の6人が下院議員を務めている。
各州のアラブ系人口(2019年)
(注:米国の国勢調査には「アラブ系」や「イスラム教徒」というカテゴリーは無いが、米国民は国勢調査用紙に任意で自分の民族、出身、宗教を記入することができる。)