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トルコが3ヵ国でのシリア外交を呼びかけ、ロシアは歓迎

2022年11月16日、インドネシアのリゾート地バリ島のヌサドゥアで開催されたG20サミットの場で、記者会見を行うトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領。(AFP)
2022年11月16日、インドネシアのリゾート地バリ島のヌサドゥアで開催されたG20サミットの場で、記者会見を行うトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領。(AFP)
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18 Dec 2022 05:12:43 GMT9
18 Dec 2022 05:12:43 GMT9
  • 専門家は、この動きはトルコの内政の事情、特に選挙を控えているという事情がある中、難民問題と関わりがあるのではないかと指摘している

メネクセ・トキャイ

イスタンブール:ロシア政府は、トルコ、ロシア、シリアによる3ヵ国間外交の仕組みを構築するというトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の提案を歓迎した。

エルドアン氏は、シリア政府との外交チャンネルを確立するために、新たな提案を示した格好だ。

トルコ国営放送TRTによると、エルドアン氏はトルクメニスタンからの飛行機での帰途、記者団に対し、緊張状態になっているシリア政府との関係を再考するべく、トルコ、ロシア、シリアの間で一連の会議を開始するよう提案したと述べたという。

「目下のところは、シリア、トルコ、ロシアの3ヵ国として一歩を踏み出したい。まず関係3ヵ国の情報機関、次に国防相、そして外相が会談することになるだろう。それらの会合の後で、我々最高指導者が集まるかもしれない」とエルドアンは述べた。

また、エルドアン氏は、この構想をロシアのプーチン大統領に提案したところ、同大統領が「前向きに」捉えた、と付言したという。

ロイター通信は9月、トルコの国家情報機関のトップであるハカン・フィダン氏が、 シリア国家治安局のアリー・マムルーク局長とシリアのダマスカスで数回会談していたと報じた。

専門家は、この動きはトルコの内政の事情、特に選挙を控えているという事情がある中、難民対策と関わりがあるのではないかと指摘した。エルドアン大統領は既に、自らの政治的焦点を、アサド政権打倒から、トルコ・シリア国境沿いのクルド人武装勢力の進出抑止に移しているという。

エルドアン氏とシリアのアサド大統領は、2011年のシリア内戦勃発以来、接触していない。トルコ政府は、シリア政府と戦うシリア反体制派を支援していたからだ。

センチュリー・インターナショナルのアロン・ルンド氏はアラブニュースの取材に対し、次のように語った。「アサド氏にとって、これは非常に良い知らせだ。トルコとの国交正常化は、シリア内戦を終わらせたり、アサド政権が直面しているすべての問題に対処したりするという意味では十分ではないにしても、大きな分岐点となる」

ルンド氏は、シリア、トルコ両政府が再び対話の場に戻れたとしても、両者の間には、特にシリアにおけるトルコ軍の存在に関して、まだ多くの見解の相違があるとしている。

「それでも、両者が共通の問題に取り組む機会もあるだろう。そのひとつが、クルド人主体のシリア民主軍とシリア北東部の米軍の役割だ」と述べた。

また、ルンド氏は、今回のエルドアン氏の発言はあくまでも提案であり、決定事項ではないという点も強調した。

「ロシアとの二人三脚、あるいは今回の場合は3ヵ国で、ということだ。アサド氏はそのプロセスの条件を提示することもできるだろうし、シリアの反応がどうなるのかに興味がある。シリア政権は通常、こうした事柄に対しては非常に頑なだ。アサド氏は当然ながら、自身がエルドアン氏の再選の可能性を高める手助けになることを認識している」。ルンド氏はこのように述べた。

ルンド氏は「アサドはこの機会を無駄にしたくはないと思う」と付け加えた。

同氏は続けて次のように述べた。「エルドアン氏は、どのみち政権を維持する可能性が高く、選挙が終わってしまえば、アサド氏に擦り寄るような強い動機が薄れる可能性がある。しかし、過去のふるまいから判断すると、アサド氏が譲歩を引き出すために強硬策を取り始め、3ヵ国交渉のプロセスを引き延ばしたとしても、私は全く驚かない」

一方、アサド氏の主要な後ろ盾であるロシアは、数ヵ月前からトルコ、シリア両政府に和解を働きかけている。

ロシアのミハイル・ボグダノフ副外相兼大統領特使(中東地域担当)は9月、ロシア政府がシリアのファイサル・メクダッド外相とトルコのメブルト・カブソグル外相の会談を企画する意思があると発言している。

国営ロシア通信(RIA)がボグダノフ氏の発言を引用して報じたところによると、ロシア政府はエルドアン氏の提案を受け、トルコ、シリア、ロシアの三ヵ国首脳会談を開くという同氏のアイデアに前向きな反応を示したという。

ロシアのセルゲイ・ベルシーニン外務次官は先週、シリア関連の動向を話し合うためにトルコを訪れた。他方、プーチン大統領が18日にエルドアン氏と電話会談を行った際、エルドアン氏はトルコとロシアの2019年の合意に基づき、トルコ南部の国境地域に30kmの安全な回廊を設けるよう要請した。

2019年の合意では、ロシアは、トルコ国境とクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)の間に緩衝地帯を設置し、シリア軍とロシア憲兵が管理することを保証した。しかし、この合意は完全には履行されなかった。

6人が死亡、81人が負傷したイスタンブールでの爆弾テロ事件を受け、トルコは11月20日、シリア北部のYPGとイラク北部のクルド労働者党(PKK)に対する空爆作戦を実行した。

エルドアン氏は、安全地帯を構築するために、「最適な時に」シリア北部への地上作戦を行うことも約束した。

しかし、カーネギー・ヨーロッパのシニアプログラムマネージャー兼上級調査アナリストのフランチェスコ・シカルディ氏は、トルコ政府にとってアサド氏との関係修復は、シリア北部での地上作戦の代替案にはならないとしている。

「関係修復と地上作戦という二つの政策に通底するのは、シリア北部のクルド人の勢力を削ぐというトルコ政府の利益であり、その目的はシリア政府とも共有している」。シカルディ氏はアラブニュースに対しこのように語った。

同氏によれば、トルコ政府の行動はすべて、エルドアン氏再選のチャンスを最大化するために計算されているという。

「その意味で言えば、シリア政府との対話は、エルドアン氏の反対派から重要な論点を奪うことになる。なぜなら、反対派も同じく対話政策を提唱しているからだ」とシカルディ氏は述べた。

「また、そのような状況下でエルドアン大統領は、トルコのシリア難民問題の解決に向け、具体的な取り組みを提示することも可能になる。そして最後に、安全保障とテロの問題を政治的議論の中心に据えることができるようになる。このやり方は、過去に現職のエルドアン大統領に利益をもたらしている」。シカルディ氏はこのように付け加えた。

トルコは370万人のシリア難民を受け入れており、世界最多の難民受け入れ国だ。しかし、トルコでは、進行中の経済危機により、国民の間の反シリア難民感情がさらに高まっている。いくつかの野党は、トルコの経済問題の原因がシリア人たちにあると非難し、その強制送還を要求している。

その一方で、この3ヵ国間外交の提案は、EUの外交政策トップであるジョセップ・ボレル氏が、ロシアとの関係をめぐってトルコを批判し、EUの対ロシア制裁に加わるようトルコ政府に促した時期と重なった。

トルコ・ロシア関係が専門のマルマラ大学のエムレ・エルセン教授は、もし両政府が最終的に共同歩調をとることを決めれば、それはロシアにとって外交上の重要な成果とみなされる可能性があるとする。特に、ウクライナで続く戦争のため、ロシアが国際社会でますます孤立しつつある現在においては、なおさらだという。

それでも、エルセン氏は、トルコとシリアの間には、その外交プロセスを成功させるため、解決しなければならない多く難題があると指摘した。

エルセン氏は、「トルコは依然として、シリアの反政府勢力を支援し続けている。これはアサド政権にとって大きな問題だ」と述べた。

「シリア政府は、国内のトルコ軍の存在や、クルド人民兵組織『人民防衛部隊』(YPG)に対するトルコ軍の越境軍事作戦にも非常に批判的だ。こうした背景から、和解のプロセスは、相当に漸進的なものになる可能性が高い」。同氏はこう付言した。

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