
エルサレム:イスラエル軍が、ヨルダン川西岸地区の南部に位置する2か所のパレスチナ人の村で、住宅、貯水タンク、オリーブの果樹園を破壊し、一部の住民たちが今にも追放されそうな危機に直面していると住民や活動家らが4日に語った。
3日に建物を破壊された村の一つは、マサファー・ヤッタとして知られるヨルダン川西岸地区の乾燥地帯にあり、一帯はイスラエル軍によって実弾訓練地帯として定められている。
イスラエルの最高裁判所が20年以上にも及ぶ法廷闘争の果てに昨年5月に支持した命令によって、マサファー・ヤッタを構成する8か所の小村で、およそ1,000人の住民が追放させられそうになっている。
地元住民や活動家が見せてくれた写真によると、マサファー・ヤッタの一部であるマインとシャーブ・アルブトゥムの村まで装甲車両が破壊用の建設機械を護衛していた。
タアユシュというイスラエルの人権団体に所属する活動家のガイ・ブタビア氏は、軍が5軒の住宅、家畜の囲い、貯水タンクを破壊し、人々の日常生活を構成していたものを冷たい砂漠に放り出したと話した。
「彼らはやってきて、家を破壊しました。今は冬です。寒いです。次は何がおこるのでしょう?そんな夜、どこで寝ようというんですか?」と彼は話した。
イスラエルの保安部隊が建物を破壊するために定期的にやってくるが、同区域の住民のほとんどは裁定が下されてからもその場に留まっている。
しかし彼らはいつ強制退去させられてもおかしくない状態だ。
イスラエルの国防当局から、彼らが同区域に住む1,000人以上の住民を強制的に排除することができるという通知を受けたと現地当局や人権団体は述べている。
「重大な戦争犯罪がおこなわれることを本当に懸念しています」とイスラエル市民権協会(ACRI)の代表者であるロニ・ペリ氏は語る。
パレスチナの住民との問題を取り扱うイスラエルの防衛組織、占領地政府活動調整官組織(COGAT)はコメントを拒否した。
二つの村はどちらも、ヨルダン川西岸地区のエリアCとして知られる60%の占領地に位置する。
そこでは1990年代にパレスチナ人とのあいだに締結された暫定的な和平協定のもと、イスラエル軍が完全な指揮権をもって軍事訓練をおこなっている。
軍の許可を得ずに建てられたパレスチナ人の建築物は――住民たちが言うには、許可を取ることなど不可能だが、取り壊される危機にさらされている。
3日の破壊活動は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエル新政権を背景にして発生している。
新しい政府内では、イスラエルによるヨルダン川西岸地区の入植計画を支持する者が影響力のある大臣の職に就いており、入植地の建設を推進すること、そしてエリアCにおけるパレスチナ人の建設を抑制することの両方が期待されている。
マサファー・ヤッタ内に住む家族は、イスラエルが1967年の中東戦争でヨルダン川西岸地区を占領するずっと前から、彼らが所有するヒツジやヤギを同区域のあちこちから集めて飼っていたと言う。
しかしイスラエル側は、軍が1980年代のはじめに同区域を実弾の発砲をともなう訓練地帯として定める宣言をしたとき、放浪していたアラブの遊牧民は永久構造物を所有していなかったと話す。
1999年11月、保安部隊がおよそ700人の村民を追放し、家屋と貯水タンクを破壊した。
翌年、2022年10月にイスラエルの最高裁判所がその追放活動について追加の審問を却下するまで、20年以上にも及ぶ法廷闘争が幕を開けた。
かつてのイスラエルの政府も何十年にもわたって同区域の家屋を破壊してきたが、現在の政権は同区域の破壊活動をさらに激しくすることが予想される。
AFP