
エルサレム:イスラエル議会と退陣する政府の法律顧問らは14日、次期公安相の極右政治家が自らの権限を拡大しようとしていることを批判し、提案されている変更は民主主義の原則に抵触するものであると警鐘を鳴らした。
「ユダヤの力」党のイタマル・ベン・グヴィル氏は、ベンヤミン・ネタニヤフ次期首相との連立合意のもとで警察を管轄する公安相のポストを約束されている。
ネタニヤフ次期首相率いる新たな強硬右派政権の顔ぶれはまだ確定していないが、ベン・グヴィル氏は警察の規制に修正を加えるための法案を既に提出している。
この法案が通れば、公安相となる同氏は警察トップや警察の捜査に対する影響力を高めることになる。
その「法と秩序」的綱領のおかげもあって11月1日の選挙で自身の党を第3党にした同氏はこの法案について、政府と警察の間の指揮系統を強化するものであると擁護している。
しかし中道左派議員らは、この修正は犯罪捜査や訴追を政治化しかねないものだとして警鐘を鳴らすとともに、ベン・グヴィル氏が2007年に反アラブ的な扇動やユダヤ人過激派組織への支持で有罪判決を受けていることなどを指摘した。
この法案が13日に第一読会を通過した後にこの法案について議論するために招集された議会パネルで、アミット・メラリ副司法長官は次のように述べた。「この法案は、公安相の権限と警察の職業的独立性との間の(…)適切なバランスを欠いている」
また、「総合的に考えると、この法案の中で提案されている指示は、イスラエルにおける民主的統治の核となる諸原則に本質的かつ深刻な損害を与える可能性がある」と述べたうえで、いかなる修正も政府発足後に検討されるべきだと付け加えた。
議会の法律顧問であるミリ・フレンケル・ショル氏は、この法案は国家調査委員会が定めた「警察は完全に自由に捜査を行わなければならず、その上に立つのは法の権威のみである」という原則に一致していないと指摘した。
ベン・グヴィル氏は過去の行為について一部否認している。
同氏は、自分は内閣で社会全体に奉仕するつもりだと述べる一方で、ヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力を軽視しており、イスラエルの治安部隊がアラブ人の騒乱に直面した際により自由に発砲できるようにしたいと考えている。
既に歴代最長の通算15年間首相を務めた経験を持つネタニヤフ次期首相は、極右の台頭に対する国内外の懸念を鎮めるために、最終的には自分がイスラエルの政策を決定すると述べている。
しかし、警察の独立性の問題には、汚職容疑で現在も公判中のネタニヤフ氏を批判する人々も懸念を高めている。同氏は容疑を全て否定しており、警察当局が自分に対して政治化された魔女狩りを行っていると非難している。
ベン・グヴィル氏は前出の議会パネルでの演説の中で、自分の法案は「民主国家に必要な歴史的修正」だと述べた。同氏の傍に座っていたイスラエル警察トップのヤーコフ・シャブタイ警視総監はより慎重だった。
シャブタイ警視総監は、「変化に反対しているわけではないが、このような劇的な変化は議論を掘り下げたうえで実施することが重要だ」と述べた。「警察は軍ではない。軍が相手にするのは敵とされた者だが、警察が関与するは民間人だ」