
エルサレム:イスラエルはパレスチナ人弁護士で活動家である人物を12月18日早く、禁止された武装派組織との関係を理由にフランスに強制送還したと発表した。フランス政府はこの措置に反対している。
サラ・ハムーリ氏の追放は、イスラエルが併合した東エルサレムに居住するパレスチナ人の立場がいかに弱いものかを浮き彫りにした。大半の人は取り消し可能な居住権を持つものの、イスラエル市民ではない。またこの件をめぐり、繰り返しイスラエル側に追放の中止を求めてきたフランスとの間に外交上の問題が発生する可能性がある。
「喜びとともに、今日正義が行われ、テロリストであるサラ・ハムーリがイスラエルから追放されたことを発表します」とイスラエルのアイェレット・シャクド内務相は録画された声明の中で述べた。ハムーリ氏は現地時間午前10時少し前にパリに到着予定であった。
ハムーリ氏はエルサレムで生まれたが、フランスの市民権を持っている。
イスラエルによると、ハムーリ氏はイスラエル当局がテロ組織に指定しているパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の活動家である。ハムーリ氏はイスラエルがPFLPとの関係を理由に追放したパレスチナ人受刑者を支援する人権団体、Adameerの弁護士として活動していた。
ハムーリ氏は著名なラビの殺害を企てたとして有罪となり、7年間を刑務所で過ごした後、2011年に武装組織ハマスとの受刑者交換で釈放された。今回の追放では、ハムーリ氏は有罪判決を受けていない。
だがイスラエルは、ハムーリ氏が禁止団体とともに活動を続けたと主張して居住権を剥奪し、昨年3月には行政拘禁を課していた。行政拘禁では、起訴や裁判といった手続きを踏まずに、当局が武装組織の疑いがあるとした人物を数か月にわたり拘束することができる。
ハムーリ氏は今回の件で起訴されていないが、シャクド内務相は氏の拘禁期限が切れると追放を命じた。
イスラエル最高裁はハムーリ氏の居住権取り消しの決定に対する上訴を棄却した。
ハムーリ氏の弁護に当たったイスラエルの人権団体、HaMokedは18日の追放を非難した。来年1月1日にこの件に関する聴聞会が開かれる予定だが、その時点ではイスラエルが追放に踏み切るか否かは不透明であった。
「パレスチナ人を故国から、イスラエル国家への忠誠心の欠如を理由に追放することは危険な前例を作り、また基本的人権を踏みにじる行為です」とHaMokedのジェシカ・モンテル局長は語った。「HaMokedは引き続き、憲法に違反するこの法と闘います」
昨年、独立のセキュリティ問題研究者が、ハムーリ氏を含む6人の人権活動家の携帯電話がイスラエル企業、NSOグループによって開発されたスパイウェアに感染していることを発見した。
スパイウェアを仕込んだのが誰かは明らかになっていないが、イスラエルはAdameerと他5つのパレスチナ人権団体のテロ組織指定と、NSO製スパイウェアの使用疑惑の間には何の関連もないと主張した。イスラエルはこのテロ組織指定の根拠を公にはほとんど示しておらず、人権団体側はこれを自分たちの発言を封じ、資金を枯渇させるための方策だとしている。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる新政権でシャクド内務相の後継者と目されているアリエ・デライ氏はハムーリ氏の追放は「長く正当な法的プロセスの最後の段階」だとして、シャクド氏がこれを実行したことを称えた。
新連立政権は、デライ氏が最近税法上の違反で有罪とされたにもかかわらず、大臣就任を可能にするための法案を成立させようと動いている。
イスラエルは市内でももっとも重要な聖地が存在する東エルサレムを1967年の中東戦争時に占領し、併合したが、この措置は国際的には認められていない。
イスラエルがエルサレム全体を自国の首都と見なす一方で、パレスチナ側は、東エルサレムは将来のパレスチナ国家の首都だと主張している。
エルサレム市内のユダヤ人は自動的に市民権を与えられるのに対して、パレスチナ人に認められるのは居住権のみである。
居住権により、移動の自由、労働とイスラエルの社会サービスを受けることが可能になるが、国政選挙での投票はできない。
ある一定期間を超えて市外に住んでいることが明らかになった場合や、何らかの安全上の理由により、居住権は取り消されることがある。
パレスチナ人は市民権を申請することも可能だが、占領を既成事実として受け入れることを望まないため、そうする人はほとんどいない。申請を行った人も、長くお役所主義的な手続きに直面する。
今年日刊紙ハアレツが報じたところでは、エルサレムに住むパレスチナ人の内、イスラエル市民権を持つ人の数は2万人未満であり、これはパレスチナ住民の約5%である。また、市民権を申請した人の内、受理されるのはたった34%であるという。
ハアレツ紙の情報は、シャクド内務相が議会の審問で提出したデータに基づいている。
フランスがハムーリ氏を受け入れたか否かは明らかではない。フランス外務省は先に、「ハムーリ氏はすべての権利を行使し、そこで生まれて生活してきたエルサレムで普通の生活を送ることができなければならない」としていた。
AP