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親パレスチナ的姿勢はニューマン氏の再選失敗の一因でしかない

アラブ系米国人の集会に出席するイリノイ州選出のマリー・ニューマン下院議員(当時)。同氏は、イスラエル政府による残虐行為に対する厳しい姿勢と「メディケア・フォー・オール」に関する断固とした立場によって党エスタブリッシュメントの反感を買った。(提供写真)
アラブ系米国人の集会に出席するイリノイ州選出のマリー・ニューマン下院議員(当時)。同氏は、イスラエル政府による残虐行為に対する厳しい姿勢と「メディケア・フォー・オール」に関する断固とした立場によって党エスタブリッシュメントの反感を買った。(提供写真)
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21 Apr 2023 09:04:18 GMT9
21 Apr 2023 09:04:18 GMT9
  • ニューマン氏は親アラブ・親パレスチナ的立場を取っているにもかかわらず、パレスチナ系・アラブ系有権者が非常に集中しているイリノイ州3区から選出された下院議員として1期しか務めることができなかった

レイ・ハナニア

シカゴ:米下院で最も親アラブ・親パレスチナ的な議員の一人だったマリー・ニューマン氏は昨年再選を逃した。同氏がイスラエル政府を批判したことが一因だが、医療ニーズを守るために闘い、企業PAC(政治資金団体)が選挙に及ぼす影響力の拡大に反対したせいでもある。

ニューマン氏は2020年11月に下院議員に選出されたが、(ニューヨーク・タイムズの分析ではパレスチナ系・アラブ系有権者が最も集中している下院選挙区とされた)イリノイ州3区から選出された下院議員として1期しか務めることができなかった。

ニューマン氏はアラブニュースによるインタビューの中で、民主党エスタブリッシュメントの「一部の幹部」が同氏に不利になるような区割り変更を行ったことで、同氏は(パレスチナ系・アラブ系やイスラム教徒の支持者が少なくなった)新設の6区でベテランの現職ショーン・カステン議員との対決を余儀なくされたと話した。

同氏は次のように語る。「選挙区が劇的に変わってしまった。私からすれば選挙区内の支持者の60%以上が奪われ、40%以下しか残らない形になった(…)いつもの典型的なイリノイ政治のペテンだが、自己憐憫に浸っているわけにはいかない。受け入れなければならないのだ。私がいくつかの問題について遠慮なく物を言ったせいだと思う。国中の党エスタブリッシュメントは一般にそれらの問題が気に入らないのだ」。以前の3区では有権者の20~25%がアラブ系・イスラム教徒・南アジア系だったという。

オリエンテーションのために連邦議会議事堂に来たマリー・ニューマン次期下院議員(当時)。2020年11月12日、ワシントンD.C.。(Getty Images/AFP/ファイル)

「『企業PAC(政治資金団体)からの資金にノーを』『企業の資金・影響力にノーを』というのはかなり遠慮なく言っていたので、それが党エスタブリッシュメントを激怒させた。『メディケア・フォー・オール』についても率直に発言していた。『メディケア・フォー・オール』を実現できない理由は、政治家がヘルスケア企業や製薬会社から、そしてこの問題に関係するあらゆる所から資金を受け取っているからだ。強く主張したもう一つの問題は、私の選挙区の人々の人権の問題だ。この問題については大多数の人々が非常に強く感じていた。さらに言えば、それを感じていたのはパレスチナ系、アラブ・イスラム系、南アジア系の人々だけではなかった」

ニューマン氏は1回で終わった2年間の任期の間に、パレスチナ系・アラブ系米国人コミュニティーを支援するための法案を多数提出し、イスラエル政府に批判的ないくつかの法案の共同提案者となった。

ニューマン氏はウィスコンシン州選出のマーク・ポカーン下院議員と共に、東エルサレムのシェイク・ジャラー地区で2021年5月に起こったイスラエルによるパレスチナ人の住宅取り壊しや立ち退き強制の問題にスポットライトを当てるための闘いを主導し、30人近くの議員から署名を集めた。

ニューマン氏はまた、「アイアンドーム」への米国からの追加出資の阻止を支持し、イスラエルが急襲や軍事作戦の際にパレスチナの子供たちを標的にしていることを批判した。さらに、(パレスチナをキリスト教徒・イスラム教徒・ユダヤ教徒が共存する一つの民主国家にするのではなく二国家に分けるとした)国連のパレスチナ分割決議を記念するものとして「ナクバ」という言葉を認識するという国連決議案を支持した。

ニューマン氏はその結果、イスラエル政府の政策に異議を唱えるのは「反ユダヤ的」だとして、親イスラエル活動家や右派議員だけでなく民主党議員からもしばしば攻撃を受けた。

ニューマン氏はアラブニュースに対し次のように語る。「私は反ユダヤ的だったことはないし、ユダヤ系の人々やイスラエル国民を貶したこともない。イスラエル政府を批判しただけだ。その点ははっきりしている」

「しかし問題は、企業の息がかかった政治家や選挙を批判したという理由で私のことが気に入らない人たちがいたということだ。『メディケア・フォー・オール』やその他の経済的公平性の問題についても厳しく追求した。この種の問題はたくさんあって、学生ローン返済免除などもそうだ」

ニューマン氏は、パレスチナ系・アラブ系・イスラム教徒の人々の権利に対する自身の立場や、イスラエル政府を批判する姿勢を誇りに思うと語る。「そして人権についてもかなり強く主張した。現地で実際に起こっていること、イスラエル政府がしていることについてはっきりさせようではないかと。企業の息がかかった民主党エスタブリッシュメントにとって厄介だったのは、私にユダヤ系の夫、ユダヤ系の子供たちがいることだ。私のことを反ユダヤ的と呼べないからだ。それが彼らにとって厄介なことだった」

「彼ら(ニューマン氏が反ユダヤ的であると不当に非難した人々)は尻尾を巻いて逃げ出した。私がそういう人間でないことが分かって、ほとんどの人は以前ほどにはそういう批判をしなくなった」

パレスチナ系・アラブ系・イスラム教徒の人々の権利を支持するという立場は、同氏が反対に直面して2022年6月28日の民主党予備選挙で2期現職のショーン・カステン議員に敗れ再選を逃すことを決定づけた。

「大きな敗因は、私がアラブ系・イスラム教徒、南アジア系の国民のためにかなり強い主張をしたことだと思う」

「彼ら(同氏を批判した人々)はその方面での私の立場の多くが気に入らなかったのだ。彼らを怒らせたと思う。彼らには気に入らないことがたくさんあった」

「企業資金の問題やパレスチナとイスラエルの状況について最初に声を上げ始めた時、寄付者からだけでなく他の議員から電話が何度かかかってきたことを覚えている(…)警告や脅迫だった」

かつてニューマン氏のもとでイリノイ州3区の選挙区責任者を務めたパレスチナ系米国人のシャディン・マーリ氏は、ニューマン氏はパレスチナ系・アラブ系・イスラム教徒を含む国内の全ての人々の人権のために「積極的な声」を上げていたと話す。

現在はイスラム教徒に関する問題を代弁する合同組織「エムゲージUSA」の成長・運営担当シニアディレクターを務めるマーリ氏は次のように語る。「ニューマン議員は任期の間、過去に他の議員がしなかったような形で私たちのコミュニティーに手を差し伸べ、私たちの問題を理解し、国内外での人権をはじめとするあらゆる問題についてこの選挙区を公正に代表していた」

「イリノイ州3区は分割以前はパレスチナ系の有権者が国内で最も多い選挙区だった。非常に積極的にコミュニティーに手を差し伸べ、全てのイベントに出席したのは彼女が初めてだった」

ニューマン氏は女性であることによって米国政治の中で弱い立場に置かれていたという。「はっきり言って、お金をたくさん持っている50歳以上の白人男性が常に勝つ。いつもそうだ」

しかし同氏は、「イスラエル政府が発する卑しさと憎しみ」を黙って見ているわけにはいかなかったと強調したうえで次のように語る。「イスラエル国民がそうだとは全く思わない。ユダヤ系の人々がそうだとは全く思わない。私としては、人権に注意を払わなければ我々の評判が危険に晒されるということを理解できるくらいには我々は皆賢明だと思う」

イリノイ州3区は区割り変更によって5つの選挙区に分割され、パレスチナ系・アラブ系・イスラム教徒コミュニティーの政治的まとまりが薄まってしまった。

旧3区の各選挙区から選出されて現在議員を務めているのは、ビル・フォスター議員、カステン議員、ヘスス・「チュイ」・ガルシア議員、ローレン・アンダーウッド議員、ダニー・デイヴィス議員だ。

ニューマン氏は2023年4月、知的障害や発達障害を持つ人々のために活動している社会福祉団体「リトル・シティ・ファウンデーション」のCEOに就任した。同団体はイリノイ州北部で入所施設、デイプログラム、在宅支援を通して900人以上にサービスを提供している。

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