
モハメッド・ナジブ
ラマッラー:イスラエル軍がラマッラーとジェニンで12時間のうちにパレスチナ人4人を殺害し、ヨルダン川西岸地区全体で15人を逮捕したことを受け、マフムード・アッバース大統領に対しイスラエルとの治安協力を停止するよう求める声が高まっている。
8日早朝に殺害された犠牲者の公開追悼式がジェニンで行われると発表された。今年に入ってからヨルダン川西岸地区でイスラエル軍に殺害されたパレスチナ人の数は164人に上っている。
これらの殺害を受け、ファタハの幹部らはパレスチナのマフムード・アッバース大統領に対し、イスラエルとの治安協力を直ちに停止するよう求めている。
特に、イスラエルの選挙でベンヤミン・ネタニヤフ氏率いる極右政権が選ばれてからはそういった声が高まっている。
この政権はパレスチナ人に対し前例のない過酷な措置を取ると宣言している。
アッバース大統領はアル・アラビーヤに対し次のように語った。
「治安協力は合意の一環だ。我々の見解では、テロ対策は(必要であれば)どこであろうと行われる必要がある。これは誰も認識していないかもしれない重要な点だ。我々は、米国、イギリス、カナダ、ロシア、日本をはじめとする世界85ヶ国との間にテロと暴力に対抗するための合意を結んでいる」
「本日、我々はキプロスと合意を結んだ。我々は原則としてテロと暴力に反対だ。また、イスラエルとの間でもテロと暴力に反対するという合意をしている。しかし、もしイスラエルがこのような行動を続けるなら、我々は治安合意を履行遵守する必要はない。イスラエルが平気で攻撃を続けるなら治安合意を取り消すつもりだ」
パレスチナの都市を襲撃するイスラエル軍にパレスチナの治安当局が立ち向かわないのはなぜかと聞かれたアッバース大統領は、治安当局は「できる限りのことをしているが、私は事態が(イスラエル軍との)武装対立にまで至るのを望んでいない」と答えた。
ヨルダン川西岸地区には、大統領警備隊、国家安全保障部隊、一般諜報部、軍事諜報部、保安警察、市警などに所属するパレスチナ自治政府の治安要員が約3万5000人いる。
パレスチナの政治アナリストであるハニ・アル・マスリ氏はフェイスブックで、アッバース大統領は「混乱しており、世界を混乱させてもいる」と述べた。
さらに、「彼は(イスラエルとの治安合意を)いつでも破棄できるはずだ。イスラエル政府が(合意を)守らないことが続くならば」と続けた。
アッバース大統領は、「イスラエルの政権はどれも同じだ。どれも虐殺を行う」という自身の立場は維持しつつも、ネタニヤフ氏の次期政権と交渉する意向を示した。
ラマッラーのあるパレスチナ人青年活動家はアラブニュースに対し次のよう語った。
「イスラエルの政権が左寄りだろうが右寄りだろうが、パレスチナ人の殺害に関しては違いはない。マフムード・アッバース大統領の友人であるイスラエルのベニー・ガンツ国防相は、今年に入ってから多数のパレスチナ人殺害を監督してきた」
治安専門家らはアラブニュースに対し、ここ1年間はパレスチナとイスラエルの治安協力によってパレスチナ治安部隊への人員補充が減少していると指摘した。
ナブルスのファタハ革命評議会のメンバーであるタイシール・ナスラッラー氏はアラブニュースに対し次のように語った。
「パレスチナ人に対するイスラエルの犯罪や現場処刑が続いている中で治安協力を続けることは、我々パレスチナ人にとって、またパレスチナ自治政府にとって、恥ずべきこととなっている」
「パレスチナ自治政府がその継続をいかに正当化しようと、治安協力は直ちに停止しなければならない。それは今や民族の尊厳のための個人的要求となっている」
同氏は、今週ラマッラーで行われたファタハ革命評議会の会合でこの問題を話し合ったと付け加えた。
同評議会のメンバーでジェニン難民キャンプ出身のジャマル・フウェイル氏はアラブニュースに対し次のように語った。
「アッバース大統領に対し、直ちに治安協力を停止するよう忠告する。占領軍はパレスチナ人に対する政策を変えていないし、これからも変えないからだ。(元イスラエル首相の)ベン=グリオン氏が言ったように、デイル・ヤシーン虐殺がなければイスラエルという国家は存在しなかっただろう」
1948年4月9日に起こったデイル・ヤシーン虐殺は、エルサレム近郊の人口約600人のデイル・ヤシーン村で、シオニスト準軍事組織イルグンおよびレヒの戦闘員約130人が女性や子供を含む少なくとも107人のパレスチナ・アラブ人を殺害した事件だ。
フウェイル氏は、イスラエルとの治安協力の継続は「パレスチナ人を射殺するための銃弾をイスラエル軍に与えること」を意味すると語った。
東エルサレムの著名なファタハ指導者であるアハメド・グネイム氏はアラブニュースに対し、「イスラエルの治安維持への参加以外のオスロ合意の内容は何も残っていない」のだから、パレスチナ自治政府はずっと前に治安協力を停止するべきだったと語った。
また、イスラエルが連日のようにパレスチナ人に対して暴力を振るっているにもかかわらずパレスチナ自治政府がイスラエルとの治安協力を支持し続けている背景には、「権力に居座り」たいというパレスチナ高官の欲があると指摘した。