国連:12月16日、国連リビア担当特使は問題を抱えた北アフリカの国家にすでに分裂の兆しが見られると警告し、影響力を持つ国々に対し、リビアの対立する指導者たちに圧力をかけて早急に選挙を行うための憲法上の基盤を整備させるよう求めた。
12月中に、投票が最初に延期されて1年の節目を迎えることを指摘した上で、アブドゥライ・バティリー氏は仮に解決策が見いだせない場合、選挙を行うための代替案が必要だと述べた。
豊富な石油資源を持つリビアは2011年、NATOの支援を受けた反乱で長年国を支配した独裁者ムアンマル・カダフィ氏が失脚し殺害された後、混乱に陥っている。カダフィ体制崩壊後、リビアには対立する2つの政権がそれぞれ異なった民兵組織や外国政権の支持を受けて誕生した。
バティリー氏は国連安保理で、2つの政権(具体的には、リビア東部を拠点とする議会のアグイラ・サーレハ議長と西部の首都トリポリに拠点を置く国家高等評議会のハリド・アル・マスリ議長)の間の憲法のいくつかの条項をめぐる対立が長引くことで、「国全体が人質に取られるような状況はもはや正当化されえない」と発言した。
バティリー氏は両者が速やかに合意に達することができなければ、「期限切れで曖昧な、暫定的な政治協定がもたらす苦痛を和らげるため」に「代替の仕組み」が用いられなければならないと主張したが、この仕組みの詳細については言及しなかった。
バティリー氏はまた、安保理は「自由で公正、透明な大統領・議会同時選挙が統一された中立の政権下で行われること、候補を希望する人々は公平を期すため現在の役職を離れること、これらの点を保証するための方策を柔軟に考えだす」必要があると述べた。
現在のリビアの政治的危機は、2021年12月24日に選挙を行うことができなかったこと、およびトリポリで暫定政権を率いていた当時のアブドゥルハミード・ドベイバ首相が辞任を拒否したことに起因している。東部を拠点とする議会はドベイバ氏の任期は12月24日付で切れていると主張し、首相としてファティ・バシャガ氏を立てた。バシャガ氏はトリポリで数か月間新政権樹立を目指したが、これは実現しなかった。
大統領選挙は、対立する派閥間で選挙実施を規定する法律や、大統領候補者の資格について合意が得られなかったために延期された。トリポリの評議会側は、二重国籍者と軍人の大統領選出馬を禁止するよう求めていた。
この要求は、明らかに東部議会側の支持を受けるハリファ・ハフタル司令官を狙ったものである。ハフタル氏は毀誉褒貶相半ばする軍司令官であるとともにアメリカの市民権を持っており、中止となった昨年12月の大統領選に立候補を表明していた。
バティリー氏は「選挙の実現を阻み、妨害する」個人や団体は責任を問われるべきだと述べ、「これは選挙の前、後、選挙中の時期にかかわらず適用される」と強調した。
バティリー氏はリビアの未解決の政治危機が「人々の福利に影響し、安全を損ない、生活基盤そのものを脅かしている」と警告した。
同氏によると、リビアの分裂の兆候は数多くある。東と西に分かれて対立する2つの政権、分裂した治安行動と中央銀行、国中で「石油・天然ガスからの莫大な歳入の不平等な分配」をめぐり不満が高まっていることなどである。
長引く政治危機は「国家と公的機関のさらなる分裂をも引き起こす」と彼は付け加えた。
バティリー氏は安保理での報告で、サーレハ氏とアル・マスリ氏が先に国連の支援の下で12月4日にジンタン市で会談し、解決策を探ることで合意していたものの、これは「予想外の兵站上の問題と政治的障害により」残念ながら延期されたと述べた。
バティリー氏は、国連は会談の日時を再度調整中であるとした。
アメリカのロバート・ウッド国連代理大使は、リビアの政権移行は選挙実施の失敗以来「行き詰ったまま」であると認めた。
過去1年間、「リビアの石油資源は独占され、東西双方で民兵組織にその資金が流れた。だが本来、この資金はインフラ整備、経済の多角化、医療や教育といった公共サービスの改善を通じて、リビア国民のために使われるべきものだ」と氏は述べた。
公的機関の指導者たちは脅しを受け、技術系官吏は「有力者の取り巻き連中のために」脇に追いやられているという。
「リビアで権力を持つ人々が、自らの影響力を保ちたいがために選挙のロードマップ実施を妨害し、民兵組織、犯罪組織、外国人傭兵間の縄張り争いを仕切り、移民の虐待とリビア国民の生活水準低下に加担している」とウッド氏は述べた。
ウッド氏はすべての当事者がバティリー氏と国連リビア支援ミッション(UNSMIL)が進める、選挙のための憲法上の枠組みと予定表を定める議論に加わることが必要だと説明した。
リビアのタヘル・エルソンニ国連大使が安保理で最後に発言し、バティリー氏の報告は「単なる診断であり、どんな特効薬も治療も示していない」と述べた。
「国際社会は紛争を終結させたいというリビア国民の願いを尊重するとともに、可能な限り早期の議会・大統領選挙の実施に向けて憲法上の基礎を固め、体制の移行期間を終わらせるという目的にすべての努力と資源を惜しまず投入するための国民的イニシアチブを支援するべきである」とエルソンニ氏は述べた。
エルソンニ氏は安保理に対し、リビアですべての主要な当事者が集まって選挙のための憲法上の枠組みと予定表について議論を行うための努力を支援するよう求めた。
AP