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レバノンのがん患者、必須薬の不足で死を恐れる

首相官邸近くのリヤード・アッ=スルフ広場で、薬局や病院で薬が手に入らないことに抗議する大勢のレバノンのがん患者たち。(AFP/ファイル)
首相官邸近くのリヤード・アッ=スルフ広場で、薬局や病院で薬が手に入らないことに抗議する大勢のレバノンのがん患者たち。(AFP/ファイル)
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05 Feb 2023 12:02:24 GMT9
05 Feb 2023 12:02:24 GMT9
  • 2023年2月4日土曜の国際ガンの日に合わせて行われた、患者たちによる抗議活動
  • レバノン薬剤師協会会長ジョー・サロウム氏は「がん治療薬を奪うという、患者たちに対するジェノサイド(大虐殺)だ」と非難

ナジア・ハウサリ

ベイルート:2023年2月4日土曜、レバノンのがん患者ら数十名が首相官邸近くのリヤード・アッ=スルフ広場で、薬局や病院で薬が手に入らないことに抗議するデモを行った。

デモ参加者たちは「私たちは神にすべてを話す」、「腐敗政治を止めれば、薬が手に入る」という横断幕を掲げた。

この患者たちによるデモ活動は国際ガンの日に合わせて行われた。

レバノン薬剤師協会会長ジョー・サロウム氏は、バーバラ・ナサール・がん患者支援協会とともに「がん治療薬を奪うという、患者たちに対するジェノサイド(大虐殺)だ」と非難した。

サロウム氏はベイルートで行われたデモ活動の主催者の一人である。

デモに参加した40代のジョイスさんは「薬が手に入らない。薬代が払えないので、自分では買うことができないが、レバノンのがん患者を支援する団体から薬を手に入れている。」と言った。

彼女は、乳がんを患っており8年間の治療が必要だ。そして次のように付け加えた。「最近の報道にあるように、もし政府が、がん治療薬の補助金撤廃を決定したら、私たちはどうすれば良いのか?支配階級はもはや何も補助してくれないが、少なくとも薬の補助金さえ維持できれば、私たちは生き延びることができる。」

レバノン医薬品輸入業者団体の代表、カリム・ゲバラ氏は、レバノンの全患者のニーズを満たすための十分な購入資金がないため、医薬品が不足していると考える。

ゲバラ氏によると、輸入薬の量に関しては、もはや輸入業者は重要な役割を持っていないという。代わりに、薬の量と種類、それを誰が受け取るかを決定するのは保健省であると付け加えた。

患者たちと彼らを支援するデモ参加者らは、2月4日に行われた抗議活動で、昨年、予定通りに治療を受けることができず亡くなったがん犠牲者らを悼み、黒い服を着用した。

彼らは、国が「患者たちを殺し、皆殺しにしようとしている」と非難した。

昨年がん患者は、薬の不足と治療を受けられないことによるに死を象徴するものとして木製の棺を担ぎ、それを破壊した。

アラブニュースの単独インタビューに応じた暫定保健相フィラス・アビアド氏は、がん患者が心配するのは当然だが、同省はがんや難病の治療薬への補助金を撤廃していないと述べた。

「実際には何が起こったのかというと、8種類の高価な医薬品を外国企業のジェネリック医薬品に変更したのだ」と彼は言う。

「さらに、あるブランド薬1包の価格で、ジェネリック薬2包の価格と等しく、つまりは、ブランド薬1包の価格で、ジェネリック薬2包を患者2人に処方することができる。これは、一部の人が解釈したような補助金撤廃ということにはならない。」

アビアド氏は保健相の優先事項の1つは、がん患者や難病患者への医薬品と治療を確保することであると強調し、患者数は2万〜3万人であると述べた。

さらに、がんや難病の治療薬など、補助金の対象となっている医薬品を追跡するために保健省が設置したコンピューターシステムは、公平な治療を提供することを目的としていると述べた。

アビアド氏によると、これまでに、死亡した患者名を使用して高価な薬を入手したり、または必要以上の量を入手するなど、このシステムにより多くの抜け穴が見つかったという。

また、現在、補助金の対象となっている医薬品の90%が適切に供給されており、保健省はより多くの医薬品をこの追跡システムに追加する予定だと述べた。

保健省はこれまで、レバノン国外に補助金対象のがん治療薬を密輸したり、レバノン国内で密輸した偽造薬や期限切れの薬を使用しないよう警告している。いくつかの病院から、検査の結果、数十のサンプルが水と塩が混ざっただけのものだと判明した記録が提供されている。

患者らによると、補助金対象の医薬品は予定通りに到着せず、治療計画に混乱が生じ、患者の健康状態の悪化につながっているという。

アビアド氏は、この苦情の原因は、レバノンの現在の財政難により、製薬会社が余分な在庫を倉庫に保管しておらず、それによって遅延が起きている状況にあるという。

「以前は薬の不足に苦しんでいたが、現在は到着の遅れに苦しんでいる。厳しい環境下での対応を続けている。公共部門従業員のストライキは続いてるが、できる限りのことをしている」と述べた。

薬が手に入らない患者は、輸入するか、トルコ、アルメニア、インド、イラン、シリアからの代替薬を選択している。

レバノンの現在の経済危機により、保健省ががん及び難病の治療薬に割り当てた資金は、月額4500万ドルから3500万ドルに減少した。

アビアド氏は「この資金のうち、1200万ドルががん及び難病に割り当てられた。他の病気の治療薬に対する補助金を撤廃した今、浮いた資金をがんと難病の治療薬に当て、金額を2500万ドルに引き上げた。」と述べた。

内閣は来週、会議を開き「必要時、緊急時、非常時のトピック」について審議する予定だ。

議題には、がんや難病の治療薬の購入、透析用品や医療の主要な材料、公立病院の従業員の公的扶助の支払いについてなど保健省のニーズの確保に関する3つの論点が含まれている。

「健康は権利と尊厳」キャンペーンの代表、イスマイール・スッカリエ氏はアラブニュースに対し「価格操作、偽造薬、保健省から薬を密かに購入し闇市場やレバノン国外で販売するなどの記録に関するファイルが数十冊存在すると述べた。

「これらのファイルは、議会、政党、または教養あるエリートらによって適切に対処されていない。そのために、麻薬マフィアが、薬を抱え込み、闇市場で法外な値段で転売することができてしまい、癌患者の健康を搾取することが可能になってしまっている。」

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