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2024年米大統領選挙:ラマスワミ氏はアラブ系アメリカ人にとって唯一の選択肢となるか

先月行われた共和党の大統領選に向けた初討論会で、ラマスワミ氏は、「意外な勝者(サプライズウィナー)」のひとりとされた。(ファイル/AFP)
先月行われた共和党の大統領選に向けた初討論会で、ラマスワミ氏は、「意外な勝者(サプライズウィナー)」のひとりとされた。(ファイル/AFP)
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28 Sep 2023 02:09:10 GMT9
28 Sep 2023 02:09:10 GMT9

米国大統領になりたいと思っている候補者のほとんどにとって、イスラエルをめぐる議論の焦点はほぼひとつ、「誰が最も積極的にイスラエルを支持するか」だ。

国際法、真の民主主義、そして公正さに基づく妥協を受け入れる――つまり、パレスチナ人の権利も支持する――候補者は、勝算のない「お飾り」候補者として退けられたり、選挙活動に一定の基盤がある場合は反ユダヤ主義者として非難されたりすることが多い。

強力な親イスラエルロビーとその影響力のある友人たちは、イスラエルを盲目的に擁護し、その人権侵害を無視する候補を支援するために、資金を注ぎ込んで、このような候補者たちを中傷するだろう。

しかし、まれに、中傷や泥仕合を超えて、米国の利益と民主主義の原則をイスラエルの弱い者いじめよりも優先する候補者が現れる。

だから共和党の指名候補であるヴィヴェック・ラマスワミ氏が、この問題に対する理性的なアプローチとでも言うべきものを提唱したことで、親イスラエル派による津波が押し寄せてきたことは想像に難くないだろう。彼は、イスラエルがアラブ世界で受け入れられつつあるのに、なぜアメリカの納税者からの財政支援を必要とし続けるのかと問いかけているのだ。

先月行われた共和党の大統領選に向けた初討論会で、初めて全国ネットのテレビ番組に出演したラマスワミ氏は、「意外な勝者(サプライズウィナー)」のひとりとされた。インド系アメリカ人である彼は、しばしば米国の非公式な51番目の州のように扱われるイスラエルを含めとして、すべての外国よりも米国を支持することを明らかにした。

共和党の指名候補であるである彼は、イスラエルに対する理性的なアプローチとでも言うべきものを提唱している。

レイ・ハナニア

第二次世界大戦以来、イスラエルは他のどの国よりも多くの資金援助を受けてきた。歴代大統領の誰もがイスラエルへの資金援助を承認してきたが、その理由のひとつは、イスラエルのロビー活動が議会候補者の選挙運動に資金を提供するのに非常に効果的であったためだ。そのため、米国の大盤振る舞いに異議を唱える議員がほとんどいなかったのだ。

米国は、資金だけではなく、利益もイスラエルに提供している。第5世代ステルス機であるF-35という世界で最も先進的な戦闘機の最初の国外輸出先は、イスラエルであった。

イスラエルは1948年以来、1580億ドル以上の資金援助を受けている。現在、多くの選出議員たちは、今日の厳しい経済情勢の中で、この資金援助を続けるべきかどうか、ラマスワミ氏と同様に疑問を抱いている。ラマスワミ氏は先月、現在の協定が2028年に終了した時点で、アメリカはイスラエルへの財政援助を打ち切るべきであり、その時までにはイスラエルはアラブ諸国との和平協定を拡大しており、中東に安定がもたらされているはずだとの見解を示した。「2028年になれば、イスラエルはパートナー諸国とより一体化することで、中東で実際に得られるような安定を維持するための追加援助は必要なくなるだろう」と彼は述べている。

しかし、アメリカの親イスラエル主要メディアからの反発を受け、ラマスワミ氏はその後、「イスラエルが望む限り」資金提供を続けると述べた。

共和党員としては異例な彼の見解に異議を唱えた親イスラエル活動家たちによって、彼は明らかに守勢に立たされた。彼はイスラエルを支持し、イスラエルの防衛を止めないということを強調せざるを得なかった。

もちろん、彼が大統領になるためには、共和党の予備選に勝ち、来年の選挙で2期目を目指すジョー・バイデン大統領を破る必要がある。

しかし、ラマスワミ氏が米国のイスラエルへの巨額の資金供与に終止符を打つことを示唆したという事実そのものが、これらの資金をまずは恵まれない米国人の救済に使うべきだと考える有権者からの支持の波を生み出している。多くの共和党議員が、ロシアの軍事侵攻に立ち向かうウクライナに送られる数十億ドルの支援に疑問を持ち始めている今、この議論は特に現実味を帯びている。

他の多くの候補者は攻撃の矛先をトランプ前大統領やフロリダ州のロン・デサンティス知事から同氏へと大きくシフトさせている。

レイ・ハナニア

ラマスワミ氏は、イスラエルに関する発言と共和党大統領討論会での見事なパフォーマンスで大きな注目を集めた。これにより、他の多くの候補者は攻撃の矛先をトランプ前大統領やフロリダ州のロン・デサンティス知事から同氏へと大きくシフトさせている。

インドからのヒンズー教移民の息子であるラマスワミ氏は、2024年の選挙時にはまだ39歳であり、もし勝利すれば史上最年少のアメリカ大統領となる。この若さは、バイデン氏がその年齢についての疑問に直面し続けている今回の大統領選では武器になると見られている。最年長で大統領に選出されたバイデン氏は、就任時は78歳だった。彼のイメージは、多くのスピーチでのつまずき、名前の間違え、そして彼への指示のために書かれたテレプロンプターのメモを声に出して読んでしまうことなどで、悪化している。

アラブ系アメリカ人とムスリム系アメリカ人は、パレスチナ人とパキスタン人を区別することが難しい国で育ったという点などで、移民2世のラマスワミ氏と多くの点で共感することができるだろう。ラマスワミ氏は、アラブ系アメリカ人を攻撃してきたのと同じ人々、例えばインド系シーク教徒の両親から生まれ、クリスチャンに改宗した元国連大使ニッキー・ヘイリー氏からも攻撃されている。

ヘイリー氏は熱烈な親イスラエル派であり、トランプ政権が繰り返し試みた、パレスチナ側の暴力行為を「テロリズム」と非難し、イスラエル側の暴力行為には目をつぶるという国連決議を押し通そうとする失敗に終わった試みの原動力であった。

実際、アラブ系米国人はアメリカの政治、特に国政選挙において、いくつかの勝利を収めてはいるものの、一般的にはあまり良い結果を残していない。彼らは正義を主張する強力な発言力を欠いており、イスラエルを批判すると反ユダヤ主義者として非難される。

バイデン大統領はアラブ系アメリカ人とムスリム系アメリカ人を支持するために手を差し伸べているが、これはイスラエルへの彼の非常に強い支持によって帳消しになっている。バイデン氏がホワイトハウスや国務省の役職に任命したアラブ系アメリカ人のほぼ全員が、イスラエルの怒りを買うような発言をしないよう、事実上口止めされているのだ。

しかし、イスラエルへの数十億ドルの援助に敢えて挑む候補者、特に共和党の候補者は、アラブ系アメリカ人とムスリム系アメリカ人の支持を得るに値するだろう。さて、彼がこの問題でさらに後退するかどうか、注目してみよう。

  • レイ・ハナニア氏は、受賞歴のある元シカゴ・シティ・ホールの政治記者であり、コラムニスト。彼の個人ウェブサイトHanania.comを通して連絡を取ることが可能。X: @RayHanania
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