チュニス:チュニジア政府は29日の議会選挙の投票率がわずか11%だったと発表した。カイス・サイード大統領に批判的な勢力は、大統領の政策や権力掌握が国民から軽視されていることがガラガラの投票所に表れていると主張している。
サイード大統領は昨年、選挙委員会に対する最終的な権限を自らに与えたが、同委員会のトップは29日の選挙の暫定投票率を11.3%と発表した。
昨年12月に実施された第1段階の選挙の投票率は、それをわずかに下回る11.2%だった。
「チュニジア国民は本日、カイス・サイードのプロセスや選挙を受け入れないという最終決定を下した」。主要野党勢力Salvation Frontを率いるネジブ・チェビ氏は記者会見でそう語った。
チュニジアでは生活必需品が店頭から消える一方で、政府は破産回避のために外国の救済を求め、助成金を削減している。経済状況は悪化しており、多くの国民が政治に失望し、指導者に怒りを感じている。
「私たちは選挙を求めていません。欲しいのはミルクや砂糖、食用油です」。29日、チュニスのEttadamon地区で買い物していた「ハスナ」という女性はそう語る。
大統領が昨年導入した政治体制の一環として、新しい議会の役割は縮小された。大統領は2021年に権力を掌握し、絶対的とも言える権力を手中に収めた。
780万人の有権者のうち、票を投じたのは約88万7000人だったと選挙委員会は述べている。選挙結果が判明するのは30日以降になる。主要政党が選挙をボイコットしているため、議席の大部分は独立勢力が占めると予想される。
「選挙は私には関係ありませんし、興味もありません」。チュニスのHay Ettahrir地区の投票所を通りかかったネジブ・ザーリ氏(40歳)はそう語った。
チュニジアを拠点とするMourakibounなどの独立監視団は公式の投票率を疑問視しており、選挙の完全性を監視するためのデータを多くの地区の当局が出していないと非難している。
選挙委員会はそうした訴えを否定しており、職員が多忙で監視団に協力できないと主張している。
政府に批判的な勢力は、サイード氏が2021年にクーデターを起こして前の議会を解散したことを糾弾し、「アラブの春」のきっかけとなった2011年のチュニジア革命後に成立した民主主義を破壊したと主張している。
大統領は、自身の行動は合法的であり、汚職や経済の衰退に長年悩まされていたチュニジアを自己本位の政治エリートから救うために必要だったと述べている。
大統領が起草した新憲法は昨年国民投票で成立したが、投票に参加したのは国民のわずか3割だった。
反体制活動家のチャイマ・イッサ氏は大統領に対する抗議を主導し、大統領侮辱罪で軍事裁判にかけられた。同氏は今回の選挙を「幽霊の選挙」と表現している。
ロイターの記者がチュニスのEttadamon地区の投票所に20分間滞在したが、投票する人は誰もいなかった。
Ettadamonの別の投票所では「リダ」という男性が大統領を支持していると語った。「彼は汚職と戦うクリーンな人物です」
首都の別の地区Ettahrirでは、カフェの7人の男性客のうち、投票するつもりと答えたのは1人しかいなかった。
カフェにいた「イマード」という客は、大統領が政治体制を変化させた後では自分が投票する意味はないと答えた。
「大統領が1人で何でも決めています。彼は誰のことも気にかけていないし、私たちも彼や彼の選挙に関心はありません」
チュニジアでは長年、弱い連立政権が続き、経済状況の回復や公共サービスの改善、大きな不平等の解消などに失敗していた。2年前にサイード氏が大統領に就いた時、当初は多数の国民が歓迎していたように見えた。
だがサイード氏は、汚職や投機家に物価高騰の責任があると非難する以外、明確な経済政策を示していない。
27日、ムーディーズの信用格付でチュニジアの債務が格下げされた。政府が債務不履行に陥る可能性が高いとしている。
ロイター