ドーバー：水曜日未明、フランスから英国の海岸へ向かっていた移民を乗せた小型ボートが英仏海峡で転覆し、4人が死亡したとイギリス政府が発表した。

事故には、英仏海軍の協力を受け、救命艇、ヘリコプター、救助隊が対応した。イギリスで、人身売買組織の手配による移住が、リシ・スナク政権の優先課題となっている中でのことだ。

「本日03時05分（グリニッジ標準時）に、当局は英仏海峡で遭難した移民ボートに関する事件の通報を受けた」とイギリス政府報道官は声明で述べた。

「沿岸警備隊が主導する共同的な捜索と救助活動の後、事故により4人の死亡が確認されたことは遺憾である」

また、事故については捜査が進められているとしている。

イギリスのラジオ局LBCは、43人が救助されたと報じている。ロイターの記者は、ドーバー港に停泊した救命艇から、遺体袋が1つ降ろされたところを目撃している。

同様の事故は1年ほど前に起きたばかりだ。2021年11月に、膨張式ボートで海を渡ろうとした27人が死亡し、英仏海峡で起きた最悪の事故として記録されている。

先週はイギリス全土で気温が急降下し、一部地域で降雪がみられた。

凍てつくような寒さにもかかわらず、先週末以降だけでも500人以上の移民が小型ボートによる命懸けの渡海を行ってきた。手配を行っている人身売買組織は、風の弱さ、海の穏やかさに乗じている。

彼らの前にも、年内にフランスから渡海してきた移民の数は40,000人にのぼっており、記録的なものとなっている。その多くはアフガニスタンやイランなど戦争や弾圧に苦しむ国々からヨーロッパを横断し、イギリスへの亡命を試みている。

昨年は、アルバニア人の渡海者数も大幅に増加した。イギリスの一部政治家は、欧州連合（EU）加盟候補国であるアルバニアからの移民は迫害から逃れてきたのではなく、経済的な理由で移住しているのだと主張している。

悲劇的な喪失

ドーバーの波止場には、救急車や救急隊が集まった。イギリスのニュース専門局スカイ・ニュースは、移民の一部はケント州アッシュフォードの病院に搬送されたが、生死は不明と報じている。

議会でスナク首相は、今回の事故について遺憾の意を表明した。

「本日未明に英仏海峡で小型ボートが転覆し人命が失われた悲劇に対する私の遺憾の意は、議員諸君の間でも共にしてもらえるだろう」とスナク首相は述べた。

「被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、大規模な救助活動に携わった方々に敬意を表する」

移民政策を担当するスエラ・ブレーバーマン内相は、事故の責任は人身売買組織にあるとした。

「耐航性のない船で英仏海峡を渡るのは命にかかわる危険な行為だ」と内相は国会で述べた。

「人間を貨物として扱う邪悪かつ組織的な犯罪集団である人身売買組織のビジネスモデルを破壊するために、我々が懸命に取り組んでいるのは、何よりもこのためだ」

ブレーバーマン内相は先日、押し寄せる密入国の波を「侵略」と呼び、アルバニアのエディ・ラマ首相より反発を受けた。

難民支援団体Care4Calaisは、移民の死は「完全に不要であり、防ぐことができる」とし、イギリス政府は何ら対策を講じていないと非難している。

「行動を起こさないことで、我々の政府は手を血で汚している」と、同団体は声明で述べている。

移民は、紛争や人権侵害、拷問などの恐怖にさらされてきたと、同団体は述べている。

「彼らは勇敢でたくましく、それゆえ国を脱して途方もない旅を生き抜き、ここにたどり着いて我々に助けを求めている。にもかかわらず、我々は彼らを拒んでいる」

政治的圧力

当局者や慈善団体が移民センターの状態や密入国者到着時の処理手続きの所要時間を非難して以来、イギリス政府に対する、ボート密入国への対策を求める圧力は高まっている。

世論調査によれば、移民（多くは若年男性）の密入国を防止できない政府の対応は、多くの有権者の間で大きな不満となっている。特に、イギリスが国境管理の強化を求め国民投票でEU離脱を選択して以来、不満は高まっている。

スナク首相は、事故の前日に、移民が国内に留まることを防ぐ法律の制定など、英仏海峡のボート渡海を防止するための法律を強化する方針を発表した。

スナク首相は、イギリスの「寛大さ」が不法入国者らによって悪用されていると述べた。一方、批判者らは、イギリスには、ウクライナや香港からの公式ルートが存在する一方で、アフガニスタンやシリアといった国からの渡航を申請するのは困難だと主張している。

Missing Migrants Projectの集計データでは、2014年以降、英仏海峡で205人の移民が死亡または行方不明となったと記録されている。

ロイター