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「彼女の行く末はどうなるのか?タリバンの女性高等教育禁止に対し、高まるアフガンの反発

少女や女性の教育へのアクセスに関してタリバンが約束を守らなかったため、3月にカブールの教育省前で行われたこの抗議デモを含め、抗議活動が行われている。(AFP通信)
少女や女性の教育へのアクセスに関してタリバンが約束を守らなかったため、3月にカブールの教育省前で行われたこの抗議デモを含め、抗議活動が行われている。(AFP通信)
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29 Dec 2022 07:12:35 GMT9
29 Dec 2022 07:12:35 GMT9
  • 視野の狭い政権が市民の自由に課した新たな制限は、国際的な非難を浴びている。
  • アフガニスタンの学生や教授らは、この決定に抗議してストライキを起こし、辞職を申し出ている。

ナディア・アルファオル

ドバイ:アフガニスタン南部のカンダハール州で育ったザラムは、高額の正規教育をほとんど受けられなかった。しかし彼は、自分が長い間逃してきた自由と機会を、いつの日か子どもたちが享受できるようにと常に願っていた。

ところが12月中旬、アフガニスタンのタリバン指導者らは女性の高等教育を禁止した。学ぶ権利が娘から奪われた事を知り、ザラムはひどく落ち込んだ。

「もっと稼いで、娘に今よりいい暮らしをさせてやりたかった」と、報復を恐れて匿名を希望したザラムは、アラブニュースに語った。「娘が教育を受けられなければ、やっていけないでしょう。ほとんど学校に行かなかった私では、彼女に勉強を教えてやることはできません」と彼はいう。

タリバンは、12月20日から直ちに女性や少女を大学や専門学校から追放すると発表した。

ネダ・モハマド・ナディーム高等教育相は声明の中で、「追って通知があるまで、女性の教育を停止するという前述の命令を直ちに実行するよう全国民に通達が出されました」と述べた。 

翌日、アフガニスタン女性の群衆がカブールの通りを行進し、「みんなのためか、誰のためでもないか。一人はみんなのために、みんなは一人のために」と、新しい布告に抗議の声を上げた。あるキャンパスの外では、女性たちが涙を流しながらお互いを慰め合う様子が撮影された。 

タリバンは、12月20日から直ちに女性や少女を大学や専門学校から追放すると発表した。(AFP通信)

2021年8月の混沌とした米軍撤退とタリバンによるカブール占領を受けて、多くのアフガニスタン人は、この超保守派が過去に政権を握っていた時代(1996年から2001年)よりも寛大になることを期待していた。 

しかし、その期待はすぐに打ち砕かれた。カンダハールを拠点とするタリバン指揮者、ハイバトゥラ・アクンザダ師の命令によって、米国の支援を受けたアフガニスタン政府の下でそれまでの20年間謳歌されていた自由は、着実に侵食されていったのである。 

タリバンは、政権に復帰したわずか1カ月後には大学の入り口や教室を男女別にし、服装規定としてヒジャブの着用を強制した。 

そして、女子中等教育が再開される予定だった今年3月23日、タリバンはその指示を突然撤回し、何万人もの10代の少女たちを教育から締め出した。小学生の女児は、少なくとも今のところ、6年生までの学校教育を受けることが許されている。 

5月には、タリバンは女性に対し、公共の場では顔を含む全身を完全に覆うこと、家に留まること、そして都市間の移動は男性の付き添いがある場合に限定することを命じた。11月の新たな命令では、公園、遊園地、ジム、公衆浴場への女性の立ち入りが禁止となった。 

24日には、タリバンは女性が非政府組織(NGO)で働くことを禁止した。これにより、多くの外国の人道支援機関が危機的状況にあるこの国からの撤退を発表した。

アフガニスタンでは現在、12歳以上のほぼすべての女性と少女が教育機関から締め出されている。ユニセフによると、約85万人のアフガニスタンの少女が学校に通えなくなっている。 

アフガニスタンでは、12歳以上のほぼすべての女性と少女が教育機関から締め出されている。(AFP通信)

現在アフガニスタンは、女性や少女が学校や大学に通うことを禁じている世界で唯一の国である。

しかし、この命令はタリバンのエリートには適用されないようだ。カブールに拠点を置く独立非営利の政策研究組織であるアフガニスタン・アナリスト・ネットワーク(AAN)によると、タリバン幹部らは娘たちをカタールやパキスタンの学校に入学させているという。 

タリバン政府の報道官であるスハイル・シャヒーン氏の2人の娘たちは、ドーハで学校に通っているとされる。一方で同政権のカランダー・イバッド保健相には、医学部を卒業した娘がいると報告されている。 

カタール在住のあるタリバン職員はAANに対し、「近所では誰もが学校に行っているので、自分たちも通学したいと子供らが要求するようになりました。そこで息子3人と娘2人を入学させました」 と述べた。

アフガニスタン在住の外国人人道支援員は、「まったく偽善的です」と匿名を条件にアラブ・ニュースに語った。 

「ですがタリバンの指導者たちは、物事の善悪について世界的な論理に従うことはありません。彼らが従うのは、自分たちの内部論理です。それが彼らの意思決定の原動力です。彼らは、誰かに何かを正当化する必要性を感じないのです。 

「この教育禁止令は、タリバンが世界に向けて、自分たちは支配するためにここにいて、ここに留まり続ける、そして誰が何を言おうと一切気にかけない、誰も干渉できない、と宣言する方法なのです。イスラム世界で、女性への教育を法典が許すかどうかを議論している国は他にありません。アフガニスタンの学者がそれを今、議論しているのは驚くべきことです」

政権からの布告は、激しい反発にさらされている。ソーシャルメディアで拡散中のある動画には、東部ナンガルハール州の女子学生らが、彼女たちに連帯して立ち上がることを拒否したとして、同級生男子らの期末試験を妨害する様子が映し出されている。 

同州の別の大学の学部では、医学部の男子学生らが、学校から女子を追放した政権の決定に抗議し、進んで試験場から退出した。複数のタリバン兵士が、抗議運動に参加した男子学生を殴る映像が流出している。 

また、複数の男性大学職員が連帯して辞職した。カブール在住のある教授は、TOLOnewsによるテレビでの生放送インタビュー中に自分の卒業証書を破り捨てた。 

「この国はもはや教育の場ではない。よって、今日から私はこの卒業証書を必要としない。妹や母が勉強できないのなら、私がこの教育を受け入れることはできない」と、教授はニュースチャンネルに語った。 

現在アフガニスタンは、女性や少女が学校や大学に通うことを禁じている世界で唯一の国である。(AFP通信)

タリバンの女性の権利に対する弾圧は、サウジアラビア政府を含む国際社会から激しい非難を浴びている。しかしタリバンは、外国政府は 「アフガニスタンの内政に干渉すべきではない 」と反論した。

27日、国連安全保障理事会はタリバンに対して女性と少女を標的とした政策の撤回を要求し、同国において人権の「侵食が進んでいる」ことに警鐘を鳴らした。 

15カ国で構成される国連安全保障理事会は声明で、女性の教育に対する制限の増加に「深く憂慮する」と述べ、「アフガニスタンにおける女性と少女の完全かつ平等で有意義な参加」を呼びかけた。 

同機関はタリバンに対し、「学校を再開し、人権と基本的自由の尊重がますます損なわれていることを意味するこれらの政策と慣行を速やかに撤回するよう」要請した。 

また、NGOでの女性の労働を禁止していることについても非難し、何百万人もの人々が頼りにしている国内の援助活動に有害な影響を与える、という警告を加えた。  

「これらの制限は、国際社会の期待に反するだけでなく、タリバンがアフガニスタンの人々に対して掲げた公約とも矛盾します」と国連安全保障理事会は述べた。

特に女性の権利に関する問題でその強硬な手法を和らげる意志を示さない限り、タリバン政権は、切実に必要とする援助や融資、凍結資産へのアクセスを得られないだろう。何十億ドルものそれらは、米国、国際通貨基金、そして世界銀行によって保有されている。

米軍のアフガニスタン撤退後、昨年タリバンが政権を握った。(AFP通信)

とはいえ、制裁や非難を越えて、国際社会がタリバンにイデオロギーの方向転換を強いるためにやろうとしていること、あるいはできることは、ほとんどないように思われる。アフガニスタンの人々は、彼ら自身で立ち上がるしかないのかもしれない。

「アフガニスタンの人々は、政権に対する信頼も、命令を覆す能力や意志も失っています」と、外国の人道支援者はアラブニュースに語った。 

「新しい変化が起こるとすれば、それは1990年代のハンドブックの1ページのようなものでしょう。看護師や医師、助産師のような専門職のためにだけ、医療分野での女性の教育継続が許されるというかたちです。

「国民と政府の間には、信頼関係が大きく欠如しています。教育令に賛同していない大臣でさえ、この問題に意見を述べていません。最高指導者への反対があり得ないのです。 

「ですが我々は、興味深い岐路に立っています。 市民の間では権利のために立ち上がろうと勇気が高まっています。それがどのように展開するのか、興味深いところです。 

「世界は、この事態を呆気にとられて見ています。しかし国際社会は、受け売りされた同じような言葉を繰り返して非難をツイートするだけです。その間、女性の権利は日に日に失われています」

カンダハールに住む父親であるザラムにとっては、娘がまともな教育を受け、好きな職業に就き、家という檻を出て充実した人生を送ることはほとんど望めない。

「いろいろな意味で自分が恥ずかしい。娘の期待を裏切ったと感じています。彼女の行く末はどうなるのか。どんな選択肢を持てるのか。彼女は何も持てないでしょう。嫁がせられることが彼女の将来であってほしくない。彼女は、より多くを望めるべきだ」と、ザラムはアラブニュースに語った。

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