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トルコの脅威でシリアのクルド人は自分たちを象徴する都市を失う恐怖を抱いている

シリア北部の都市コバネの「自由な女性」広場に立つ男性。ここはトルコとの国境近くのクルド人居住区だ。(AFP)
シリア北部の都市コバネの「自由な女性」広場に立つ男性。ここはトルコとの国境近くのクルド人居住区だ。(AFP)
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27 Nov 2022 04:11:01 GMT9
27 Nov 2022 04:11:01 GMT9
  • トルコ政府はイスタンブールでの爆破事件をクルディスタン労働者党(EUと米国によってテロ集団に指定されている)の犯行とし、それがコバネからの命令であると発表した。

トルコ軍による攻撃の恐怖に覆われるシリアのクルド人都市コバネで、サレハ・アブド・ハリルさんは瓦礫と化した建物の野外「博物館」の脇を通り過ぎる。

「この辺りの建物を破壊したのはダーイシュです」と地元のパン屋は話す。

ダーイシュの危険は去ったが、今度は「トルコが街の残りを破壊しようとしています」と彼は言う。

日曜日以降、トルコはシリア北部と北東部のクルド人半自治区、そして国境を越えたイラクに対して空爆を行った。

シリア人権監視団によると、コバネから始まった一連の空襲でクルド人戦闘員とシリア兵が58人、クルド人ジャーナリストが1人死亡したという。

トルコ政府は地上攻撃を実施すると脅し、コバネ(別名アイン・アル・アラブ)が主要な目標になると明言した。

米国が支援するシリア民主軍(SDF)は現在この地におけるクルド人の事実上の軍隊であり、2019年にダーイシュの戦闘員をシリア領土の最後の拠点から放逐する戦闘を主導した。

その数年前の2015年、クルド人勢力がトルコとの国境にあるコバネからダーイシュを追い出し、この街はダーイシュに対する勝利のシンボルとなった。

クルド人当局は戦闘の記憶を風化させないため、破壊された建物や焼け落ちた車両、ミサイルの残骸などの周りに非常線を張り、コバネ「博物館」と呼ぶようになった。

カタールで開催されているサッカーのワールドカップが一部住民の関心を集めているが、住民の表情からは緊張感が読み取れる。ほとんどの住民がダーイシュとの戦闘から逃げ出し、その後徐々に戻ってきて、街の再建に携わってきている。

「私たちは全世界のためにダーイシュと戦ったのに、いま世界は目をつぶり、トルコの爆撃を見て見ぬふりをしています」とパン屋のハリルさん(42歳)は言う。

11月13日にイスタンブールの爆破テロ事件で6人が死亡、81人が負傷してから1週間後、トルコ政府は「70機の爆撃機とドローン」でコバネを手始めにイラクとシリアに点在するクルド人拠点に対して空爆を開始したと発表した。

トルコ政府はイスタンブールでの爆破事件をクルディスタン労働者党(EUと米国によってテロ集団に指定されている)の犯行とし、それがコバネからの命令であると発表した。

PKKは1984年以来、トルコ国家に対して反乱を続けており、トルコはシリアのクルド人戦闘員が同グループに協力していると主張している。

クルド人勢力はトルコでの爆発への関与を否定した。

トルコはその後、北東部のハサケ県のシリア民主軍(SDF)拠点を含む他地域を攻撃し、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は火曜日、トルコは「すぐに」地上作戦を開始すると宣言した。

「コバネの状況は悪化しています。いつ爆撃を受けるか分からないという恐怖から人々は夜も眠れません」とナボ・ジュマア・ラマダンさんは話す。

ラマダンさんは2019年にレバノンから帰国後、コバネでコンビニを開業していた。

「コバネはクルド人にとってダーイシュを打ち破った象徴なのです」とラマダンさんは誇らしげに語った。

エルドアン大統領は「同市に籠められたクルド人の気概を挫きたい」と考えているのだろうというのがラマダンさんの考えだ。

「コバネが陥落すればロジャヴァはすべて陥落します」とシリア内のクルド人が自称する自治行政区の先行きをラマダンさんは予測した。

クルド人は2019年にトルコの初期侵攻に直面した。この時の侵攻でトルコ軍とシリア内の親トルコ勢力は国境沿いの広大な土地を占拠している。

ロシアとトルコの協定により、シリアの3分の1近くを支配していたクルド人勢力は国境から30kmのラインまで後退を余儀なくされた。

撤退にはコバネも含まれていた。

木曜日、新たな地上侵攻の懸念にもかかわらず、コバネの街頭でクルド人軍の動員を目にすることはなかったとAFP通信員は述べた。

民間車両が市内の中心地でトルコの攻撃に反対するデモへの参加をスピーカーで市民に呼びかけていた。

爆撃がない時でもトルコの接近は避けがたく、コバネの複数地区から国境に沿ってトルコの旗が見える。

シリアとロシアの国旗も政府軍の駐屯地がある近くの丘に見えている。両国はシリアの主要同盟国だ。

「爆弾が怖いです。私たちは貧しく、財産も土地もありません」とアミーナ・ユセフさん(65歳)は自宅前で言った。

「私たちにはこの家しかありません。トルコは何を望んでいるのでしょうか?どうしたらいいのかわかりません」。トラウマは世代を超える。

「数年前に戻って来て、家を再建し始めたのです」とシェルワン・ハミさん(39歳)は店の中で雨やどりしながら言った。

「街も市場も栄え、人々は仕事に戻りました。でも新たな戦争が始まり、またもや爆撃の下で暮らす羽目になってしまいました」とハミさんは言う。

AFP

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